復興公営住宅における被災者の生活変化
山田 武範
公営住宅制度は、1951年に制定された公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃で住宅を供給するという役割を長く担ってきている。
1995 年の阪神・淡路大震災により神戸市の住宅ストックは甚大な被害を受け、市街地の住宅滅失率は24%にも及んだ。これに対応するために、神戸市は「神戸市震災復興住宅整備緊急3ヵ年計画」(1995)と「神戸のすまい復興プラン」(1996)を策定し、2002年までに復興公営住宅約16,000戸の新規建設を行った。これにより、被災者に対する公営住宅の量的な供給は達成されたと言える。復興公営住宅は被災者の住宅確保に大きな役割を果たしてきた。
しかし、供給された復興公営住宅が入居者にとって適当な住環境を形成しているかどうかは別の問題である。1999年7月に行われた筆者らの研究室の調査によれば、震災前と比較し、震災後(1999)の公営住宅では、高齢、無職、単身の世帯が増加した。また、多くの居住者が震災前の居住地から離れた場所への移転を余儀なくされた。高齢、無職、単身の世帯が、従前の居住地から離れた場所に集中することで、その団地が近隣から孤立するという問題が生じている。その上多くの入居者は、健康や人間関係、家計面での不安を感じていることが明らかになった。
これらの傾向は現在でも続いていると推測される。神戸市すまい審議会答申(2007)によれば、神戸市の公営住宅入居者の高齢化率は、2005年度で33.5%と、神戸市全体の高齢化率の19.9%を大きく上回っており、また伸び率も高くなっている。特に震災後に被災者が多く入居した復興公営住宅においては高齢化率が47.8%にもなっている。高齢化が進んだ結果、自治会などのコミュニティ活動にも支障をきたすケースが増加している。
このように、復興公営住宅が暮らしの再建を支えてきた一方で、暮らしの孤立を招くこともあり、復興公営住宅の役割を一概に述べることはできない。
そこで本研究では、立地の異なる復興公営住宅間の比較に、震災前、1999年、2006年の各時点間の変化という時間的な軸を加えることで、公営住宅の入居者の実態と変化を様々な側面から分析する。それにより、どのような公営住宅が暮らしの再建を支えてきたのか、どのような問題を抱えているのかを明らかにしたい。
研究方法
- 前述した1999 年7月に行われた復興公営住宅調査の対象となった7つの団地に対して、前回の調査と同様の留置き自記式のアンケート調査を実施する。
- 1で得られたデータと99年度の調査データとの共通項目に注目し、これらの間における入居者の世帯構成、転居理由、前住居、生活実感、現在の不安、今後の転居予定などの変化を明らかにする。