教育研究概要

本校は国立大学附属学校として先進的な教育研究を使命とする学校です。平成21年度に中等教育学校前期過程が開校し、平成24年度に後期課程が開校しました。現在、中等教育学校の教育目標である「グローバルキャリア人の育成」を行うための学習内容やカリキュラム開発を行うとともに、学習方法として「協同学習」の指導と評価方法の研究を行なっています。

研究の概要

1.本年度の研究主題(2015~2019予定)

 「グローバルキャリア人育成神戸モデル(KMGC)のカリキュラム開発と評価方法の研究-教科教育を通した汎用的諸能力の涵養-」

2.近年の本校の研究主題

■2008~2009 「中等教育学校におけるカリキュラム開発」

■2010 「グローバルキャリア人を育成する授業の創造
      -協同学習で活きる中等教育学校のカリキュラム編成-」

■2011 「グローバルキャリア人としての資質・能力を育成する
         中等カリキュラムの研究と授業の創造-協同学習の指導と評価を通して-」

■2012~2014「グローバルキャリア人としての資質・能力を育成する
                       中等カリキュラムの研究と授業の創造」

3.学校の現状

(1)グローバル人材育成に関する学校の教育理念
 本校は神戸大学の附属学校再編により創設された中等教育学校であり,平成21年度の創立,学年進行により平成24年度から後期課程(高校相当)が発足している。
 本校は「グローバルキャリア人の育成」を教育目標に掲げており,神戸大学が掲げる「グローバルエクセレンスの実現」と一貫性を有している。なお,「グローバルキャリア人」とは,「優れた課題発見力を持ち,世界の中で自己を位置付け,文化理解と行動を踏まえて,国際協力による関係構築を積極的に行おうとする人材」として定義している。
開校以来,上記の「グローバルキャリア人」の定義および神戸大学「教育憲章」を踏まえ,以下の「教育基本方針」を策定し,課題発見力を有するグローバル・リーダーの育成に資する教育実践を試みている。
   1)人間性の教育:グローバルシチズンシップの基礎を有する主体的な生徒の育成
   2)創造性の教育:自ら課題を設定し,創造的に問題解決できる能力の基礎を有する生徒の育成
   3)国際性の教育:異文化に対する理解力を有し,コミュニケーション能力に優れた生徒の育成
   4)基礎教養の教育:将来の学識につながる文理系に偏らない教養の基礎を有する生徒の育成

(2)探究型学習に関する教育課程等の特色
 中高一貫校の特徴を活かし,総合的な学習の時間に位置づけられている探究型学習である「Kobeポート・インテリジェンス・プロジェクト(以下「Kobeプロジェックト」)を中心に,教育課程内外全般において,グローバルな課題認識とリサーチリテラシー(「見つける力」「調べる力」「まとめる力」「発表する力」+「考える力」)の育成を追及している。Kobeプロジェクトでは「探究入門(1・2年)」,「課題学習(3年)」,「課題研究入門(4年)」を経て「卒業研究【課題研究】(5・6年)」として卒業論文の執筆および口頭発表することになっている。
 昨年度より,SGHを念頭に置いた取組をはじめており,4年次の卒業研究入門では「神戸から考える世界の課題」をテーマにリサーチリテラシーや研究の基礎力を養成している。
 また5,6年次では「地球の安全保障」をキーワードに卒業研究【課題研究】において以下の4つの領域を中心に論文作成を行っている。

   1. 震災・復興とリスクマネジメント
      災害・復興,感染・防疫,開発・保全等のテーマについて,文理融合的な視点から考察
   2. 国際都市「神戸」と世界の文化
      神戸港開港150年を前に,神戸の成り立ちと現状を踏まえ,自国文化と異文化について考察
   3. 提言:国際紛争・対立から平和・協力へ
      神戸にある領事館や国際機関と連携し,国連ミレニアム開発目標について考察
   4. グローバルサイエンスと拠点都市「神戸」
      神戸のサイエンス&テクノロジーの伝統と現状を確認し,グローバル社会と安全の視点から考察

