夫婦の就労と住宅資産保有

高山 由貴


戦後日本では、持ち家の取得を通して資産を形成することが主流であった。持ち家の取得は、ローンの返済を伴う。しかし、高度経済成長の下、不動産価格の上昇によって資産価値は増え、所得の伸びによってローン負担が低減する。また、インフレ経済を背景に、所得が増え負債の現行価値は減る。これらのことから、住宅取得は価値があるとみなされてきた。持ち家に住み、資産を形成してきた人の多くは、世帯主である男性(夫)だけが就労し家計を支える「男性稼ぎ主」型世帯を形成してきた。男性(夫)ひとりがローンを組んで持ち家を取得するケースがほとんどで、女性は20代〜30代前半にかけて、結婚・出産のため退職し、夫の持ち家に住む専業主婦になる人が多かった。

しかし、こうした「男性稼ぎ主」型モデルを中心とした資産形成のパターンが不安定化してきている。1990年代のバブル崩壊と、それに続くデフレ経済・労働市場の流動化の下、年功序列制度や生涯雇用制度は崩壊し、男性の雇用と所得は不安定化した。住宅資産は大きなデフレに見舞われその価値が下がり、安定性が弱まった一方で、住宅ローンの返済負担は増大している。

このような背景から、世帯の資産形成における妻の就労の重要性が増してきている。「男性稼ぎ主」型モデルが不安定化し、住宅経済の状況が変化した中で、住宅取得のため、また住宅ローンの債務から早期に逃れるため、妻の就労によって世帯の所得を増やすことの合理性が高まっている。1985年の男女雇用機会均等法の施行などにより、1980年代後半以降既婚女性の有業率は高まった。また育児(介護)休業法などの制定により、女性の就業継続に関する制度が改善されつつある。しかし、結婚・出産後も正規雇用者として就労を継続する女性の割合は、これを支援する制度が拡充したにも拘らずほとんど上昇していない。就労する女性の多くは非正規雇用であり、また子育て期には妻が無職を選ぶことはあまり変わっていないように思える。家計および住宅資産形成において妻の就労はどのような影響を及ぼしてきているのか。その影響はどのように変化してきているのか。妻の就労が重要になるのであれば、それを前提として、どのような社会や制度を作り出すのかを検討していく必要がある。

本研究では、住宅資産保有が夫と妻の就労状況によってどのように異なるのか、住宅資産保有と夫婦就労との関係が、バブル崩壊後どのように変化したのかを明らかにする。具体的には以下の調査を行う。



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