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2009年6月19日 更新

光電着法により白金を担持した二酸化チタンモデル触媒のAFM観察

神戸大学
片岡涼美・木村建次郎・大西洋

二酸化チタン(TiO2)は太陽光で動作する光触媒であり、環境汚染物質の分解に広く利用されている。光を吸収したTiO2内部に励起電子と正孔が発生し(ステップ1)、両者がTiO2表面まで移動して(ステップ2)、表面に吸着している分子に付着して化学変化を引き起こす(ステップ3)。ナノメーターサイズの白金粒子をTiO2光触媒に付着させると、光触媒反応の効率が著しく向上する。白金の役割は、励起電子を表面に誘導し正孔との再結合を抑制すること(ステップ2の高効率化)および、光励起電子を白金表面に吸着した分子へ効率よく付着させること(ステップ3の高効率化)である。TiO2光触媒の表面は凹凸が多く、さまざまな構造が混在している。同じ白金ナノ粒子であっても、付着する場所が違えば働きが異なるはずである。光触媒をより一層高効率化するためには、どのような場所にナノ粒子を付着させればよいのか? そしてそれはなぜなのか? 本研究は、科学研究費_特定領域研究「高次系分子科学」の支援のもとに、これらの問に答えようとするものである。

光触媒の動作原理

図1 光触媒の動作原理

本研究の特徴は、現実の光触媒を模擬したモデル触媒を、最先端の走査プローブ顕微鏡で計測することにある。これまで世界中で行われてきた同種研究は、TiO2表面に白金を真空蒸着して計測するものであった。実際に利用される触媒は溶液反応を用いて白金を付着する。本研究では、一般的な光触媒作成法である光電着法を用いてTiO2表面に形成した白金ナノ粒子をプローブ顕微鏡で計測した。原子間力顕微鏡(AFM)画像によると、TiO2表面のステップ(階段状の構造)に沿って多数の白金ナノ粒子(粒径数十nm)が集積している。これは真空蒸着とはまったく異なる結果であり、実触媒を模擬した試料作成の重要性を明瞭に示している。今後の発展として、白金-TiO2間で期待される電子移動を計測するケルビンプローブ顕微鏡などを用いて、個々の白金ナノ粒子の物性計測を進めることが大いに期待できる。

図 白金ナノ粒子を光電着したTiO2表面の原子間力顕微鏡画像。画像サイズ:500 nm四方

図2 白金ナノ粒子を光電着したTiO2表面の原子間力顕微鏡画像。画像サイズ:500 nm四方

この研究成果は2008年9月26日に第102回触媒討論会で発表しました。触媒学会から注目発表に選定されました。

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