神戸大学大学院農学研究科附属 食資源教育研究センター
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学生教員

現在、食資源教育研究センターには4名の専任教員が所属しており、資源開発部門・生産フィールド部門、連携利用部門に分かれています。また農学研究科では応用動物学コースと応用植物学コースに所属しています。

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研究・学会発表などの様子
○神戸大学の研究者紹介ページ(KUID)

神戸大学に所属する研究者の各種活動などを紹介する「神戸大学研究者紹介システム(KUID)」。
下記の研究者名をクリックしていただくと、該当するページを表示します。

大山 憲二  庄司 浩一  本多 健  吉田 康子 


KUID:神戸大学の研究者紹介システム・トップページ


○各教員の紹介

※名前をクリックすると、各教員の紹介へ自動的にスクロールします。

大山 憲二  庄司 浩一  本多 健  吉田 康子




名前:
大山 憲二(おおやま けんじ)

所属:
農学研究科 附属食資源教育研究センター
生産フィールド部門

農学研究科 資源生命科学専攻
応用動物学講座 動物遺伝資源開発学

担当授業:

学部 牧場実習、農場実習Ⅱ、農場実習(応用機能生物学コース)、農場実習(応用生命化学コース・生産環境工学コース)、
 農場と食卓をつなぐフィールド演習、量的遺伝学、応用動物学演習、資源生命科学入門Ⅰ、食の倫理、外国書購読、
 初年次セミナー、卒業研究
大学院 有用動物資源学、食料・環境・健康生命(食料編)、課題開発演習、特定課題演習Ⅰ、Ⅱ、
 プレゼンテーション演習Ⅰ、Ⅱ、先端遺伝育種論、先端融合科学特論Ⅱ-3、特定研究1~6
専門:家畜育種学
所属学会:日本畜産学会、関西畜産学会、日本動物遺伝育種学会、肉用牛研究会
一言:好きなもの「ウシ、イヌ、バイク、映画」、
 嫌いなもの「寒い日」、好きになりたいもの「お酒」

研究内容:
和牛の経済形質に関する遺伝的パラメータの推定

 動物集団のある形質(ここでは体重としましょう)を多数の個体で測定すると、体重の軽い個体~平均的な個体~重い個体のように形質にバラツキ(変異)のあることが分かります。このような変異には飼育条件をはじめ多くの要因が関与しますが、体重を改良の対象とする場合、体重に遺伝的な変異が存在する必要があります。つまり、遺伝的に体重の重くなる素質をもつ個体と、そうではない個体が存在することが前提です。
 この遺伝的変異を表す指標に「遺伝率」というものがあります。遺伝率は、ある形質の変異全体のうち、遺伝的な要因で説明できる割合を表します。仮に体重の遺伝率が0ならば改良の対象になりませんし、遺伝率が1の形質は体重の測定値そのものがその個体の正確な遺伝的能力の指標になります。
 遺伝率をはじめとする遺伝的パラメータは、動物集団の遺伝的改良の成否やその影響を事前に検討するうえでもっとも基本的な情報です。われわれの研究室では世界的にも有名な肉用牛「和牛」を対象に、既存の経済形質に留まらず、和牛の価値を高める形質を新規に開発して遺伝的パラメータを推定する取り組みを行っています。これまでに、枝肉形質、増体形質、繁殖形質など数十の形質を推定の対象としてきました。この推定に必要なものは、コンピュータ、統計遺伝学の知識、若干のプログラミングスキル、そして何より数千~数万頭規模の測定値です。測定値は独自の収集が難しく、関係機関から測定値の提供があってはじめて研究が進展します。したがって、関係機関と密接に連携し、和牛改良にいますぐ必要な課題を検討する現場密着型の研究形態がわれわれの研究室の特徴です。
 日本人が作り上げた美しい和牛を後世に残すにはどうすればいいのでしょうか。一緒に考えてみませんか。



名前:

庄司 浩一(しょうじ こういち)


