スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

本校生徒によるコンペティションで優勝した本校のSSHロゴです。

SSH研究開発の成果である教材や指導案等へのリンクは別ページにまとめております。教育関係者の方は併せてご覧ください。

 

 

「グローバルキャリア人」育成のためのSSH

本校は開校以来、グローバルキャリア人、すなわち本校の校訓である自治・協同・創造をそれぞれ体現する

  • 主体的に自己及び社会の未来を切り拓くことのできる生徒
  • 国際的な視野を持ち、自他を認め合って行動できる生徒
  • 真理探究の精神に富み、新たな価値を創造する力を身につけた生徒

の育成を目指して教育に取り組んでいます。この目標に向けた教育を一層深めるため、本校は文部科学省の研究開発事業「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)に応募し、採択を受けて、2020年度からの5年間の事業に取り組んでいます。 SSH指定校のほとんどは研究開発の対象を一部の生徒に限定していますが、本校では生徒の進路希望によらず全校生徒を対象として研究開発を行っている点が特徴です。

Education for 2070と「持続可能な開発のための科学技術イノベーション」

本校の研究開発課題は、

生涯を通じて新たな価値を創造し続ける文理融合型人材の育成
― Education for 2070 ―

です。

今から50年後、本校に在籍する生徒は62歳から68歳を迎えています。人生100年時代と言われる中で本校を卒業していく彼らは、そんな未来にあってもきっと社会の先頭で活躍を続けているはずです。本校は、そのような未来を生きる生徒たちに求められる力の育成、そして卒業後により高度な教育を受けるための支援に正面から取り組むことが、中等教育の6年間という貴重な期間を託された学校としての責務であると考えています。本校は、SSH第1期申請に当たり、本校教育のスローガンをEducation for 2070と定めることにしました。

50年前、1970年代に、現代進展している情報化・グローバル化の様子を果たしてどの程度見通せただろうかと思いを馳せれば、現代に生きる我々が50年後の未来を想像することもまた困難であると直ちに気づきます。しかしながら、現代を席巻しているAI技術の基盤が、伝統的な数学・統計学および、50年前に既に成立しつつあった情報科学にあるように、50年後の未来に残っている課題もまた、人類が現在既に手に入れている知を基盤として解決されるべきものでしょう。

50年後の未来においてもおそらく、「持続可能な開発」、すなわち、「将来の世代が豊かに生きられる可能性を損ねることなく、現代の我々自身もまた豊かさを追求すること」は、世界の最重要課題であり続けます。しかしながら、現代世代の豊かさと将来世代の豊かさは必ずしも両立できないものではありません。人類はこれまでに科学技術――本校では自然科学だけでなく社会科学や人文科学を、テクノロジーだけでなくアートを含めた、人類のあらゆる知の総体と捉えています――の力を借りたイノベーションを次々と起こし、人類の豊かさを制約する障壁を打ち破ってきました。

本校の卒業生が、6年間の本校での修学、そしてそれを踏み台にして掴んだより高度な学究の機会を糧に、1人の「グローバルキャリア人」として、様々な角度から人類の「持続可能な開発のための科学技術イノベーション」(Science Technology and Innovation for Sustainable Development, STI4SD)に貢献してくれるであろうと信じています。そうした教育をより深めるため、本校は文部科学省および科学技術振興機構の支援を受け、科学技術教育の研究に取り組んでいます。

 

 

SSHで実施する主な事業

本校のSSH事業は、

の4つの「研究開発単位」から構成されます。

これらのSSH事業に、それ以外のSSH事業に含まれない本校のあらゆる教育活動が相乗し、50年先の未来を見据えた教育活動を開発・展開します。

本校教育活動の中でのSSH事業の位置づけ(クリックで拡大)
SSHの4つの研究開発単位の概要(クリックで拡大)

Kobeポート・インテリジェンス・プロジェクト(KP)

「4学年協同ゼミナール」の授業動画(YouTubeにリンク)

50年後を見据えた教育の中でもっとも重要であると本校が考えるのは、既に共有されている知識を単に利用するだけではなく、むしろ既存の知識を活用して新たな知識を自ら産み出す「知の生産者」としての能力、すなわち真理探究の能力です。