(3)グローバルな人材育成に向けた取組
 「異文化理解」学習については「ローカル&グローバル」な視点から各教科・学校行事・Kobeプロ等で取り組むとともに,国際性に富む地域の特色を活かし「神戸」の学習に力を入れている。また,ユネスコスクール認定校としてESDの理念を学校で共有し,各教科学習はもとより学校行事,宿泊活動等において,世界遺産やジオパーク学習にも力を入れている。さらに学校設定科目として「ESD(3年)」「国際理解(6年)」を設定している。
 「グローバルな視点の育成を意識したワークショップおよびフォーラム」については,上述の「卒業研究(課題研究)」の意欲を高めるとともに研究内容の深化を図り,課題意識を高めるために神戸大学および国際機関等と連携しながら学校内外において「グローバルアクションプログラム」を実施している(詳細は下記の取組実績およびSGH年次報告会資料参照)。
 「国際的コミュニケーション能力」の育成については,英語を基盤ツールとして,大学と連携した英語教育改革を推進している。後期課程では少人数・習熟度別授業を導入し,個に応じた教育を実施し,グローバルな課題認識を含めた卒業研究(課題研究)に対応するために,大学の研究入門レベルに対応する英語運用能力の引き上げを目指している。
 さらに,文部科学省「研究開発学校」指定(平成25年度から4年間)を受けて,地理歴史科を再編成,新科目「地理基礎」「歴史基礎」を設置し,探究的学習を取り入れつつ,グローバルな時空間認識育成に関する研究開発を行っている。

 (4)小集団学習と協同学習
 本校の授業実践の特徴に一つに協同学習および小集団学習が挙げられる。小集団学習は1963年以降、本校がバズ学習(塩田・阿部, 1962)を取り入れて実践してきたもので、校訓(当時)である「自主・協力・奉仕」を実現するための学習方法として位置づけられてきた。その後、Johnson (1998)が開発した “Learning together”で示された協同学習と融合し現在に至る。

 小集団学習の条件  協同学習の基本的構成要素  教師の
役割
1 グループまたはメンバーの活動目標、仕事内容の明確化

2 グループのメンバーに共通の仕事をしているという所属意識の高揚

3 グループ内の仕事や手順などの秩序の尊重

4 リーダーの決定とリーダーの分節化(責任の明確化)

5 グループ内メンバーの仕事内容の明確化と役割の分担

6 グループ活動のための約束の具体化(話し方・運営方法)

7 グループ内メンバーの個性化(活動範囲・仕事範囲)

8 グループ内メンバーの活動と貢献の評価(小集団学習の発展)
 ① ③









② ④




 A C














協同学習の基本的構成要素  教師の役割
① 互恵的協力関係

② 責任の自覚

③ 対人的技能

④ 小集団的技能


⑤ グループ改善手続き
A 授業の目的の具体化

B 学習グループの編成方針の明確化

C 学習課題と目標の構造の説明

D 協同学習の有効性を観察し、課題に対する援助、生徒の対人的技能、  グループの技能を活発にする指導

E 生徒の達成度を評価し、振り返りにおける話し合いの援助

 共創型対話力(多田、2006)を重視した協同学習の実践は前期課程ではKobeプロジェクト(先述)の時間において基本的な「聞き方・話し方」の訓練を通してその学習形態を学び、授業等でその学習形態を活用している。また、後期課程においても多くの教科でその実践を試みている。前期課程(中学校相当)、後期課程ともに以下の目的、意義を意識して行われている。

  1. 協同学習をやればやるほど、他者から自分が認められていることを知り、自信がわき、社会の中で必要な存在なのだとわかる。同時に他者を理解することの大切さがわかる。
  2. 覚えて点数を取ることが目的ではなく、考えて課題を解決することが目的となり、自分の中に学習に対する目的ができる。そして、学習方略を身に付けることが大切であることがわかる。
  3. 社会に出て働く力をつける。自分の考えを伝え、他者の考えを知り、総合的な判断力を持って問題解決に当たる、いわゆるコミュニケーション能力や意欲的に社会参画するための技能を身に付けることが大切であることがわかる。