所属:
農学研究科 附属食資源教育研究センター
連携利用部門

農学研究科 食料共生システム学専攻
生産環境工学講座 圃場機械・栽培学教育研究分野

担当授業:
学部 農場実習Ⅱ、農場実習(応用機能生物学コース)、農場実習(応用生命化学コース・生産環境工学コース)、
 農場と食卓をつなぐフィールド演習、作業機・システム工学1、2、工業力学1、2、応用数学II-2、機械要素設計及び製図演習
 食料環境システム学概論II、緑の保全、卒業研究
大学院  栽培行程論1、2、食料・環境・健康生命(環境編)、課題開発演習、特定課題演習Ⅰ、Ⅱ、
 プレゼンテーション演習Ⅰ、Ⅱ、統合生産システム論1、2、特定研究1~6 専門:農業機械学
専門:農業機械学
所属学会:農業食料工学会、日本農作業学会、日本雑草学会、International Soil and Tillage Research Organisation
一言:新しく見えるものの内容の90%はコピー(=伝統の基盤の上に立つ)。古典を尊重することと,無批判なまま受け入れることは似て非なる行為。音楽の耳コピーと譜面読みから至った考えです。

研究内容:

その場反転プラウの設計と展開
写真は当時のもので、センターのC温室をベースに実験していた2004年頃です。耕うん方法の一種であるプラウ(犂)がけをすると、土が上下反転しながら右側へ寄ってしまいます。広い畑ならまだしも、狭い水田では土を寄せなおす手間がネックで犂が衰退した一因といわれていました。土が寄らないようにするには、土が反転中に宙に浮かせて裾払いをかませばよいと先人たちは試みましたが、結果はよく詰まって実用に耐えなくなるのがほとんどでした。そこで考え方を変え、一定速度で走行させて慣性で反転させてしまうシンプルな構造を提案しました。センターの土のように粘土を多く含むと土が崩れずにきれいに反転しましたが、砂の多い六甲の土ではなんとなくの結果でした。ですが2015年にナミビアに渡航したとき、南アフリカ製のハロープラウ(一本の軸に椀型のディスクを連ねて少し斜めに配置したもの)が、完全な砂地でその場反転風の仕上がりになることを発見して愕然としました。
研究としては単純に機械側からのみアプローチしたため、作物側から見た応用面での展開をできずに単なる試作に終わったのが大きな反省点でした。その場反転プラウの経験をもとに、耕うん機(2輪トラクタ)用の一発畝立て機(Disc ridger)を製作して栽培試験、単純な亀裂発生装置(チゼルプラウ)を試作してダイズ生育中に根を切る実験を行うなどの共同研究を行っています。

コンバインに搭載する収量センサの開発
穀物の収量は乾燥調製してからでないと計算できないのが常識でしたが、コンバイン上で穀物の流量を測れれば、GPSなど測位装置と組み合わせて収量をマップ化できると1990年頃から欧米で研究開発が始まりました。現代でいうスマート化のはしりです。一筆の面積が小さい日本ではマップ上で収量の高低を表現するよりも、水田ごとに正確な収穫量を測るほうに特化しようと考えました。穀粒タンクに大きな電子天秤(ロードセル)をつければよいとすぐ思いつきますが、構造変更や大型ロードセル価格の問題があります。そこで穀粒タンクに吐き出される穀粒の一部を小型ロードセル(納得のいく形を自分で削って作りました)につけた板に当て、その衝撃を収穫量に換算する方式をとりました。その後農機メーカーと共同研究を進め、2015年に市販化されました。写真は2007年頃、センターのコンバイン予備機に収量センサを磁石で付けただけの状態で実験しているところです。農家出身ながらコンバインの運転は初心者だったため、踏み倒したイネを無理やり刈り取ろうとして石を多く拾ってしまい、籾摺機が壊れそうだと技術員さんらからお叱りをうけた実験でした。
現在は上記の力学的なセンサに代わり、安価なマイクロホン(実質はイヤホン)を用いた音響学的なセンサを開発し、収穫量のみならず水分や品質の推定ができないか試しています。

