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フィールドトリップ

神戸大学からのフィールドトリップ

2025年10月

WHO神戸センター

国際協力研究科(GSICS)では、国際機関との連携・実務家によるセミナーを通じ、学生が実践的な学びを深める機会を提供しています。2025年秋学期には、「リスクマネジメントⅡ」の授業の一環として、WHO神戸センター*を訪問し、「グローバルヘルスの脅威とリスクマネジメント」をテーマにフィールドトリップを実施しました。以下に参加者の声を紹介します。

*WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)は日本に設置された唯一のWHO直轄の研究事務所であり、1995年の阪神・淡路大震災を契機に設立されました。センターは研究手法に関するガイダンスの出版、大学等との共同研究、研究ネットワークの構築を行ってきましたが、大震災から30年の契機に2026年3月末に閉鎖されることになりました。



Vu Thanh Thuy (ベトナム)
リスクは科学的な概念であると同時にガバナンス(統治)の問題でもあることを学びました。
特に印象的だったのは、WHO神戸センターがリスク管理を単なる「災害対応」ではなく、継続的かつエビデンスに基づくプロセスとして捉えている点です。また、保健医療分野のグローバル・ガバナンス(保健ガバナンス)、気候変動、災害対策など、グローバルな課題をより深く考える契機となりました。世界的なリスクに対応するためには、技術的知識だけでなく、責任の共有・信頼・国際協力が不可欠であると実感しました。
茅野医官およびWHO神戸センターチームの皆さまのご指導と情熱に心より感謝申し上げます。この経験は、今後の学術・職務において、国際的な健康レジリエンス強化に貢献したいという強い動機づけとなりました。



Adinda Saraswati Cahyaning Wulan Suci(インドネシア)
公衆衛生におけるリスクへの理解が大きく変わりました。リスクマネジメントといえば、感染症の制御や緊急時対応を中心に考えていましたが、実際には社会の脆弱性を減らし、長期的なレジリエンスを育てることが本質だと学びました。
特に印象的だったのは、WHOの活動がパートナーシップに強く依存しているという点です。
単一の機関では世界的リスクを管理できないという現実に、国際協働の重要性を再認識しました。この経験を通じて、リスク管理とは「被害を避けること」ではなく、より強く、柔軟で、信頼に基づく社会をつくることであると理解しました。



Franka Rozemarie Berkhout (オランダ)
印象的だったのは、過去数十年にわたるWHOの成果と、国際的な健康安全保障(Global Health Security)の重要性を学べたことです。各国をつなぎ、災害リスクマネジメントを通じて地球と人類、そして未来世代の健康を守る基盤を築くことの意義を強く実感しました。
茅野医官の講義を通じて、各国が互いから何を学べるかという国際的視点を持つようになりました。特に、神戸センターが政策研究に焦点を当てていることから、将来的には気候変動に関する環境科学の専門知識を生かし、WHOで政策アドバイザーとして働くという新たなキャリアの可能性を考えるきっかけにもなりました。この訪問は、私にとって大きな刺激と新たな動機を与え、今後の進路を考えるうえでの貴重な経験となりました。



Chang Tzuyin(台湾)
この訪問で「リスク」に対する考え方が大きく変わりました。以前はリスクを主に「数値や確率」として捉えていましたが、今ではそれが不平等・対応能力・信頼と深く結びついた人間的な概念であると理解しています。
また、WHOが感染症だけでなく、メンタルヘルス、高齢化、非感染性疾患(NCDs)にも力を入れていることに驚きました。これにより、「健康安全保障(ヘルス・セキュリティ)」とは単なる緊急対応ではなく、危機が起こるはるか前から人々を守る日常的なシステムの強化を意味するのだと気づきました。
個人的には、この訪問を通じて、統治(ガバナンス)とレジリエンスは表裏一体であると感じました。学問的には、授業で学んだ多くの理論が現実の国際課題と結びつきました。政策や枠組みの背後には、世界を少しでも安全にしようと努力している現場の人々がいることを改めて実感しました。



Park Chansong(韓国)
リスクを「避けるもの」から「予測し、調整し、責任を分かち合うもの」へと再定義することができました。リスクとは単なる数値や確率ではなく、人々の選択・能力・希望の表れであるという視点を得ました。センターで見た科学的厳密さと人間的直感の共存は、レジリエンスが「つながり・信頼・協働」から生まれるものであると気づかされました。
また、この経験を通じて、GSICSの授業で学ぶグローバル・ガバナンス、開発政策、災害管理の理論を実際の国際制度と結びつけて理解できました。
今回の訪問によって、国際保健の学びは制度そのものではなく、制度が支える「人々」のためのものであるということを実感しました。この訪問は、私のリスクやガバナンスに関する学術的理解を深めただけでなく、将来の政策担当者として、技術と人間の幸福の調和を追求する責任を改めて自覚させる機会となりました。



Pornpimol Chaiboonta (タイ)
特に感銘を受けたのは、緊急事態・保健防災管理フレームワークに関することです。緊急対応システムだけでなく、地域の保健能力やコミュニティのレジリエンスの強化も影響することが分かりました。このアプローチは、タイで看護師である私のリーダーシップやリスク管理責任と深く関係します。この訪問を通じて、エビデンスに基づく政策や、WHOセンターが調整するような協力ネットワークが、起こり得る危機に対する国の備えや看護職の役割を強化するためにどのように応用できるかについて、さらに考えるきっかけとなりました。

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