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2020年3月25日 更新

就職について

よい就職?

大学生アンケートの結果が日本経済新聞の教育欄に掲載されていました。大学生活の目標として「よい就職をしたい」と回答した大学生が5年前に比べて大きく増えたのだそうです。あなたも「よい就職」をしたいですか?

待ってください! 「よい就職」は就職先を探している時点では存在しません。存在するけれども見つからないのではなく、存在しないのです。ところがこれから就職しようとする学生諸君は「よい就職」がどこかにあると思いこんでいるようです。存在しないものを無理に探すから知名度・業種・職種・任地・採用担当者の風采などに目を奪われるし、内々定を複数獲得して「もっともよい就職」を選ぼうとします。よい就職は探して見つかるものではありません。選べるものでもありません。就職したあなたがよい仕事をすることによって作るものです。

「自分の特性や適性を活かした職業に就きたい」というのは「最小限の努力で最高の評価を受ける仕事を選びたい」ということである。「仕事を通して別人になる」ことを求めない人のためのキャリアパスは存在しない。このような文章に邂逅しました。まったく同感です。

大学院生の就職活動

いわゆる「就活」は時間の無駄です。「就活」のときしか使いようのないマニュアルや、3年で陳腐化する業界情報を詰め込むことが、あなたのキャリア形成に役立つと本気で思っているのですか? 無駄ではあっても「就活」に割く時間をゼロにはできないというなら、最小限にとどめなければもったいない。一年は365日しかないのだから。

大学院生にとって最も本質的な、したがって最も有効な就職活動は、授業で学んだ知識をもとに研究することです。大学院生がおこなう研究活動とは、未知の状況にマニュアルなしで対処するために、自ら考えて、次の一手をうち、その結果をわかりやすく周囲に説明して、アドバイスをもらい、さらに先へ進むことです。このサイクルを実行する意欲と能力を備えた学生が社会から軽んじられる(=就職できない)ことはありません。

ゆえに、博士後期課程まで進んで自らの研究能力をとことん伸ばすことは真に有効な就職活動です。日本を除く国々(米欧中韓台印など)では、企業の研究開発職に就くための必要条件として博士後期課程への進学が定着しています。日本国籍の企業も出身国にとらわれない採用をはじめました。これから職に就こうというみなさんが職業人として大きな仕事をするのは25年後(2040年ごろ)でしょう。博士号非保持者でも研究開発の枢要に登用する日本固有の職制がそのころまで存続すると思いますか? 研究所長に博士号非保持者を充てる例は現在すでに減りつつあり、25年後には絶滅するでしょう。部長級・課長級のチームリーダーやグループリーダーについても同様です。博士号を取得したうえで企業や教育研究機関へ進み、研究開発をになう職業人として良い仕事をして応分の報酬を得てください。

2012年現在で日本国籍の大手化学企業による採用の1割は博士号取得者でした。博士修了者が修士修了者に比べて就職しにくいという事実は存在しません。みなさんが大学院を修了するころには、博士修了者が修士修了者に比べて就職しやすいことだってあるかもしれません。博士課程進学のリスクは、修了しても就職できない恐れにあるのではなく、修了に足る能力を身につけることができるかどうか(=博士を修了できるかどうか)にあります。

職業人として人生を楽しめるのは一度だけです。正しい情報にもとづいてあなたのキャリアをどこまで発展させるかを判断してください。

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