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ダブルディグリー

神戸大学から復旦大学

経済学研究科

國松 茉梨絵さん

プロフィール:2015年、神戸大学経済学研究科修了。2013年、同大学在学中に、復旦大学にダブルディグリープログラムで1年間留学。現在、UNICEF(国連児童基金)スーダン事務所にて教育マネージャーとして勤務。

Q1:現在の職務内容を教えてください。
UNICEFスーダン事務所の教育マネージャーとして、紛争下にある1,900万人の学齢期の子どもたちを対象とした大規模な教育プログラムを統括しています。主な職務は、緊急教育サービスの計画・調整、学校再開支援、ドナー資金による大型プロジェクトの管理、政府・国連機関・NGOとの連携、現場チームの指導などです。

スーダンは現在、世界でも最も深刻な人道危機の国の一つであり、何百万人もの子どもたちが避難を余儀なくされています。そのような状況下で、戦闘後の地域における学校再開支援、教員・教育制度の支援、長期間学校に通えなかった子どもたちの基礎学力向上などの学校教育サポートと、学校が安全でない場合、安全な学びの場(Safe Learning Spaces)を設置してノンフォーマル教育を提供しています。 国際機関や地域コミュニティと緊密に連携し、紛争影響下の全土でアクセスが極めて困難な地域でも教育支援を行っています。

Q2:現在の活動で印象に残っている経験はありますか?
最も忘れられない経験の一つは、10年以上も人道支援が届いていなかったスーダンのある地域で教育支援を実現したことです。一筋縄ではいかないことばかりで、現地の当局やコミュニティと何カ月も対話を重ね、耳を傾け、少しずつ信頼関係を築く必要がありました。ようやく学習スペースを設置し、これまで一度も支援を受けたことがなかった子どもたちに教育を届けられた時の光景は、決して忘れられないものになりました。初めて教室に座り、学ぶ子どもたちの姿には深く心を揺さぶられました。

また、紛争の影響で1年間学校に通えなかった思春期の少女たちとの出会いも心に残っています。学びの場に戻った彼女たちは、「子どもの権利を守る弁護士になりたい」「教師になりたい」、純粋に「もう一度学びたい」といった夢を語ってくれました。過酷な経験をしてもなお、前向きな彼女たちの姿は、少女たちに安全な学びの機会を提供することの重要性を改めて教えてくれました。

Q3:なぜ現在のキャリアを目指したのですか?
教育は、紛争の影響を受けた子どもたちを含め、子どもたちの人生に安定と尊厳をもたらす最も力強い手段の一つだと信じています。危機的な状況にあっても、子どもたちが未来を思い描き、その可能性を広げられるよう支えたいと考え、この道を選びました。国際機関で働くことで、コミュニティが直面する現実に寄り添いながら、同時にシステムレベルでの大きな変化にも貢献できる点に魅力を感じています。

Q4:キャンパスアジアプログラムで特に印象に残っている経験はありますか?
復旦大学での経験は、私にとって大きな転機となりました。中国・韓国・日本だけでなく様々な国籍の学生が集まる、真に国際的な学習環境でした。困難な場面もありましたが、その経験を通じてレジリエンス(適応力)が養われ、複雑で多文化な環境の中で協力し合う力と、困難に向き合う強さを身につけることができました。

また、このプログラムで築いた友人関係は、私にとって何物にも代えがたい財産です。仲間の多くが後に国際開発や公共政策、人道支援の分野に進みました。彼らは今でも大切な友人であり、同じ分野で働く心強い仲間です。互いの挑戦を理解し合い、助言を共有し、成果を喜び合えるこのネットワークは、私のキャリアにおいて大きな力となっています。

Q5:キャンパスアジアプログラムでの学びが現在の活動にどのように活かされていますか?
UNICEFでは、多様な国籍や専門分野の同僚と緊密に協力して働きます。現場の状況は予測できないことが多く、多くの場合、迅速な判断と慎重な調整の両方が求められます。紛争下のスーダンで大規模教育プログラムを運営するには、専門知識に加え、リスクを評価し、多くのパートナーと協働して困難な状況下でも前進できる能力が必要です。

私は神戸大学で経済学、復旦大学で公共管理学(MPA)の修士号を取得しました。異なる二つの学問領域を学んだことで、教育支援を経済・制度・政策の視点から多角的に捉える力を育てることができました。キャンパスアジアプログラムは、これら2つの学問領域を自然に結びつけ、複雑な課題に対して多面的に考える基盤となりました。

また、キャンパスアジアプログラムのリスクマネジメントを重視した授業を通じて、複雑な状況分析、優先順位決め、多角的視点での意思決定を学びました。これらのスキルは政府との調整、アクセス困難地域での支援計画立案、子どもたちの教育機会に関するリスク評価など、現在の業務で重要な役割を果たしています。

学生時代には、長期休暇を利用していくつかのインターンシップにも参加しました。ラオス教育省、FHI360、ユネスコ・アフリカ能力開発研究所(IICBA)、国連アフリカ経済委員会(UNECA)などで働く機会がありました。これらの経験を通じて、国連システム内でプロジェクトがどのように運営され、組織間でどのように連携しているのかを学びました。

この知識は、現在の私の働き方にも大きな影響を与えています。このような機会に挑戦することを後押ししてくださった先生方には、心から感謝しています。

最後に在校生・後輩へのメッセージをお願いします。
指導教員はいつも「Be proactive」と励ましてくださいました。その言葉に背中を押され、キャンパスアジアプログラムに応募しました。当時は将来が見えていたわけではありませんが、今振り返ると、先生の助言に従って本当に良かったと感謝しています。あの一歩が、新しい視点やかけがえのない友情、そして今の仕事にもつながっている学びのあり方への扉を開いてくれました。

この分野に進んでから、専門知識は重要ですが、それだけでは十分ではないと気づきました。人とどのように協働するか、困難にどう向き合うか、状況をどう理解するかといったソフトスキルも同じくらい重要です。それらは、実際の経験を通して少しずつ育まれていくものです。キャンパスアジアプログラムは、当時学んでいた経済学やリスクマネジメントといった専門分野の学修と並行して、こうした力を伸ばすための環境と機会を与えてくれました。

私は、最初からすべてを決めておく必要はないのだと学びました。大切なのは、自分が進みたい大まかな方向を心に留めておくこと、そして新しい挑戦や機会に向き合うたびに、それが自分にとってどのような意味を持つのかを少し立ち止まって考えることでした。振り返ってみると、そうした小さな選択の積み重ねが、やがて自分の学問の道やキャリアを形づくっていったのだと感じています。

もしこのようなプログラムに参加する機会があれば、それは思いがけないかたちであなたの世界を広げてくれるかもしれません。そしてどの道を選ぶにしても、それが自分らしいと感じられるものであることを願っています。

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