1. 研究の目的と背景
雑貨屋が、集中している街がある。こうした雑貨屋は、手作りのものやオー ナーの趣味や好みのものを扱い販売していることが多い。そのほとんどが、ビルの一室や小さな建物の1階部分などの比較的狭く小さな空間を 利用して、個人によって経営されている。
現代の都市再生は、再開発事業や土地区画整理事業などの手法が多く用いられ
ている。これらの事業の下で、都市の基盤の整備や土地の高度利用が進められる一方、これらの手法は空間を激的に変化させる。そして昔なが
らの町並みが薄れ、都市の均質化が進んでいる。
その一方で、店舗の大型化などにより個人経営の小売店の数が減少している現
代において、小規模な雑貨屋に人々が集まり、街に活気をもたらしている。「雑貨屋が集まる街」がメディアに取り上げられることも多く、こ
うした空間に魅力を感じる人々がいる。これらは手軽さ等の理由から古い建物やビルの一室など都市のストックを利用して経営されていること
が多い。そのため、個性的な街並みが保持され、都市に柔軟性や多様性が生まれる。
活気のある都市を再生する上で、雑貨屋のような小規模で多様な空間が果たす
役割は大きい。そしてこのような空間が、ゆるやかな変化を伴う柔軟な都市の再生を可能にしているのではないだろうか。
そこで本研究ではこうした雑貨屋が、人々(経営者・顧客)にとってどの
ような空間として存在し、機能しているのか、また都市空間にどのような影響をもたらしているのかを調査する。そして、このような空間が存
在することの意味合いや、大規模で、都市に急激な変化をもたらすものではない「もう一つの都市再生」のあり方を探っていくことを目的とす る。
なお、今回研究対象とする雑貨屋は、個人経営かつ、オーナーの趣味や好みの
ものを扱い、販売している店とする。
2.雑貨屋の特 徴
これらの雑貨屋は以下の特徴が挙げられる。
第一に、自己表現の空間である。雑貨屋は、利潤だけを目的として経営されて いるとは限らず、経営者の趣味の空間や、お客さんの楽しみの空間として機能していることが多い。効率化や合理化が重視される傾向のもとで 大型店やインターネットショッピングが拡大する一方、これらは個性や自己表現といった新しい付加価値を持った商空間であるといえる。
第二に、ネットワークを形成する空間である。開放性や匿名性が高い都市の中 で、不特定多数の人が買い物をする商業空間でありながら、人々の居場所にもなっている。経営者同士や、顧客同士、経営者と顧客間のコミュ ニティ形成の場になりうる可能性がある。
第三に、女性化する空間である。雑貨屋の経営者や顧客は、ほとんどが女性で ある。雑貨屋は経営者や、特に消費者としての女性の存在の重要性の高まりを示唆し、都市の女性化を促し、反映している。
第四に、都市の多様性を生みだす空間である。上記にも記したように、雑貨屋 は、古い建物、ビルの一室など比較的狭く小さな空間を利用して経営されている。こうして古い建物が再利用され個性的な街並みが保存されて いる。これらが古いものと新しいものの共存によるゆっくりとした変化をもたらし、都市に多様性を生みだしている。
そして、本研究で明らかになった雑貨屋空間の特徴をもとに考察を行い、今後 の都市再生のあり方について提言する。
3.研究方法
具体的には以下の調査を行う。
フィールドワークを行い、雑貨屋の建築物の特性を目視観察する。
経営者・顧客にインタビュー調査を行い、実態や特性を把握する。
まちの成り立ちを調査し、まちづくりと雑貨屋の関係を明らかにする。