この真理を探究する力を育成する軸が、本校SSH事業の、そして本校のあらゆる教育活動のもっとも中核に位置する、課題研究「Kobeポート・インテリジェンス・プロジェクト」(略称KobeプロジェクトKP)です。

6年生(高等学校3年生相当)で18,000字相当の卒業論文を全員が提出することを目標に、3年生(中学校3年生相当)から1人1つのテーマを定め、生徒全員が6年間で3回の個人研究に取り組みます。大学のゼミナールを模した「4学年協同ゼミナール」の授業内で、教員から生徒へだけではなく、先輩から後輩へ、探究スキルが継承・深化されていきます。また、3年生以降で協同ゼミに参加して個人研究を行う準備段階として、1年生・2年生(中学校1・2年生相当)では、神戸などの身近な地域についてのグループ探究を行います。これらの探究に、生徒はSSHの支援を受けて整備した「探究ラボ」の機材や書籍を活用しています。

SSH等に指定されている多くの高等学校がグループ研究を行っている一方、本校はあくまで個人研究にこだわり、研究活動の自由とそれに取り組む責任をすべて生徒個人に割り振っています。問いを立て、様々な手段を用いて根拠を集め、そして最後に問いに答えるという探究のサイクルに入学直後から何度も挑戦することで、「問いは自ら立てて解決するものである」という意識は1年生から皆が当然のように持つようになります。真理探究を尊ぶ学校文化の中で先輩に囲まれながら、自ら立てた問いに繰り返し挑み続け、自らが選んだテーマについて校内でもっとも詳しくなった証としての「卒業論文」を携えて、次のステージへと羽ばたいていきます。

1年生(中学校1年生相当)時グループ研究の口頭発表
4年生(高等学校1年生相当)時個人研究のポスター発表

Education for 2070学校設定科目

「知の生産者」として生涯にわたり新たな価値を産み出すためには、一般的な探究スキルを身につけるだけでなく、既に確立されている様々な学問を修め、またそれらを組み合わせることも必要です。例えば、伝統ある医学・薬学に、分子科学や生物物理学の知見が組み合わさることで、近年分子標的治療が発展しています。ロボット技術の実用化には、情報科学や制御工学の進歩に加えて、法学や倫理学の視点からの制度設計も必要でしょう。本校卒業後に、学問領域を協働させた知の生産者となるため、古典的な、そして現代的な教養を育む授業を開講します。

SSH事業の枠組みの中では、法令(学習指導要領)で規定された教育内容によらずに特例的に実施が認可されるカリキュラムとして、次の5つの本校独自の授業(学校設定科目)を開講しています。

  • 数学・統計学についての古典的な理解に基づき、Pythonなどを用いて実際にデータ分析の実習を行う科目「データサイエンス
  • 物理学・化学・生物学・宇宙地球科学それぞれの領域の古典的な理解を基礎として、それらを協働させて自然現象の探究を行うとともに、人間社会との関連も論じる科目「科学総合
  • 実際のものづくり経験を通して情報科学への理解を深めさせるSTEAM教育(Science, Technology, Engineering, Arts and Mathematics)を行う科目「探究情報
  • 持続可能な開発に関連した倫理、法、社会における現代的課題(Ethical, Legal and Social Issues, ELSI)についての議論を通じて、社会科学や人文科学の古典的な理解も深める科目「ESD
  • 持続可能な開発に関連する話題を英語で学び、議論する活動を通して、英語についての読解・聴解・作文・会話すべての技能および、持続可能な開発に関連する諸課題への理解を統合的に高める、内容言語統合型学習(Contents and Language Integrated Learning, CLIL)を行う科目「探究英語

これらに加え、高度な理数教育を実現するために、専門学科「理数科」の内容を取り入れた教育課程を編成し、特に、希望する進路によらずに全員が微分積分学の基礎(いわゆる「数学Ⅲ」の内容)を学びます。また、SSH事業に直接は含まれませんが、本校の実践に基づき全国的なカリキュラムが策定された「地理総合」「歴史総合」など、自然科学にとどまらず、人文科学・社会科学に関わる科目、そして実技科目も含めて、6年間で深く広い教養を身に着けて本校を卒業します。

