お知らせ
国際セミナー「Testing the Line: The Teaching Profession Meets Algorithmic Management」を共催しました
2026年7月28日、グローバルネットワークプログラムが共催するInternational Seminar on Global Governance for Human Securityをハイブリッド形式で開催しました。
講師には、モデナ・レッジョ・エミリア大学コミュニケーション・経済学部助教のDr. Pieter Vanden Broeckをお迎えしました。「Testing the Line: The Teaching Profession Meets Algorithmic Management」をテーマとした講演では、まず経済社会学における二つの主要な立場として、経済活動を社会関係に埋め込まれたものとして捉える立場と、文化的価値や認知的枠組みによって構成されるものとして捉える立場が紹介されました。そのうえで、いずれの立場においても、何を測定し、評価し、価値あるものとして扱うかを決める「計算の実践」や、そのための道具を設計する主体が十分に検討されてこなかったことが指摘されました。
次に、教職とアルゴリズム管理の関係が、専門職間の管轄権をめぐる競争という観点から論じられました。従来、専門職は特定の業務に対する知識や権限を主張し、他の職業集団との間でその領域を守ってきましたが、現代のアルゴリズムは特定の専門領域にとどまらず、複数の分野に同時に入り込むという特徴を持つため、アルゴリズム管理は単に教師に代わる新たな専門職の登場ではなく、専門職という枠組み自体を横断する「非専門職的」な管理形態として捉えられることが示されました。
さらに、20世紀初頭の科学的管理法と21世紀のアルゴリズム管理との歴史的比較が行われました。科学的管理法は、労働者が経験的に有していた知識を収集・分類し、規則や公式へと置き換えるとともに、作業を計画する者と実行する者を分離することで、労働時間や生産過程の標準化を進めました。一方、アルゴリズム管理は科学的管理法を単に高度化したものではなく、異なる世界観に基づくものであると説明されました。科学的管理法が人間をプログラム可能な存在として捉えたのに対し、アルゴリズム管理は機械自体が学習できることを前提とし、教師と児童・生徒、専門職とそのサービスを受ける人との間に介入します。これにより、教育に関する判断や分類を誰が担うのか、教師の専門的知識がどのように位置づけられるのかという新たな権限関係が生じることが論じられました。また、Scopusから抽出した5,132件の文献を用いた分析が紹介され、アルゴリズムをめぐる研究が近年急速に拡大していることに加え、教育学、社会科学、コンピュータ科学などの分野や地域によって、同じ技術が問題解決の手段として捉えられる場合と、批判的に検討される場合があることが示されました。
当日は、対面10名、オンライン23名を含む計33名が参加しました。質疑応答では、米国やヨーロッパと開発途上国におけるアルゴリズム管理の相違、教育プラットフォームと教育学上の理念との関係、教育データや意思決定過程の透明性などをめぐり、活発な意見交換が行われました。本セミナーは、教育のデジタル化を単なる技術的変化としてではなく、教職の専門性、教師と児童・生徒との関係、学校組織における知識と権限のあり方を変容させる社会的・組織的な問題として捉え直す貴重な機会となりました。