現在の研究

 

  1. 久米島ピクライトの実験岩石学的研究
  2. 研究目的

    玄武岩マグマの起源はこれまでにも多くの研究者が議論を重ねてきた.玄武岩は地球の表層の約7割を占める火山岩である.現在でも世界で見られる火山現象の大部は、玄武岩質マグマの放出である.例えば、中央海嶺玄武岩 (MORB) などがある.

     また,これまでの研究によって得られたことからO'HaraStolperは,マントルのぺリドタイトの溶融に生ずるマグマの化学組成が圧力とともに玄武岩質からピクライト質に変化すると結論した.そして,大部分の玄武岩質本源マグマはピクライト質 (MgO15 wt.)であると実張した.しかし一方,代表的玄武岩マグマとMORBについてその初生マグマの化学組成でMgO15wt.%のものはない.初生マグマのMgOの推定値は1012wt.%の範囲に集中し,初生マグマの化学組成は玄武岩質であると考える.そして,McKenzieBickleは,MORBは玄武岩質,ハワイのアルカリ玄武岩はピクライト質の初生マグマから形成されたと論じ,支持する研究者も多い.久米島ピクライトを生成した沖縄トラフやその他世界の同様な地域における背弧海盆は多くの研究成果がもたらされているが,背弧海盆の形成過程については今でもなおよく分かっていない.久米島ピクライトを通し,沖縄トラフの初生マグマを決めることにより最初期の活動の条件を求めることができる.さらに世界の同様な地域における活動と比較検討することによって,背弧海盆の初生マグマおよび形成過程を考えていきたい.

    研究内容

     沖縄トラフの早期活動を表す久米島ピクライトの初生マグマの組成および生成条件を高温・高圧実験により定量的に決める.溶融実験において火山岩の生成条件を求める場合,出発物質を慎重に選択することがとても重要かつ必須的なことである.上部マントルで生成された初生マグマの化学組成を保ったものについてのみ,高温高圧実験で初生マグマを再現できる可能性がある.斑晶量の少ないまたはガラス質でFeO*/MgO<1の火山岩については,ほぼ初生マグマと考えてもさしつかいないであろう.しかし斑晶量の多い火山岩については,多量の斑晶を十分に気を付けないと初生マグマでなく,過剰な供給マグマや反対に分化しきった残りもののマグマを考えることになってしまい,実験としての成果が望めない.久米島ピクライトは,カンラン石のFoは最高92.2と高い値であるが,斑晶量が約25vol.%であるため,高いMgO値が単にカンラン石の集積によるものか否かを確認することが極めて必要である.この課題を解決するため,まず久米島ピクライト ( MgO>16wt.% )の1気圧下での高温溶融実験を行い,得られた値を検討し,ピクライト形成した初生マグマの化学組成を求め出発物質を決定する.

     攪拌装置付雰囲気制御炉 ( シリコンユニットK.K.製,DSPSH‐26 ) を用い,ある一定の酸素フュガシティー ( 今までの測定値より計算で得られたFMQ buffer の上Log1.5 ユニット)および一定時間ごとにサンプルを取り出し急冷させ,取り出された試料の斑晶鉱物およびガラスの化学分析を行ない,カンラン石‐メルト間の分配から出発物質を決定する.このようにして決めた出発物質についてピストンシリンダーを用い高圧実験を行い,久米島ピクライトの温度・圧力条件を求める.ピストンシリンダーを用いる高圧実験はマグマに関わる水の量を十分考えることが大切で,それによりなお現在の活動的背弧海盆である沖縄トラフの形成史またはマグマの活動を考えることができ,これまでの研究に大きな貢献できることは間違いないであろう.集積であるならば,集積相を定量的に考察することができる.そしてこれが沖縄トラフにおいてどのように関わってきたか,考えていくことができ新たな事実として形成史にのおこるであろう.また,全岩および鉱物化学組成が比較的よく似た地域,島弧ソレアイト質的ピクライト ( 例えばAleutianなど )や背弧海盆 ( 例えばLau Baisinの背弧海盆玄武岩など ) のと比較検討を十分行い,背弧海盆玄武岩の初生マグマは玄武岩質なのか?ピクライト質なのか?その生成および背弧海盆のを慎重に検討していきたい.

     

  3. Effect of acid gas on the environment of Kilauea, Hawaii, summit area deduced from the silicification of ash deposits.