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📚 本の紹介

わたしが勉強した本 (園田 英徳 先生)

(非常勤講師,2024年春に神戸大理学部物理学科を定年退職)

わたしが大学に入学したのは1977年の昔で,大学の最初の1年半は理科系に共通の教養教育を受け,3年次から理学部の物理学科で勉強した。 時代も違うし,専門も物理学科の人を除いて違うから,わたしがどういう本を読んだかはあまり参考にならないかもしれないが,とにかく書いてみよう。 もし興味があったら,大学の図書館で見るとよい。(2025年9月29日)

H. Goldstein, Classical Mechanics

入学してすぐ履修した力学はあまりおもしろくなかった。いくつかの力が働く場合,よく力を見逃して,力学はあまり得意とは言えなかった。解析力学というものがあるのを知ったのは,化学の先生からで,一番良い教科書はGoldsteinであると聞いた。そこで同志を募ってGoldsteinの教科書を輪講することにした。章末の問題に取り組んだ。

最小作用の原理という深淵でかつ便利なものをこの本を通して学んだ。

邦訳は吉岡書店から出版されている(2分冊)。

M. Spivak, Calculus on Manifolds

1年次に解析と線形代数の基礎を学び,2年次の前期により進んだ解析を学んだ。そのときの教科書がこれだった。先生の話は面白かったが,あまり学んでいる気がしなかった。授業に出るだけで教科書には手を付けなかったからだろう。

当時,前期の授業は9月に終わることになっていたので,夏休み中すべてを投げてこの本に取り組んだ。なにか非常に重要なことがここにあると思ったからだ。この経験は,今も大学時代を振り返るときにやって良かったなと思えることである。

多様体と微分形式という理論物理を専攻する者は誰もが知っている内容をこのとき初めて勉強した。

邦訳は東京書籍から出版されている。

C. Kittel, Thermal Physics

2年次前期に統計物理学の基礎を学んだが,吹っ切れなかった。どうやってこの本にたどり着いたか覚えていない。参考書の一つとして紹介されたのかもしれない。非常にアメリカ的な明解な本である。実用的である。しかし統計力学の基礎に興味がある人には物足りないかもしれない。

等重率の原理から全てが明解に導かれる。この本で学んだLangmuirの式の導出があまりにも鮮やかで,今も忘れない。

邦訳は丸善から出版されている。