神戸大学長
藤澤 正人
FUJISAWA Masato
令和3年4月1日の学長就任以来、地域の基幹総合大学として、異分野共創で築く卓越研究の推進を掲げ、その基盤の整備と強化を進めています。令和2年4月に安全・安心な生活空間、生活環境のグランドデザインを描く未来世紀都市学研究アライアンスが構築されていますが、その機能のさらなる強化に努めています。
神戸大学は、国際港湾都市・神戸において「学理と実際の調和」という理念を掲げ、「知」の創造と社会に貢献できる「人材」の養成に取り組み、各界で活躍する多くの卒業生を輩出して参りました。また、阪神・淡路大震災を経験した大学として、地震や洪水など様々な自然災害に対する備えや対処についての関心は高く、各研究分野において防災・減災に関する「知」の蓄積が進んできております。
この未来世紀都市学研究アライアンスは、自然災害を含む外生的リスクの対処に向けての積極的な取り組みであり、神戸大学が有する「知」を異分野共創で結集・融合・発展させ、さらにその成果を社会実装しようとするものです。このような取り組みによって、新しい未来社会を創造し、 地域に、そして世界に貢献できる国際的な卓越研究大学を目指していきます。
神戸大学
計算社会科学研究センター
上東 貴志
KAMIHIGASHI Takashi
2022年の4月に、本学都市安全研究センターの飯塚敦教授より未来世紀都市学研究アライアンス長を引き継ぎました。私自身は2018年から本学の計算社会科学研究センター長も務めていますが、その直前の4年間は本学経済経営研究所長を務めており、本業は経済学者です。経済学者の私がアライアンス長に選ばれた背景には「飯塚イズム」 があります。飯塚イズムとは、本アライアンスは部局や分野を超えた異分野共創の場として発展させるべきであるという飯塚教授の考えに私が名付けた理念です。
本アライアンスは、「異分野共創で卓越研究を推進する」という藤澤学長のビジョンを実践する場です。これまで、飯塚教授をはじめとする都市安全研究センターの教員がリードし、神戸市デジタルツインという技術基盤の開発と活用を推進してきました。今後、経済学を含む社会科学の問題意識を積極的に取り入れ、地域との連携を強化する新たなステージへと進みます。
私の役割は、飯塚イズムを継承し、異分野共創研究を発展させ、地域社会に貢献し、さらに次の世代に本アライアンスを引き継ぐことです。これは決して容易な任務ではありません。この目標の達成のためには、学内外の皆様からのさらなる協力と支援が不可欠です。より一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。
前神戸大学長
武田 廣
TAKEDA Hiroshi
平成27年4月1日の学長就任にあたって神戸大学ビジョンとして、「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」を掲げました。そのビジョン達成のために、社会科学分野・理系分野双方に強みを有する神戸大学の伝統と特色を生かし、文系・理系という枠にとらわれない先端研究を推進し、他大学・研究機関とも連携して、新たな学術領域を開拓・展開することとしました。
一方で、神戸大学は、阪神大震災で学生、研究生、教職員、名誉教授、生協職員ら尊い命を失い、負傷者も多数にのぼった過去を有しています。1995年1月17日から阪神大震災を忘れることなく、災害時にいのちを守るための研究、災害後のこころと健康のケアに関する研究、復旧・復興の助けとなる研究を継続してきました。この災害関連研究こそ文系・理系という枠にとらわれない研究を継続して推進してきた分野といえるでしょう。
そこで、新たに先端融合研究環に未来世紀都市学研究ユニットを立ち上げて、全学横断的な災害に関する文理医融合研究を加速させることにしました。今後いくたびかの災害を経験してそれを乗り越えていくであろう100年後、1000年後の都市を模索していきます。その知の価値は神戸だけにとどまらず日本全体、世界全体の安全・安心な社会の形成に資するものと確信しています。
神戸大学
都市安全研究センター
飯塚 敦
IIZUKA Atsushi
神戸大学では平成28年度より「都市レジリエンス学」の整備を開始し、平成29年度からは、「未来世紀都市学」への発展・整備を開始しました。レジリエントでサステイナブルな未来都市像を具体化するためには、都市構成や社会制度設計などのハード的な社会インフラの整備だけでありません。都市における人々の社会的連携(結束力、絆)やネットワークといったソフト的な社会インフラ(社会関係資本)の構築を通じて、都市の主役である「人々」の主体的な生活が活性化されなければならないと考えています。
そのような社会形成を支える「知」としての未来世紀都市学は、大学の中だけの議論にとどまらず、地域の自治体や中央行政府および民間とのたゆまぬ協調によって進歩していくものであります。学内外の皆様との連携によって安全・安心な未来都市形成を担っていく学問を創造していきたいと考えています。
みなさまのご協力とご支援をお願い申し上げます。
都市レジリエンス学から未来世紀都市学へ
―防災・減災から安全・安心の未来世紀都市学研究アライアンスへの集約―
■目的・目標
外生的リスク災害に備え、百年の計、千年の夢を描ける新しい生活空間と環境のグランドデザインを提供できる文理医融合の未来世紀都市学を構築します。地域の行政(神戸市、兵庫県、国土交通省近畿地方整備局)、研究機関(理化学研究所計算科学研究機構、防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター、海洋研究開発機構)及び企業(阪神高速道路会社)やマスコミ(神戸新聞社)との連携を推進し、成果の還元と社会実装を推進します。
■位置付け
本学は平成27年4月策定の「武田ビジョン」において、「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学」を目指し、「現代及び未来社会の課題を解決するための新たな価値の創造に挑戦し続ける」ことを宣言しています。その中で「新領域創出に向けた先端融合研究の推進とその成果の社会実装」を掲げています。文系理系の協働により新たな研究領域を開拓し、社会への情報発信や政策提言も推進するものとして「社会課題を解決する文理融合研究の推進」を定めているのです。特に、人文社会系の強さを生かした社会課題解決型の研究テーマを推進することを掲げています。
本事業では、(1)全学における防災・減災研究を集約し、文理融合による安全安心の都市レジリエンス学を構築し、これまでの防災減災から次代の安全安心で持続可能な都市ビジョンを創生します。(2)地域協働型防災減災連携拠点を整備して、成果の社会実装と連携先の外部研究機関との相乗効果により研究深化を図ります。(3)道場「未来社会創造研究会」を整備し、融合の学理を考究することにより、学際的な文理融合を確かなものにします。
このような事業を推進し、災害などの多様なリスクに対する都市での生活と活動の強靭化を図るという社会課題の解決に寄与したいと考えています。
■必要性
地震活動の活発化、線状降雨帯にみられる局所的集中豪雨などの外生的リスクの増大に見舞われる今日、一方で、サプライチェーンに象徴されるようなグローバル化による流通や経済活動のボーダレスな繋がりの進展によって、都市などの人々の生活空間のレジリエンス性や持続可能性が危機に瀕しています。その特徴は複雑化と複合化であって、そのようなリスクには単一の分野や個別な活動では対処できなくなっています。文理融合の統合化とその高度化によって初めて、そのようなリスクへの対処が可能となります。本事業では、百年の計、千年の夢を語れる持続可能な未来都市の構築に向けて、地域との連携の下で、神戸大学の知の集積を具体的な形として構築してゆきます。