アーティストの都市空間
両澤 けよう
本研究は、アーティストの暮らしの実態を時間・空間・経済的側面から明らかにすることを通じて、都市空間とアートの関係のあり方を考察するものである。
アーティストは作品を制作するだけの人物ではない。アーティストは都市に住まい、アーティスト活動を行い、また働いて生計をたてる。アーティストもまた都市の中で暮らしを営み、都市を構成している一人である。また、アトリエで制作する時間だけがアーティストとしての活動時間ではない。アーティストが構想を練ったりひらめきを得るのは、ギャラリーやアトリエという空間だけではない。アーティストは都市の移動中、住まいの中、仕事中など様々な場面で物事を想像する。アーティストの暮らしそのものがアーティスト活動に密接に関わる。
近年、国家や地方自治体による文化芸術の振興やまちづくりへの芸術の導入の促進、企業のメセナ活動(文化・芸術活動支援)の活発化、芸術系のNPO法人の増加などにより、都市の中に芸術を取り入れ促進する動きが増えている。都市空間が芸術と社会の接点となる機会は増加した。このような動きを踏まえ、デザインや配置などアート作品自体と都市空間についての研究、芸術の概念や芸術の普及のあり方についての研究が、ある程度なされてきている。
しかし、アーティストが都市の中で、どのようにアトリエを確保し、どのように住まい、どのように生計をたてているか、というアーティストの暮らしの詳細な部分に関しては、まだあまり実態が把握されていない。アーティストの暮らしは都市の中にどう組み込まれ、どう都市との関係性を持っているのだろうか。そしてそれらがどのように都市空間に影響を与えているのだろうか。都市空間におけるアートのあり方や都市とアートの関係を検討していく際、アート作品だけではなく、またそれをアーティストが制作している制作時間だけでもなく、アーティストの暮らし全体が都市空間形成にどう関係しているのかという側面から多面的にアプローチしていくことも重要ではないだろうか。
本研究では、アーティストという人物がどのように、都市の中で、「住まい・アーティスト活動・仕事」に関わる選択をし、暮らしを営んでいるかを詳細に把握する。アーティストの@住まいAアーティスト活動(制作・展示・プロモーションなど)Bアーティスト業以外の仕事、をそれぞれ空間・時間・経済という三つの側面から観察し、アーティストの暮らしの実態を明らかにする。そして、それらが都市空間に、どう関わり、どのようにインパクトを与えているかを明らかにする。そしてアーティストの暮らしの実態から、都市空間とアートの関係のあり方を検討していく。
具体的には以下の調査を行う。
- 関西に在住のアーティストに対し、暮らしに関するインタビュー調査を行う。
- アーティストが集まるニューヨークの地区において現地調査を行い、その都市空間の構造や性質を把握する。