全国の大都市では,木賃・長屋住宅密集地区(密集市街地)がインナーシティに形成されてきた.しかし,高度経済成長とともに発生した,より良い住環境の要求に応えることができない木賃・長屋住宅への需要は低下した.現在そのような地区は衰退が進み,以下の3点のような問題を抱える.
本研究では,震災により大きな被害を受けた神戸市を対象とし,木賃・長屋住宅密集地区の歴史的変容と震災以後どのような変質が起きているのかを明らかにする.そして,この変質が木賃・長屋住宅密集地区の本質的な問題解決に至るものなのかということにも目を向けていく.
木賃・長屋住宅の需要はインナーシティにおいて高くなっている.1975年には,神戸市内のインナーシティと呼ばれる灘・兵庫・長田の3区に神戸市全体の木賃・長屋住宅総延床面積の約6割が集中している.また,木賃・長屋率50%以上の町丁を密集地区と定義すると神戸市全体の約80%の町丁がこれら3区に集中、偏在している.
次に、前述した3区の木賃・長屋住宅延床面積は、震災発生まで漸減傾向にあった.この要因としては,

木賃アパートや長屋住宅の需要低下による絶対量の減少,

共同住宅の不燃化(マンション化),が考えられる.震災の発生により,これらの住宅はその木造低質性と震災時の火災によってさらに激減している.震災後に決定された都市計画は,木賃・長屋住宅が集中し,かつ震災による被害が大きい地域に設定された.
震災後,密集市街地の変容に関する調査のため,木賃アパート(文化住宅)・長屋住宅の更新に焦点を置いたケーススタディを行った.対象地区は,岸地・大内地区(灘区),神田地区(兵庫区),久保・二葉地区(長田区)内で,

1990年の木賃・長屋率が50%以上かつ,

震災後の都市計画区域に含まれていない地区,である.これらの地区について,震災による滅失敷地について現在の土地利用とそれに関する敷地面積,接道条件,土地の権利関係を調査した.調査の結果を以下に示す.