機械除草の研究-株間の雑草をどう引き抜くか
この話に先立つ2000年頃、センターの水田の凸凹(最大で10㎝程度の差)が気になって調べると、深いところはタンパク質含有率が高い(食味が悪い)代わりに収量が高いことがわかりました。2011年に兵庫県がコウノトリ育む農法拡大のために、市販除草機の性能比較実験を篠山で実施しました。除草剤を打たない水田で典型的にみられるのが水生雑草のコナギです。水田の凸凹の経験から、浅・深に分けて調査してみると、写真の除草機のみが深いところでコナギがほぼゼロでした。難しい株間(除草機の進行方向に沿って現れるイネの株と株の間)でうまく除草できている証左です。作物への傷害を抑えながら雑草を防除できることを選択性といい、移植水田での株間の機械除草の場合は根の長さの違いを利用しています。写真のカゴ輪の前方に株間除草用の傾いた羽根車があるのですが、のちにわかったのは、水深が大きくなると水の抵抗で羽根車の回転が落ち、泥を引きずって雑草を引き抜く作用が増大する機構でした。それならと、羽根車の回転をモータで制御する実験も重ねたのですが、時を同じくしてほぼ同じ発想の除草機が市販されてしまいました。ちなみに現在は豊岡から離れたセンターの水田にもコウノトリが時々飛来します。彼らの餌となる小動物を増やせる無除草剤の水田も作っていこうと取組み中です。

不耕起栽培での田植機、播種機、除草機
水田では代かきをしない、畑地では耕うん整地をしない不耕起栽培は、日本でも1980~90年代に省エネや省力の観点から研究がなされましたが、広く普及には至りませんでした。FAOが保全農業(Conservation Agriculture)を推奨する現代では、土壌表面の攪乱を抑える不耕起栽培の意義が改めて見直される一方で、すでに不耕起栽培が必然的に行われるスポットがあります。干拓地での大型機械の沈下を防ぐために代かきをしない、有機水稲農家が上述のコナギ対策のために(酸素が多い環境では発芽しないため)不耕起にこだわるといった例です。そこで2018年に改めて既存の田植機に作溝装置(そのまま植えると浮き苗になるので)を追加した田植機を試作して試験場で栽培しました。少しずつ改良して2021年にはセンターで試行しましたが、栽培に慣れないこともあって逆にヒエ類の襲撃にあいました。現在は、オプション感覚で装着できる簡便な作溝装置を開発中です。ですが2022年、ついに何の改造もなしに不耕起移植に成功している人に出会いました...技術の奥は深い。

関連して、山間地の畑でダイズを不耕起播種する方法を打診され、田植機の経験を生かしてすぐに作溝装置を提案しました。管理機(2輪トラクタ)で播種機を曳くのですが、硬い土での浮き上がりを防止するために、運転者が播種機に乗りながら(歩かなくてよい)操作する形になっています。一方で、1~2 ha規模の有機+不耕起ダイズ畑での簡便な除草方法も急遽開発中です。こちらは刈払機を台車上にいくつか並べただけのシンプルなもので株間除草はできませんが、刈払機1台を持って条間除草を行う場合に比べると作業能率や作業精度はかなり上がります。畑用の除草機は通常は中耕(鍬を入れたり土盛りをする)をベースとした技術を用いているため、耕さないとなると技術の選択肢が減る一方で、一部の農業機械の電動化の恩恵もあって、常識にとらわれないやりかたでも実用的な結果が得られるものだと感心しながら実験を進めています。


名前:
本多 健(ほんだ たけし)

所属:
農学研究科 附属食資源教育研究センター
生産フィールド部門

農学研究科 資源生命科学専攻
応用動物学講座 動物遺伝資源開発学

担当授業:
学部 牧場実習、農場実習Ⅱ、農場実習(応用機能生物学コース)、農場実習(応用生命化学コース・生産環境工学コース)、
 農場と食卓をつなぐフィールド演習、応用動物学演習、外国書購読、初年次セミナー、卒業研究
大学院 課題開発演習、特定課題演習Ⅰ、Ⅱ、プレゼンテーション演習Ⅰ、Ⅱ
専門:家畜育種学
所属学会:日本畜産学会、関西畜産学会
一言:集団遺伝学という長い歴史のある学問を専門としています。この分野は家畜育種の現場で様々な形で役に立つ可能性を持っています。コンピュータ・シミュレーションや理論の構築といったプロセスを経て有益な議論ができるよう日々思案しています。

研究内容:
家畜集団の遺伝的多様性の評価と維持・回復に関する研究

 家畜集団がもつ遺伝的多様性の急速な低下は、遺伝的不良形質の発現や、消費者の需要の変化に対する適応能力の低下等、様々な弊害をもたらす危険性を含んでいます。このような家畜集団において、遺伝的多様性および遺伝的構造の変遷や現状を血統情報を利用して調査を行っています。また、家畜集団の遺伝的多様性の維持や近交回避を目的とした集団構造および交配様式についての研究も進めています。


名前:
吉田 康子(よしだ やすこ)