探究英語:AIを課題とするプレゼンテーション
科学総合:物理学・化学双方の知識を用いた探究実験

Future Innovator Training (FIT)

知の生産者」としての学術的素養を育む課題研究や教科教育を、異なる角度から補う自治的・体験的学習プログラム「Future Innovator Training (FIT)」として、下記のような事業をSSHの中で実施しています。

  • 研究室インターンシップ神戸大学との連携のもと、様々な研究科や附属病院などの実習施設の協力を得て、課題研究よりも更に進んだ研究活動を体験します。
  • 国内体験学習神戸大学内海域環境教育研究センターの協力を得て淡路市岩屋にて海洋生物について学習する臨海実習や、全国各地のユネスコ世界ジオパーク等を巡検することで地質・生態とその上の人々生活について体験的に理解を深めるジオ・エコパーク研修など、多様な校外学習を行っています。
  • 国際交流研修世界各地の交流校などへの訪問や交流を通して、単なる語学研修ではなく、英語を用いて幅広い話題の国際交流を行う研修を実施しています。
  • 自治的学習プロジェクト:食に関わる様々な問題を通して持続可能な開発について学習する「ESD Foodプロジェクト」、阪神・淡路大震災を経験した神戸市と日本各地の他の災害の被災地との交流等を通して防災・減災・復興について学習し、本校の防災学習を主導する「Disaster, Reconstruction, Reduction and Resilience (DR3)プロジェクト」など、生徒が自治的に様々なプロジェクトを立ち上げて学習します。
  • FIT Lecture:KPや上記FITなどへの参加に先立ち、課題意識を深めるために、各界の有識者や各所で活躍する卒業生など、様々な講師を招聘した講演会を随時行います。

大学の研究室や様々な実地などの校外の環境で、また各界の有識者や海外交流校の生徒など日頃接することのない方々との、普段の学校生活とは一味異なる活動を通して、課題研究における主体的なテーマ選択、そして本校卒業後の主体的な進路選択のきっかけを得る生徒も多数います。また、これらのFITプログラムを通して取り組む課題は、校内外の他者との協力なしでは達成できないものも多く、自分一人の力のみで課題に取り組むKPでの学びを補完します。

生徒自ら企画を立ち上げ、力を合わせて実施に取り組む兎原祭などの、SSH事業以外の教育活動とも連携し、生産した知を他者と協同しながら用いることで、机上に留まらないイノベーションを起こせる人材、「知の運用者」を育成します。

国際交流研修:シアトル交流校での課題研究のプレゼンテーション
国内体験学習:神戸大学マリンサイトでの海藻採集実習

Advanced Science and Technology Academy (ASTA)

生徒制作のASTAロゴ

文部科学省が実施するSSH事業の目的は、科学技術人材育成――本校ではあらゆる「知」を生産し、また運用することで新たな価値を創出する卒業生の輩出ととらえます――とされています。科学技術人材を育成するための本校らしいあり方として、本校はAdvanced Science and Technology Academy (ASTA)という生徒会組織を立ち上げました。

ASTAは、生徒が自治的に、関心のある事項について同好者を見つけてともに探究する場です。時に生徒が自発的に面白い題材を発掘し、時に教員から生徒を誘い込み、様々な事項について学ぶ班ができています。科学オリンピックの出場に向けて互いに問題を出し合う班、大学数学の教科書を輪読する班、果ては文学に挑戦して句会を開催する班など、参加生徒の関心は多様です。自らの学びを校外にも広めようと、兎原祭ではサイエンスショーを主催したり、オープンスクールでは本校教員に代わって体験授業を実施したりまで、幅広く活動しています。

生徒が自ら活動し、仲間と協力しながら、豊かな学びを創り出す場。校訓である自治・協同・創造の精神を体現するこの「アカデミー」から、様々な場で50年後の未来においても活躍を続ける卒業生を輩出できることを期待しています。

ASTAによるオープンスクールでの児童対象模擬授業
ASTA物理班:国際物理オリンピック日本予選の実験レポート作成

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