都市のすきまのカフェ

玉井 茉莉絵

 現代都市の住居専用地域には、個人経営の小さなカフェが点在する。そしてそのようなカフェは、以下に示す三つの「都市のすきま」を体現しているのではないか。

  まず一つ目は「制度のすきま」である。現代の都市には、住居系、商業系、工業系の用途を適正に区分し、都市空間をゾーニングするための用途地域制度がある。この用途地域制度は、地域ごとの建物の形態や用途を規定し、地域の魅力や利便性を高めたり、安全・安心で快適なまちづくりを進めたりすることを目的としている。住居専用の用途に定められた場所に点在するカフェは、制度の主目的ではない建物となり、また、制度の「制度のすきま」に存在していると言える。

 二つ目は「空間のすきま」である。住宅地にあるカフェの経営者のほとんどが、自宅の一部を店舗として利用し営業しているか、もしくはアパートなどの一部分を借りて営業している。そしてこれらの多くは比較的小さなスペースしか持たず、建物と建物の間にひっそりと存在している。また、住居専用地域のカフェは、商業系の地域をはじめとして、異なる用途地域のエリアとの境界近くに立地している場合も多く見られる。そうすることによって、この空間は住居専用地域に属しながらも人通りをある程度確保できるといったように、隣接エリアの用途地域の性質を利用することができる。これらのことから住宅地のカフェは「空間のすきま」という性質を持っていると言える。

  最後に、三つ目のすきまとして「経済のすきま」が挙げられる。住宅地で個人によって経営されているカフェは、利潤だけを目的に経営されているとは限らず、オーナーの趣味の空間や、常連の客が互いに憩い団欒する空間として機能している場合が多い。利潤動機に基づいて動く傾向にある現代の都市にも、このように経済原理だけでは説明できない空間がある。よって、住宅地における個人経営のカフェは、「経済のすきま」に存在していると言える。

 本研究では、以上のように制度のすきま、空間のすきま、経済のすきまに存在しているカフェが具体的にどのような空間なのか、また、なぜそのような空間が存在可能なのかを、経営者・顧客・空間の3つの側面から調べていく。そして、ゾーニング、経済原理だけでは都市は出来ておらず、また、成り立ち得ないことを明らかにしていき、都市にすきまの空間が存在することの意味合いや、都市計画のあり方を考える上ですきまの空間がもつ可能性を探っていく。



具体的には以下の調査を行う。

・第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域に立地する個人経営のカフェの位置を地図上にプロットして立地特性を見る。
・フィールドワークを行ってカフェの建築物の特性を目視観察する。
・インタビュー調査を行い、カフェの経営者・客の特性を把握する。



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