都市に流入する人口は平成7年をピークに、年々下降の一途を辿っており、今日の都市は徐々に都市本来が持つ「開かれた空間」という性質を失い、「閉じられた空間」に変化しつつあるといえるのではないだろうか。
その一つの原因として、“日本の都市の賃貸住宅の住みにくさ”が挙げられると推測される。欧米の諸都市(NY, London, Paris)と比較してみても、日本の都市、特に東京における賃貸住宅は、床面積が非常に狭く、単位面積あたりで比較すると割高である上、多額の敷金・礼金を求める所が多く、気軽に入居することが難しい。とりわけ低収入かつ会社等より家賃補助を受けられない若者に至っては、高額の家賃を支払い都市に住むことは、よりいっそう困難であると言えるだろう。ここ数年、比較的家賃が安い“シェア居住”を試みる単身者の若者が増加している現象も、そのような現状に抗うひとつの発露としてとらえることができるのではないだろうか。
江戸・明治期の長屋、日清日露戦争期の木賃宿、戦後の木賃アパート、高度経済成長期のワンルームマンションなど、都市において低家賃の住宅はいつの時代にも必ず存在していた。それらの低家賃住宅は、都市に流入する多様な人々の受け皿として、都市を「開かれた空間」として保つ役割を担っていたといえるのではないだろうか。
そこで本研究では、都市部の賃貸住宅に住む20代の若者単身者を対象に、その居住に至る経緯や現在の居住形態を調査し、そのような低家賃賃貸住宅の都市空間に与える作用について探る。そして、都市を開くという面においての低家賃住宅の持つ可能性について明らかにしたい。
なお、調査の方法としては、「全国消費実態調査」と「住宅・土地統計調査」の統計分析により研究を進めたのち、事例研究を行い具体的な実態を把握する。