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お知らせ

グローバルネットワークセミナー「Understanding Impact Evaluation in Vulnerable Labor Markets: Evidence from Vietnam」を開催しました


2025年12月2日、慶熙大学校経済学部のInsik Min教授をお招きし、「Understanding Impact Evaluation in Vulnerable Labor Markets: Evidence from Vietnam」をテーマにグローバルネットワークセミナーを開催しました。

本セミナーでは、ベトナムの労働市場および社会保険制度を事例として、観察データを用いた政策効果分析において重要となるセレクション・バイアスと、その対処方法についてご講演いただきました。講演は、「誰が働くのか」「誰が制度に参加するのか」「誰がより大きな便益を受けるのか」という三つの視点から構成されました。

講演の前半では、ベトナムにおける教育の賃金収益率を例として、労働市場への参加がランダムではないことによって生じるサンプル・セレクション・バイアスについて解説されました。就業者のみを対象として賃金を分析した場合、就業するか否かという選択を考慮できず、教育が賃金に与える効果を適切に推定できない可能性があることが説明されました。 その対応方法としてHeckmanの二段階推定法が紹介され、Vietnam Household Living Standards Survey(VHLSS)2020のデータを用いた分析では、セレクション・バイアスが統計的に有意に確認され、これを考慮しない通常のOLS推定では、フォーマルセクターにおける教育の真の収益率を過大評価することが示されました。

続いて、政策や制度への参加が個人の自発的な選択によって決まる場合の自己選択(Self Selection)と政策効果の推定について解説されました。具体的には、ベトナムの任意社会保険(Voluntary Social Insurance: VSI)を事例として、加入者と非加入者を単純に比較するだけでは、制度そのものの効果と加入以前から存在する個人・世帯の特性の違いを区別できないことが説明されました。そのため、年齢、所得、都市・農村、世帯規模などの観察可能な属性が類似した加入者と非加入者を比較するNearest Neighbor MatchingやPropensity Score Matching(PSM)などの手法が紹介されました。 また、マッチング手法は観察可能な要因に基づくものであり、リスク選好や健康に対する選好などの観察されない要因を十分に考慮できないという限界についても説明されました。

講演の後半では、政策の平均的な効果だけではなく、「誰がより大きな効果を得ているのか」という政策効果の異質性について議論されました。特に、Conditional Average Treatment Effect(CATE)を用いることで、VSIへの加入による効果が個人やグループの属性によってどのように異なるのかを分析できることが紹介されました。 VHLSS 2020を用いた分析では、医療サービスの利用をアウトカムとして、年齢、性別、教育、所得、居住地域、職業、健康状態などの特性を考慮しながら、個人ごとの政策効果を推定する方法が示されました。分析結果からは、平均処置効果だけでは捉えることのできない個人間の効果の違いが確認され、多くの個人で正の効果がみられる一方、その大きさには異質性が存在することが示されました。

本セミナーを通じて、参加者は、観察データを用いて労働市場や社会政策の効果を分析する際には、単純なグループ間比較だけではなく、サンプル・セレクションや自己選択を適切に考慮する必要があることを学びました。また、Heckmanの二段階推定法、マッチング手法、CATEなどの分析手法をベトナムの実際のデータに適用した事例を通じて、政策の平均的な効果だけでなく、その効果が「誰に、どの程度」生じているのかを明らかにすることの重要性について理解を深める貴重な機会となりました。