神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科
About us
当研究室について

当研究室の取り組み

先進的なハードウェアシステムに関する教育研究を通じて、「セキュリティとセイフティ」、「ハードウェアとソフトウェア」、 そして「アナログとデジタル」を融合する幅広い知識と経験を育み、持続可能な社会を支えるユビキタスな情報通信技術(ICT)の弛みない革新を牽引する人材の輩出を目指しています。 卒業研究から修士・博士課程を通じて、大規模集積回路システム(VLSI)の設計と評価、電磁環境両立性(EMC)の獲得と評価、 情報データの真正性や秘匿性の確保と評価、等についての技術開発を推進する能力や実践的な技能を修得することも目的としています。

情報システム教育研究分野は 科学技術イノベーション研究科 と システム情報学研究科 が共同で運営します。 永田研究室に所属する学生は、どちらの研究科に所属していても、多様な研究トピックを選択でき、産業界や国内外の研究パートナーを交えた研究チームの一員として研究活動に従事できます。

01
Hardware security
ハードウェアセキュリティ

情報の秘匿性と真正性を担保する
高機能暗号ハードウェアの開発

最先端ICT分野やIoT技術の発展に伴い、高度な秘匿性の求められる情報データを、安全かつ高速に通信・情報処理する技術の必要性が高まっています。 本研究開発では、セキュリティを担うハードウェアの真正性の確保、情報データを高機能かつ高速に暗号化・復号する技術、悪意ある覗き見や攻撃を見破り防御する機能、など、 ハードウェアセキュリティに関する新技術を広範かつ体系的に創出します。

02
Hardware Safety
ハードウェアセイフティ

過酷な擾乱環境下での動作安全性を
確保する高信頼ハードウェアの開発

現実のハードウェアシステムは、社会の様々な場所に物理的に配置されるため、周囲環境の影響、とりわけ、目に見えない電磁波(電波)にさらされています。 極めて微弱な電力で大量のデータを送受するワイヤレス通信、自動車の運行を安全にする車々間や路車間通信および車載エレクトロニクス、 先端医療や健康維持を助けるエレクトロニクス機器、の核となるハードウェアのセイフティ(安全性、信頼性、頑強性)を高度に確立する新技術を広範かつ体系的に創出します。

03
quantum computer
量子コンピュータ

量子コンピュータは、量子力学の性質を応用した次世代コンピュータです。量子重ね合わせ(Superposition)や、量子もつれ(Entanglement)といった量子力学の現象を有効活用し、現在のコンピュータでは解けないような大規模な演算を瞬時に解くことができると言われています。そのため、量子コンピュータは、暗号や化学、金融、AIといった幅広い分野で応用されることが期待されています。

現在、GoogleやIBMを中心に世界中で量子コンピュータ研究の熾烈な競争が繰り広げられています。日本でも、内閣府からムーンショット型研究開発事業がスタートし、その目標の一つとして「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」が掲げられました。永田研究室は、(株)日立製作所、東京工業大学、理化学研究所と共にこのムーンショット型研究開発事業の一つである「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」に参画しています。

当研究室の役割・テーマ

永田研究室の役割は、シリコン量子コンピュータの核であるシリコン量子ビットを正確に制御するための、回路・実装技術の研究です。特に、シリコン量子ビットは絶対零度に限りなく近い温度(約100mK)に保つ必要があるため、極低温(100mK~4K)における量子ビット制御回路や、量子ビットチップの実装技術が求められます。しかし、極低温での回路の電気特性や熱流特性などは未知の要素が多く、既存技術を流用することができません。そこで、永田研究室では、「極低温アナログ回路」「極低温チップ実装」「極低温環境モニタリング」のテーマを掲げ、シリコン量子コンピュータの実現に貢献します。

また、永田研究室では、量子コンピュータのハードウェア研究だけでなく、量子誤り訂正アルゴリズムなどの量子ソフトウェアの研究も積極的に行っています。ハードウェアだけで実現することが困難な問題を量子アルゴリズムでカバーするなど、ハード・ソフト両面で量子コンピュータ開発に取り組んでいます。

極低温アナログ回路

量子コンピュータは、量子ビットの操作・読出し・初期化といった制御を行うことで量子演算を実行します。これらの制御を実現するためには、バイアス電圧やマイクロ波を発生させる信号生成器や、量子ビットの僅かな変化を読み取るセンサーが必要です。これらは全てアナログ回路で構成されます。また、これらの回路は量子ビット近傍に配置するため、極低温で動作しなければなりません。永田研究室では、極低温アナログ回路の研究を行っており、アナログ回路の設計、チップ試作、極低温評価を一貫して行うことで、シリコン量子ビットの高精度制御を実現する極低温アナログ回路の研究を行っています。

極低温チップ実装

シリコン量子ビットチップは、希釈冷凍機という冷却装置の最深部にあるチャンバーに配置されます。このチャンバー内は、スペースが限られているだけでなく、チップの発熱に対しても厳しい制約が設けられています。永田研究室では、チップを小面積・低損失でパッケージングする技術や、チップが発する熱を効率よく排熱する機構を研究しています。具体的には、極低温における信号品質の解析や熱流シミュレーション、パッケージング試作と極低温評価による検証などを行っています。

極低温環境モニタリング

量子ビットは、ノイズに弱いという性質を持っています。ノイズには、熱の上昇や電磁場の変動、制御信号の誤差などが含まれます。これらのノイズが存在すると、量子ビットのフィデリティが劣化し、量子演算誤差が生じます。永田研究室では、量子ビット近傍において、これらの環境ノイズをモニタリングする手法を提案しています。得られたノイズ情報は制御回路にフィードバックすることで、演算精度の向上を目指しています。具体的な取り組みとして、極低温で動作する超低電力センサー回路等の開発を行っています。

量子アルゴリズム

量子コンピュータのハードウェアはまだまだ開発途上であり、しばらくは様々な制約のもとでソフトウェアを構築する必要があります。ここでの制約とは、量子ビットの数と量子ビットのエラー率です。どちらも十分とは言えない現状において、ある程度「使える」アプリケーションを開発するためには、ハードウェアの改善に加え、量子誤り訂正等の量子アルゴリズムを同時に研究することが重要です。永田研究室では、IBM QやAmazon Braketを活用し、実際に量子コンピュータ上で動かすソフトウェアの研究にも取り組んでいます。