4.学校の過去5年間の取組実績等

(1)大学や企業,国際機関等と連携した主な取組

① 神戸大学との連携
② 企業等との連携 ③ 国際機関等との連携

(2)国際性を高める取組

5.神戸大学附属中等教育学校のグローバル人材育成へ向けた教育実践の考え方

1)神戸大学の教育目標に対応した本校の教育目的概念図

2)日本学術会議(2010)の提言

 一昨年度以来,実践研究の方向性の根拠にしたのがいわゆる21世紀型教養について言及した日本学術会議の「21世紀の教養と教養教育」(2010)に関する提言である。この提言は,現代社会の諸問題に対応し得る教養を大学教育のカリキュラムの再編成の方向性として位置付けている。大学教育に関する提言を直接,中等教育に当てはめることは必ずしも正しいとは言えないが,今後の中等教育における学力観を考える上で参照すべきものであると考えた。以下に,その提言の内容の抜粋を示す。

①グローバル化時代の特徴と課題
 21世紀は,グローバリゼーションとローカリゼーションが相互に絡み合い影響し合いながら同時進行する「グローカル化の時代」である。そこでは,世界各国の自律性と文化的特徴を相互に尊重しつつ共生していくというグローバルな合意・規範の下に,各国が世界共通の問題の平和的解決に協働して取組,また,各国はそれぞれに自国社会の諸問題を解決し,豊かな文化の発展と社会の活力の維持・向上に取り組んでいくことが重要である

②21世紀の教養教育の課題
 現代社会は①「メディアの地殻変動」「知の地殻変動」とも言える諸変化とその変化の中で生起している諸問題を抱え,そして,②それらの諸変化・諸問題が重なり合うなかで,20世紀までの社会と「知」の在り方の再編・再構築を迫られている。

③21世紀に期待される教養:学問知・技法知・実践知と市民的教養
 21世紀に期待される教養は,現代社会が経験している諸変化の特性を理解し,突き付けられている問題や課題について考え探究し,それらの問題や課題の解明・解決に取り組んでいくことのできる知性・知恵・実践的能力と言ってよいであろう。その多面的・重層的な知性・知恵・能力を学問知,技法知,実践知という三つの知と市民的教養を核とする者としてとらえる。学問知は,学問・研究の成果としての知の総体であり,その学習を通じて形成される知である。それは錯綜する現実や言説(研究を含む)を分析的・批判的に検討・考察し,同時に,諸問題を自分に関わる問題として思慮し,そしてまた,自分の生き方や考え方を自省する知でもある。技法知は,メディアの活用,多種多様な情報・資料の編集,数量的推論,自国語・外国語,学術的な文章作成能力,言語的・非言語的な表現能力・コミュニケーション能力などを構成要素とする知で,学問知および実践知の学習・形成と活用の基礎となるものである。実践知は,日常の様々な場面で実施に活用・発揮(実践)される知で,市民的・社会的・職業的活動に参加・協働し,共感・連帯し,同時に,自らの在り方・生き方・振る舞い方を自省し調整していく知である。他方,市民的教養は三つの公共性,すなわち本源的公共性,市民的公共性,社会的公共性についての理解を深め,その実現に向けたさまざまな活動やプロジェクトに参加し,連帯・協働していく素養と構えを指す。

3)グローバル人材観

 石川慎一郎教授(神戸大学国際コミュニケーションセンター)は,社会が抱く「グローバル化」に関する意識調査および本校教員および生徒に本校の目指す生徒像である「グローバルキャリア人」の定義に関してアンケート調査し,テキストマイニングの手法を用いてグローバル人材観を語彙レベルで分析し,構成概念を抽出しグローバル人材を再定義した。以下にその研究論文(「学校教育におけるグローバル人材育成-テキストマイニングによる「グローバル人材」構成概念抽出の試み(2013)」のまとめで示された内容の一部を転載する。

