ICT活用コンテンツ
授業形態の多様化時代における大学授業デザインの考え方

― 対面・ハイブリッド・遠隔をどう設計するか ―

第1章 授業の多様化と学びの質の保証

1. 高等教育の変化と授業の多様化

ポストコロナの大学教育では、学習者の多様な状況やニーズに応じて、授業形態が大きく変化しています。 神戸大学でも、対面授業を基本としながら、ハイブリッドや遠隔など、ICTを活用した多様な学習環境が展開されています。 これらの授業形態の多様化は、柔軟な学びを可能にする一方で、どのようにすれば学びの質を確保できるかという新たな課題を生み出しています。

本コンテンツでは、神戸大学の授業実践と調査研究をもとに、各授業形態に適した授業デザインの知見を整理し、教員が授業設計に活用できる指針を紹介します。

2. 神戸大学における授業形態の定義と現状

神戸大学(教養教育院)では、授業形態を以下表1のように3つに分類しています。

大学設置基準 神戸大学のシラバス表記 定義
対面 対面 全ての授業を対面で実施する
ハイブリッド(対面) 授業回数の半数以下を遠隔授業とする授業
(クォーター制は3.5回以下,セメスター制は7回以下)
オンライン ハイブリッド(遠隔) 授業回数の半数を超える遠隔授業とする授業
(クォーター制は4回以上,セメスター制は8回以上)
遠隔 全ての授業を遠隔(原則オンデマンド)で実施する授業

出所:神戸大学教養教育院資料をもとに作成

神戸大学では、2022年度以降この形式を導入し、「対面の臨場感」と「オンラインの柔軟性」を両立させる授業が多く実施されています。2023年現在、各授業形態の実施状況は以下のようになっています(図1)。

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図1 2023年の神戸大学における各授業形態の現状

3. 学生調査による授業形態ごとの神戸大学生の理解の現状

学びの質を保証するためには、いずれの授業形態でも学生が一定の理解を得られる必要があります。神戸大学生はどうでしょうか。以下に示すのは、神戸大学における全授業科目の授業振り返りアンケート結果を基に、「対面」「ハイブリッド」「遠隔」の開講形態ごとに、学生の学修時間、授業理解、達成度といった学修状況や学習認識を分析した、長崎・大山(2025)の調査結果の一部です。

以下の図2は「この授業の内容はよく理解できましたか。」という設問で、理解の認識度合いを尋ねた結果です。

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図2 開講形態ごとの授業理解度の回答分布

これを見ると、遠隔は対面とハイブリッドに比べて理解度が劣るものの、対面とハイブリッドでは概ね同等の理解度を得ていると認識していることがわかります。

次に、「シラバスに書かれている到達目標をあなたはどの程度達成できたと思いますか。 」という設問の結果です(図3)。

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図3 開講形態ごとの到達目標の達成度の回答分布

こちらも同様に、対面とハイブリッドは概ね同等の目標達成度の認識に対して、遠隔の理解度は劣ります。

最後に、「この授業に関して、平均して毎週どれくらい自己学修(予習、復習を含む)をしましたか。 」という設問の結果です(図4)。

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図4 開講形態ごとの自己学修時間の回答分布

こちらの結果で興味深いのは、遠隔>ハイブリッド>対面の順で自己学修時間が多くなっていることです。これはおそらく対面よりも講義に値する動画部分が短く設定されていることがその理由であることと予想されます。また、対面型授業では、学生が自己学修の時間を明確にカウントしている一方で、オンラインを用いた授業では授業内外の区別が曖昧であり、学生は動画視聴以外の時間を授業外学修時間として含めている可能性もあります。この点については結果の解釈に留意する必要がありそうです。

これら3つの結果から、オンラインを用いた授業はが、授業理解度や到達目標の達成度という点では対面授業と同程度ではありますが、遠隔における理解や達成度の実感が少し低い現状にあることがわかるでしょう。オンラインを用いた授業は、学生にとって「柔軟に学べる」メリットがある一方で、十分に理解できる授業デザインになっているかどうかを今一度確認する必要がありそうです。

4. 各授業形態の特徴

各授業形態の特徴を踏まえた上で、学習の目的に応じて選択することが重要です。以下の表2に、それぞれの授業形態の特徴を教員視点・学生視点別に示します。

対面 遠隔 ハイブリッド
教員視点 授業デザイン(構想・準備)

- 授業の流れを直感的に構想しやすい

- 学習者の反応を想定した活動設計が可能

- 教材・動画・資料を体系的に整理しやすい

- 学習ログの活用を前提とした 設計が可能

- 対面の「臨場感」と遠隔の「計画性」を組み合わせて設計

- 学習目標に応じてモードを選択

授業の実施 (運営・進行)

- 学生の様子をみながら即興的対応が可能

- 学生同士、学生と教員の相互作用が実現

- 時間や場所を問わず授業が実施できる

- 録画や配信により授業内容を共有・再利用できる

- 対面では交流や議論を、遠隔では反復や情報共有を行うなど、目的に応じて分担

- 出張などのスケジュールへの対応

学生視点 学生への支援

- その場で質問・助言ができる

- 非言語的な理解支援が可能

- LMSやチャットで個別対応が可能

- 記録に基づいた継続支援がしやすい

- 対面での即時支援と、オンラインでの継続支援の組み合わせ

- 学生のニーズに応じた柔軟な支援体制を設計

学習経験

- 空間共有による一体感・偶有性が高い

- 仲間との関係性を築きやすい

- 自分のペースで学べ、反復・確認が容易

- 移動や時間の制約が少ない

- 顔が見えない方が促進されるコミュニケーション

- 対面の「つながり」と、遠隔の「自律性・柔軟性」を統合

- 学生が自分に合った学び方を選択できる環境づくりが可能

💬 よくある質問(Q&A)

Q1. 一般的に使われる「ハイブリッド授業」と神戸大学の「ハイブリッド形態」は同じ意味 ですか?

A. 一般的には、ハイブリッド授業は一つの対面授業において、授業内容をオンラインでもリ アルタイムで配信する形態を指すことがあります(引用)。神戸大学では、ハイブリッド形態 を「1 つの授業科目の中で、対面と遠隔を組み合わせて実施する授業形態」のことを差しま す。一般的にブレンド型授業と言われることもあります。

Q2. 授業形態は教員が自由に選べますか?

A. 授業の目的や学生の特性に応じて柔軟に選択できます。大学としては対面を基本としてい ますが、学習支援の観点から目的に応じて多様な組み合わせが認められています。図の各授 業形態の特徴を踏まえた上で、申請の時期や留意点などは、各部局における教務係からのお 知らせをご覧ください。

Q3. BEEF+(LMS: Learning Management System)はどの授業形態でも使うべきですか?

A. BEEF+(LMS)はいずれ授業形態でも活用できます。教材配信・課題提出・フィードバッ ク・テスト・アンケート・お知らせなどの記録を一元管理することで、授業形態を問わず、 学習者は学習記録を蓄積することができて、教員も学生の学習管理を円滑に行うことができ ます。

BEEF+の利用ガイドはこちら