only a Japanese version

2017年10月25日 更新

研究の目標と背景

一滴の水には10の21乗個の水分子が含まれています。いま水分子の形や性質を調べるとしましょう。水滴に含まれる非常に多数の水分子から情報を集めて、その平均値を個々の分子にわりあてるのがふつうのやり方です。いわば国勢調査の結果から日本人の平均像を描くようなものです。こうして得られた分子の平均像を信用してよいのは、水滴を構成する水分子が等価だからです。

固体の表面は図1のイラストでみるようにでこぼこが激しいことが多いのです。だんだん畑のように結晶面が重なっており、平坦部(テラス)や階段部分(ステップ)をはじめ、いろいろな構造をもった部分が共存しています。あるべき原子が欠けてしまった個所(点欠陥といいます)もしばしば存在します。

図1 固体の表面はでこぼこだ!(二酸化チタン表面のモデル図)

水滴を固体表面にたらします。ひとたび水滴が固体に接すると、一部の水分子は表面に吸着します。図1をもう一度見てください。水滴中ではすべて等価であった分子が、吸着場所によって性質の違う分子になってもおかしくありません。ゆえに、分子ひとつひとつの個性を計測することなしには、吸着した分子の性質を調べることができません。これこそが、固体表面を舞台とした化学のおもしろさであり、また、むずかしさでもあります。

固体表面はいろいろなところで役にたっています。たとえば、二酸化チタンをベースにした光触媒や太陽電池が、自然エネルギーを利用した環境浄化デバイスあるいはエネルギー発生デバイスとして期待されています。その表面には組成や構造が異なるいろいろの微細構造が共存しますから(図2)、それぞれの部分でおきる光化学反応も異なっているはずです。

図2 いろいろな化合物が共存して機能を発揮する界面

しかしこれまでは「固体表面で何がおきているか」を現場検証することができませんでした。状況証拠にもとづいて推測するしかなかったのです。大西研究室の得意技は二つあります。(1)分子ひとつひとつを見分けることができる強力な顕微鏡を利用して、分子がたがいに反応して別の物質に転換していく現場をまるで映画をみるように観察することです。それに加えて(2)表面界面に存在する分子を感度よく分析する分光計測手法をいくつも発明しました。これらの実験手法をつかって表面と界面でおきる化学変化を現場検証することに自信があります。

私たちの大きな夢は、固体の表面でおこるさまざまな化学反応を自由自在に制御する方法を発見することです。これが実現すれば、排気ガス中の有害成分を削減したり、エネルギーをできるだけ節約しながらプラスチックや医薬品などを合成できるようになるはずです。太陽光を利用して水を水素と酸素に分解し、水素燃料を無尽蔵に作りだすこともできるかもしれません。夢を実現するために、得意技を駆使して固体表面の化学反応をコントロールする戦略をさぐります。私たちの研究は高校や大学初年時に習ってきた「化学」だけに縛られるものではありません。応用化学・物理学・物質工学・機械工学などの出身者と協同作業するのが楽しみです。

私たちがあげてきた研究成果は世界でもトップレベルにあると自負しています。これからもそうありたいと願っています。私たちと一緒に大学院博士課程・大学院修士過程・卒業研究にはげむ学生を募集中です。博士後期課程へ社会人入学することで在職しながら学位をとることも可能です。世界に通用する研究力を身につけてこそ理科系のプロフェッショナルです。興味のある方は大西洋へコンタクトしてください。研究室見学はいつでも歓迎します。

page top