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2011年12月22日更新

創製光分子科学セミナー

2012年1月13日(金)13:20 自然科学1号館512セミナー室

タンパク質の中赤外吸収の一分子観測
藤芳暁博士(東京工業大学理工学研究科)

中赤外波長領域には、アミドと呼ばれるタンパク質主鎖のペプチド結合に由来する吸収があらわれる。このアミドの吸収帯の遷移周波数、スペクトル形状はタンパク質の立体構造(特に、二次構造)の違いに敏感であることから、タンパク質の構造の研究に広く用いられている。最近、我々はこの吸収帯を1個のタンパク質から測定することを目指して研究をおこなっている。しかし、この吸収帯を感度の良い赤外顕微分光装置を用いて測定しても、測定には約100万分子のタンパク質が必要であり、一分子からの信号をとらえることは不可能であった。そこで、我々は以下にしめす赤外誘起の蛍光回復現象を発見し、これを利用することでタンパク質一分子の中赤外吸収を世界で初めて観測した。(1)タンパク質に蛍光色素を結合させる。(2)結合させた色素を可視光(波長633 nm)で励起し、数ケルビンで色素の蛍光を一分子観察する。(3)数分の間に色素は無蛍光状態になる。(4)この色素が結合しているタンパク質の吸収に共鳴させた中赤外光(波長6000 nm)を入射すると、色素の蛍光が回復する。この蛍光回復は複数回起こるため、中赤外光の波数を変えながら回復の頻度をプロットすることで、タンパク質一分子の中赤外吸収を、中赤外作用スペクトルとして取得した。講演では、この実験を実現するために開発した中赤外-可視の共焦点顕微システムの概要を説明した後に、得られた結果を紹介する。

ご来聴を歓迎いたします     

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