 本研究では,社会におけるグローバル化への関心の高まりと,その概念範囲の拡張を跡付けた上で,学校現場が養成を目指すべきグローバル人材観について,中高生・中高教員・社会の意識を統合する形で構成概念の抽出を試みた。
 その結果,「グローバル人材」を,《「世界の中の自己」の意識に立ち,「生活の中での多元的視点」を獲得し,さらには「文化理解と行動」をふまえて「国際協力による関係構築」を行おうとする人材》と再定義することができた。得られたグローバル人材観は,国際ビジネスで必要とされる,知的資本(グローバルビジネス理解,複雑性認知,コスモポリタン思考)・心理的資本(多様性への情熱,冒険心,自身)・社会的資本(異文化共感,知的影響力,外交的手腕)からなる「グローバルマインドセット」(本名他,2012:196-197)などとも類似する概念で,少なくとも中等教育の文脈の中では一定の汎用性を持っていると思われる。
 ただし,学校が変われば参与者の意識も変わる余地はあり,さらには,同じ学校であっても,指導の積み重ねの中で意識が変化していく余地もあろう。つまりは,こうした調査を各校において定期的に実施し,その都度の構成員の意識のありようを振り返りながら,カリキュラム構成や指導の方向性を不断に修正していくことが,実のあるグローバル人材育成教育の必須要素となるべきであろう。」(以下,省略)

6.Kobeプロ(リサーチ領域)における6年間の目標(仮設定)

総合的な学習の時間である「Kobプロ」)では、「見つける力」「調べる力」「まとめる力」「発表する力」+「考える力」の育成を目指し、系統立ったリサーチリテラシーの目標の仮設定を行ってきた。
これは、「探求入門(1・2年)」、「課題学習(3・4年)」、およぴ「卒業研究(5・6年)」として卒業論文の各段階において必要とされるリテラシーを記述することによって、明確な目標を意識した指導およぴ学習を行うためである。

4つの力(見つける力、調べる力、まとめる力、発表する力)をインプット、思考のプロセス、アウトプットの3つの観点から分折し、それぞれの観点から1つずつ記述文(カード)を選択し、3つの観点をあわせた1つのまとまった記述文が目標として設定される。なお「考える力」は3つの観点を通して育成すべきものであると考えている。
例えば、1、2年生の探求人門で行われる「神戸学」の目標は以下のように設定できる。

例)

 

7.グローパル人材育成の実践概要

区分/領域 前期課程(全員予備対象) 後期諜程(全員対象→対象者の限定・選抜)
1・2年 3年 4年 5年 6年
教科教育
=習得的な学ぴ
基礎期
=基礎・基本の習得
充実期
基礎・基本→活用力
発展期
基礎基本→活用→探究力
・教科教育目標に基づく単元構想(発達段階に応じた本質的な問いと永続的珊解)
・パフォーマンス評価(ルーブリック作成)ポートフォリオ
特設科目   ESD     国際理解
Kobeプロ
=探究的な学ぴ
探究人門
・協同学習
・リーダー学習
・言語技術訓練
課題学習
・グローバル(ESD)を意織した講義
・グローバル(ESD)に関する
調べ学習と問い
課題研究(卒業研究)
・4傾城における仮説検証
・論文、学術的プレゼン
評価(ポートフォリオ、ルーブリック)
宿泊研修
=探究的な学ぴ
神戸市内・奈良 沖縄 カナダ ロンドン  
グローバルセミナー・特別授業
=探究的な学ぴ
キャリア・ビジネスセミナー
    リーダーセミナー・アクションセミナー
国際交流
ワークショッフ
=探究的な学び
  留学生/JICA
オックスブリッジ
神戸大学
GlobalWeek
模擬安保理
  ブリズベン交流
神戸在留フォーラム
国際フォーラム
TOP