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2008年4月12日 更新

分光法を用いた光触媒におけるトラップ準位の検出

神戸大学
丸山規司・大西洋

化石燃料のクリーンな代替エネルギーとして水素燃料が注目されています。水素燃料を太陽の力で効率よく作ることができれば、私たちは無窮のエネルギー源を手に入れることができます。この夢を実現するために光触媒の開発が進んでいます。 太陽光のエネルギーを使って水を水素ガスと酸素ガスに分解する光触媒反応の研究において日本は世界のトップを走っています。

光触媒反応をおこす主役は光励起電子と光励起正孔です。光触媒反応の活性が高い触媒は電子と正孔が再結合して互いに消滅する再結合反応が遅い傾向があります。しかし触媒の種類により再結合反応の速度が異なる理由はわかっていません。この理由を解明できれば再結合を制御することができ、さらに高活性の光触媒を作ることができるはずです。

電子と正孔の再結合は触媒の結晶欠陥が生む不純物準位に電子と正孔が捕捉されることではじまると考えられています。そこでいろいろな光触媒にどのような不純物準位が存在するのかを計測する手法が必要となります。この研究では、あらかじめ不純物準位に電子を捕捉させたTiO2光触媒を準備して、新たに励起電子を生み出すことはできないが不純物準位に捕捉された電子を伝導帯へ励起できるエネルギーを持つ可視光を照射することで、捕捉された電子を伝導帯へ励起しました。そして伝導帯へ励起した電子の量を赤外線の吸収を測定することで計測しました(図1.赤)。同様の実験を不純物準位に電子を捕捉させていないTiO2光触媒で行い(図1.黒)両者を比較しました。すると電子を捕捉させた試料の方が検出した電子の量が多くなり、不純物準位から伝導帯へ励起した電子を検出できました。不純物準位と再結合がどのように関係しているか? この疑問の解明への第一歩となる研究成果です。今後の課題は可視光の波長を変えて実験を行って不純物準位の濃度をエネルギーごとに検出し、触媒活性との相関を調べることです。

図1 TiO2光触媒の不純物準位から伝導帯への電子励起


この研究成果は2008年3月29日に第101回触媒討論会で発表します。触媒学会から注目発表に選定されました。

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