お知らせ
国際セミナー「Self-Learning at the Right Level, COVID-19 School Closure, and Noncognitive Abilities: Impact Assessment of Kumon Method of Learning in Dhaka, Bangladesh」を共催しました
2026年10月6日、グローバルネットワークプログラムが共催する「Self-Learning at the Right Level, COVID-19 School Closure, and Noncognitive Abilities: Impact Assessment of Kumon Method of Learning in Dhaka, Bangladesh」を開催しました。講師には、東京大学大学院経済学研究科の澤田康幸教授をお迎えしました。
講演では、開発途上国における学習危機と、COVID-19の感染拡大に伴う長期的な学校閉鎖による学習損失を背景として、児童一人ひとりの学習到達度に応じた個別型の自己学習「Self-Learning at the Right Level」の効果について、ランダム化比較試験(RCT)と追跡調査に基づく研究成果が紹介されました。研究では、バングラデシュのダッカにあるBRAC小学校34校の第3・第4学年の児童約1,000名を対象として、2015年から2016年にかけて公文式学習を導入しました。対象校のうち17校を介入群、17校を対照群に無作為に割り当て、介入群では通常授業の前に毎日30分間、児童がそれぞれの習熟度に応じた教材に取り組みました。公文式学習は、教員やデジタル技術に大きく依存せず、ヒントを活用しながら小さな段階を積み重ねて学習を進める点に特徴があります。
短期的な効果の分析から、公文式による個別学習は、算数のテストで測定した児童の認知能力を向上させるとともに、初期の認知能力および非認知能力が低かった児童の成長を促すことが示されました。また、学習の速さをめぐる児童間の競争が、同程度の能力を持つ他の児童に悪影響を与えることなく、学習の質を高める可能性も紹介されました。さらに、児童の客観的な学習成果と教員による評価との差が縮小したことから、個別学習の導入が、教員による児童の能力把握の改善にもつながることが示されました。講演では、COVID-19の影響を踏まえた長期的な効果についても説明がありました。バングラデシュでは、2020年3月から2021年9月まで約18か月間にわたり学校が閉鎖されました。研究チームは、当初の介入から約6年後となる2022年に対象児童を追跡し、学校閉鎖後の学習状況や認知能力、非認知能力を調査しました。その結果、短期的に確認された認知能力への効果は長期的には減衰していた一方、自尊感情や自己認識などの非認知能力への効果は持続していることが示されました。こうした結果から、個別最適化された自己学習は、学習危機や学校閉鎖に伴う学習損失に対応し、児童の困難に対するレジリエンスを高める補完的な教育プログラムとなり得ることが説明されました。
当日は、対面で40名、オンラインで20名、計60名の学生・教職員が参加しました。質疑応答では、研究対象としてダッカを選定した背景、公文式学習が認知能力と非認知能力に及ぼす効果の違い、学校閉鎖後も非認知能力への効果が持続した要因などについて質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。本セミナーは、ランダム化比較試験と長期追跡調査に基づく実証研究を通じて、児童の習熟度に応じた個別学習が認知能力と非認知能力に及ぼす効果を学ぶとともに、学習危機や長期的な学校閉鎖に対応する教育介入の可能性について理解を深める貴重な機会となりました。