English

お知らせ

グローバルネットワークセミナー「A kinesthetic approach to L2 rhythm: Jaw Dancing」を開催しました

2026年9月1日、グローバルネットワークセミナーを開催しました。

講師には、ハスキンス研究所のDonna Erickson先生をお迎えし、「A Kinesthetic Approach to L2 Rhythm: Jaw Dancing」をテーマにご講演いただきました。

講演ではまず、「調音プロソディ(Articulatory Prosody)」の観点から、発話における顎の動きとプロソディとの関係について説明されました。発話は顎の開閉運動の連続として捉えることができ、音節ごとの顎の下降量は、母音の高さだけでなく、ストレスやフォーカスなどのプロミネンスとも密接に関係していることが紹介されました。特に、韻律的に重要な音節では、F0、強さ、長さなどの音響的特徴だけでなく、顎の開きも大きくなることが示されました。

続いて、フランス語、日本語、中国語、英語などのデータを比較しながら、顎運動のパターンには言語による違いがあることが紹介されました。また、第二言語の発話では母語の顎運動パターンが転移する場合があり、目標言語に適した顎の動きを身につけることが、自然なストレスやリズム、母音弱化、フレージングなどの習得につながる可能性について説明されました。

さらに、EMA(Electromagnetic Articulography)によって計測された顎、舌、唇などの調音運動データから、音節のプロミネンスと「Articulatory Boundary(調音境界)」を捉える方法が紹介されました。英語母語話者のデータから、フォーカスが置かれた語の前で比較的大きな調音境界が現れる傾向が示される一方、話者による違いも確認されました。

また、こうした知見を第二言語教育に応用する「Jaw Dancing」についても紹介され、顎の動きを意識することで、学習者が目標言語のプロミネンスやリズム、フレージングを身体的に習得できる可能性が示されました。さらに、ポータブルで非侵襲的に顎運動を収録できるMARRYS Helmetについても紹介され、教育や研究への今後の応用可能性が示されました。

本セミナーは、第二言語のプロソディを音響的特徴だけでなく、顎の動きという調音的・身体的側面から捉える新たな視点について理解を深める貴重な機会となりました。質疑応答では6名ほどの参加者から質問があり、顎と舌の運動の関係や言語間の違い、第二言語教育への応用などについて活発な議論が行われました。