所属:
農学研究科 附属食資源教育研究センター
資源開発部門

農学研究科 資源生命科学専攻
応用植物学講座 植物遺伝資源開発学

担当授業:
学部 農場実習Ⅰ、農場実習Ⅱ、農場実習(応用機能生物コース)、
 農場実習(応用生命化学コース・生産環境工学コース)、農場と食卓をつなぐフィールド演習、卒業研究
大学院 課題開発演習、特定課題演習Ⅰ、Ⅱ、プレゼンテーション演習Ⅰ、Ⅱ
専門:保全生態学、遺伝的多様性評価
所属学会:日本生態学会、日本育種学会
一言:高校3年生の時、恩師が一冊の本をくれました。その本のタイトルは「保全生物学」。現在の研究との出会いでした。あれから10年以上が経過し、日々の生活に追われながらも、ふと自分のやりたかったことができている今に幸せを感じるこの頃です。

研究内容:
サクラソウ (Primula sieboldii E. Morren) 研究
野生のサクラソウ
野生種と園芸品種
-園芸品種はこんなに多様-
※クリックで図を拡大します
 かつては春先にピンク色の可愛らしい花を咲かせていたサクラソウも現在は個体数が減少し、絶滅危惧植物に指定されています。身近な生活の中で愛されてきた野生種が起源となり、これまで300を超える多くの園芸品種が作られてきました。以前のようにサクラソウが咲く景色を求め、各地で地道な保全努力が続けられている一方で、園芸品種は毎年春になると全国各地で展示会が開かれるなど、サクラソウは多くの人々の手によって大切に育て、守られています。

①絶滅危惧植物サクラソウ野生集団の多様性と適応に関する研究
 遺伝的多様性とは適応進化の基盤であり、長期的な存続には不可欠です。その中でも特に生存に関係するとされている「適応に関連する遺伝的多様性」に着目し、現存する野生集団が持つそれぞれ固有の遺伝組成を適切に保全することを目指しています。「適応に関連する遺伝的多様性」は、環境に大きく影響を受けるため評価に時間がかかります。そこで、効率よく正確な評価を行うために、適応に関連する遺伝子を探索し、これらの遺伝子を用いて、日本に現存する野生集団の遺伝的多様性の評価を試みています。

②園芸品種の花弁形態に関する遺伝的多様性評価
 サクラソウの品種改良が盛んに行われるようになったのは江戸時代とされていますが、サクラソウの栽培は室町時代にはすでに行われていたという記録が残されています。これまで野生のサクラソウから突然変異の個体や交配などによって、多様な変異をもつ品種が多数育成されてきました。もともと野生種を起源としているものの、ピンク色のシンプルな花弁をもつ野生種とは大きくことなる園芸品種の多様性には驚かされます。これらがどのように栽培化されてきたのか、また効率よく品種改良をしていくためにはどのようにすべきかを知るために、野生種および園芸品種の花弁形態の遺伝的背景を探っていきます。

ダイコン (Raphanus sativus L.) 研究
 日本のダイコンは、年々生産量が減っているものの、日本では生産量の多い主要野菜のひとつです。たくあん漬や千枚漬といった漬物やキムチ、切干しなどの加工用、サラダなどの生食用や煮物などの加熱用など様々な場面で使われています。これらの用途に合わせて、聖護院ダイコンや桜島ダイコンのような大きなものから守口ダイコンのように細長いもの、そして二十日ダイコンのように小さいものまで、ダイコンの根は多様な変異を持っています。

①ダイコンの根の肥大性に関する研究
 ダイコンの根の多様な形態のメカニズムを把握するため、根の肥大性に着目し、根の肥大性を関わる形質について遺伝解析を行っています。また日本のダイコン品種の根の肥大に関する遺伝的変異の評価も行っています。

②ダイコンの採種効率の向上に関する研究
 ダイコンは、自家不和合性を利用して採種されたF1品種が主流です。生産現場では高純度のF1品種が求められていますが、実際には自家不和合性であっても自殖種子の混入が少なくありません.そのためF1純度の高い「良質種子の採種」は園芸作物において重要な課題となっています。そこで、ダイコンの高純度のF1種子を安定的に得ることを目的として花器形態に着目し、花粉媒介昆虫による他家受粉を促す花器形態の遺伝解析に取り組み、採種性の向上を目指しています。