若年層の居住に関するデンマークと日本の比較研究

堀部 礼子

T 研究の目的と背景

 近年日本社会において、若年者をめぐる社会問題が、住宅や労働、世帯形成といった場面に起こっている。戦後から考えられてきた若年者の自立は、企業に就職し、結婚して標準世帯を形成し、住宅を所有するというライフコースによって支えられてきた。しかし、「仕事・家族・住宅」の諸条件は変化し、以前とは違ったものになっている。また、近年の未婚率の上昇や離婚の増加といった社会変化により、夫婦と子供という標準世帯は減少している。さらに、少子化やパラサイト・シングルの増加といった問題がある。

 多くの先進諸国では少子化高齢化を経験し、人口構造が大きく変化している。この現象に伴い、住宅政策、家族政策を含めた社会福祉制度を、各国が社会問題を解決し、これからの個人・世帯にあったものへと変えなくてはならない。

 特に少子化について、デンマークでは1983年に合計特殊出生率が1.37まで落ち込むことになり、大きな問題となった。しかし、翌年から増加に転じ、1995年には1.80までに上昇した。そこには少子化に対して政府による職業、教育、住宅など様々な分野の政策が展開された背景がある。一方、日本では1980年代から少子化は深刻な問題となっている。2009年の合計特殊出生率は1.37で横ばいのままである。デンマークのように一度落ちてしまった出生率を回復するにはどのようにしたらいいのか。

 デンマークでは、18歳以上の国民の住宅確保を国が支援する住宅政策をとっている。公営住宅の一環として若者住宅が供給されている。また、国民に対し良質な住宅が公平に供給され、政府による家賃補助も行われている。本研究では、若者が自立し住宅を持つことを可能とする政策を展開するデンマークと日本の若者をめぐる住宅事情と政策の比較分析を通じて、これからの日本における若年者への福祉国家としてのあり方を住宅政策からアプローチする研究である。




U 研究方法

 本研究では、若年者個人の住宅と世帯に注目して、福祉体制や住宅政策といった制度と、世帯形成モデルの二つの視点から異なる制度の下でどのような住宅実態があるのかを探る。

 若年者のさまざまな世帯に注目するため、若年者個人単位で世帯構成を分類し、親からの独立、住宅の所有関係の比較を行う。




V 論文の構成

 第1章では、日本とデンマーク両国の住宅の実態における相違を述べる。はじめに、戦後からの経済状況により変化したデンマークと日本の福祉体制や住宅政策の違いを明らかにする。次に、配偶関係に着目し、出生率の違いを明らかにし、世帯形成モデルの違いを考察する。

 第2章では、現在の若年者の就業状態、世帯構成、住宅事情を比較し、分析する。

 第3章では、若年者をめぐる現在の政策の違いを探る。

 第4章では、第2章における若年者の住宅実態の分析を第一章で述べた制度と住宅形成モデルの違いから考察し、また、第3章での若年者をめぐる政策の違いを含め、現代社会における若年者の住宅政策を検討する。


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