都市の開放性と離家
菅尾 由輝
都市の条件とは、その開放性にある。都市とは多種多様な人々を受け入れる空間であり、それゆえに都市ではさまざまなチャンスに出会う機会は必然的に多くなる。その機会を求めて、多くの人が地方から都市へと移動し、都市はそれを受け入れてきた。
しかし、近年では地方から都市へと移動する人の数が減少している。移動する場合も、その主な目的は進学や就職、または仕事上の都合のためであり、都市に多く存在する機会を目的として移動する人はわずかである。
また、移動の減少に伴って見られる世帯内単身者の増加は、地方から都市への移動だけでなく、親の家からの移動が困難になっていることを意味している。世帯内単身者のなかには、親の家があるということをメリットと捉えて計画的に離家しない人もいるが、一方では離家したくてもできない人、都市へ移動したくてもできない人が多数存在する。
親の家から移動した人のほとんどが民営借家や公営借家、公団・公社の借家や給与住宅といった借家に住むことになる。経年で見ると、これらの住居費負担は増加傾向にあり、そこに住む世帯の収入は減少傾向にあるため、収入における住居費の比率は大きくなり、生活のゆとりが無くなってきている。特に都市においてそれは顕著に現れている。このことが都市への移動や離家が減少している原因の一つだと考えられる。そして、都市の開放性の基盤は現在揺らぎつつあるといえる。
このような状況下で市場にある住宅に住むことができない人が都市で生活をするためには、市場価格を度外視した住宅や市場の外にある「脱商品化」された住宅が必要となる。しかし、このような安価な住宅も減少傾向にあるほか、入居の条件として自身の所属が問われるところが多い。ホームレスやネットカフェ難民といった人々が社会問題として取り上げられている原因も、開放性という都市の条件が揺らいでいることと無関係ではない。都市における多様性を保つためには、都市へ移動したくてもできない人を受け入れる空間、離家したくてもできない人を受け入れる空間が不可欠である。
そこで本研究では、住居移動の多い39歳以下の年齢層に注目し、親の家から移動した世帯の住宅をはじめとする生活の現状を把握し、都市の開放性と離家についての考察を加える。具体的な調査としては、「住宅・土地統計調査」「全国消費実態調査」などの統計資料を用い、背景となる借家市場の動向を把握したうえで、過去5年以内に親の家から移動した世帯をパターンごとに分析することで、離家の分岐を明らかにする。また、都市の開放性を保つ役割を担ってきた「脱商品化」住宅の経年変化を見ることで、その実態を把握する。