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2007年6月15日 更新

NaTaO3光触媒の時間分解赤外分光法による解析

(神大院理・JST・東理大) ○丸山規司,野本知理, 岩瀬顕秀, 加藤英樹, 工藤昭彦, 大西洋
Time-resolved IR spectroscopy study of NaTaO3 photocatalysts, (Kobe Univ.・JST・Tokyo Science Univ.) M. Maruyama、T. Nomoto、 A. Iwase、H. Katou、A. Kudo、H. Onishi

[序] 光のエネルギーを用いて表面化学反応を起こす光触媒は太陽光を利用したエネルギーの生成や環境汚染の浄化といった様々な分野において現在注目を浴びている。光触媒は水から水素燃料を取り出せるため燃料電池を利用したエネルギー分野での応用ができる。しかし可視光励起による反応活性はいまだ十分でないため異種元素のドーピングによる高性能化が模索されている。
 本研究では水素燃料生成に重要な水分解反応で高活性をしめすNaTaO3とそのアルカリ土類金属ドープ体をサンプルとした。これらの光触媒反応に関与する光励起キャリアーを時間分解赤外分光法で検出することでドープによるキャリアーの挙動の変化と水分解活性の関係を解析した。また酸素やメタノール雰囲気下でのキャリアーの挙動の変化を測定した。

[研究方法] 伝導帯へ励起された電子はバンド内遷移によって赤外光を吸収する。これを利用し励起光を照射した光触媒の赤外光吸収の時間変化を時間分解赤外分光装置を用いて観測することで励起電子の減衰過程を調べた。
 測定ではQ-switched Nd:YAG laserを用いてパルス光の励起光(波長266 nm, パルスの時間幅20 ns, パルス周波数1 Hz)を真空下(0.05 Torr)および酸素、メタノール雰囲気下(10 Torr)でサンプルに照射して赤外光の過渡吸収を検出した。東京理科大学工藤研究室からNaTaO3およびそのアルカリ土類金属(Ca:5 atm%, Sr:0.5 atm%, Ba:1 atm%)ドープ体の提供をうけて測定した。

[結果と考察] 真空中で測定した2000 cm-1の赤外吸光度はドープ体が無ドープ体より大きかった。NaTaO3にアルカリ土類金属をドープすることによって励起電子と正孔の再結合反応が防がれて電子の残存量が3~5 倍になった。紫外光照射による水素生成速度はSr体>Ba体>Ca体>無ドープ体の順であった。よって水分解活性もドープすることにより大きくなっていることから励起電子の数が多いほど水分解活性が大きくなることがわかった。ここでSr体とBa体の間で励起電子の数と水分解活性の序列が反転した。このことから水分解活性には励起電子の数以外に他の要素も関係していると考えられる。
 全サンプルにおいてメタノール雰囲気下で励起電子の減衰が抑制され、酸素雰囲気下ではSr体を除くサンプルで電子の減衰が促進された。これはメタノール由来のメトキシ種が酸化反応により正孔を消費し、酸素が還元反応により電子を消費するためであり、検出した吸収が電子による吸収である証拠である。
 Sr体では酸素雰囲気下で電子の減衰が抑制された。Sr体には特殊な現象が起こっていると考えられる。


この研究は2007年6月14日に第23回化学反応討論会で発表しベストポスター賞に選定されました。

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