住空間を再生できるか
−被災市街地における住宅再建プロセスを追跡する−

木山 幸介


1.はじめに
本論は、神戸市灘区南東部の定点観測調査を通じ、阪神・淡路大震災により被害を受けた市街地における住空間の再生への問題を明らかにすることが目的である.調査地域は神戸市灘区南東部(JR線、国道43号線、石屋川,都賀川に囲まれた都市計画決定地域を除く77.7haの地域),調査は、1995年6月から1996年3月までの月1回,1996年4月から1997年1月までの2ヶ月1回の敷地単位の目視調査である.また、敷地属性として敷地面積・従前用途・接道条件を調査した.


2.調査結果
2−1.調査地域の特性
1戸建(52.4%),木造住宅(73.7%)の比率がそれぞれ高い.敷地面積では60平米未満が38.6%,80平米未満が56.7%と,狭小敷地の比率が高い.接道条件では4m未満の接道不良敷地が26.2%存在する.つまり、調査地域となる市街地では、住宅建設が空間条件的に困難な不良敷地が多いということができる.

2−2.被害の実態
全敷地の全半壊率は、57.6%に達し、なかでも木造共同住宅・長屋住宅に特に被害が集中している.敷地面積が40平米未満で全半壊率は71.3%,接道不良敷地では67.8%と被害が大きい.つまり,再建の困難な敷地ほど被害が大きくなっている.

2−3.解体敷地状況の推移
解体敷地のみに注目して見ると,1995年6月時点では解体のみ敷地(更地)が90.7%と多く、解体後に恒久住宅が建設された敷地は1%に過ぎない.震災1年後の1996年1月では,恒久建築の建設敷地は23.9%,更地が62.4%,1997年1月時点では恒久建築が56.6%、更地が29.1%となっている.

2−4.解体敷地再建の階層性
解体敷地の変化を敷地面積・接道条件別に見る.1997年1月時点で,敷地面積40平米未満では解体後恒久建築が47.5%,更地が39.6%に対し、100〜150平米では恒久建築57.6%,更地24.1%であった.接道4平米未満の敷地では,解体後恒久建築が52.4%,更地が34.7%に対し,接道4〜6平米敷地では恒久60.6%,更地27.5%であった.建築条件の悪い敷地での再建に遅れがみられる.

2−5.市街地における駐車場の増加
調査市街地において、緩やかにではあるが確実な駐車場の増加が見られた.駐車場敷地数では1995年6月時点で220敷地であったものが1997年1月においては306敷地に増加している.同期間で駐車場面積は42599.7平米から,43212.8平米へ増加している.敷地数の増加の割に面積の増加量が少ないことから、新駐車場は非常に狭小なものであることがわかる.買いたい敷地の暫定的な利用としての小規模なものであろう.

2−6.新規住宅の内容
震災後建設された新規住宅(完成済み)の内容を見ると,戸建88.1%,長屋0.6%,共同11.2%であり,住宅構造では木造29.3%,非木造18.7%,プレハブ52%である.階数別では二階建53.8%,3階建36.3%となっている.新規建築の傾向として長屋住宅の激減(震災前7%)とプレハブ住宅の激増(震災前0.5%),3階建ての増加(震災前3.4%)が挙げられる.

2−7.新着戸建住宅の完成時期・立地条件
プレハブ化,3階建化が激しい戸建住宅についてその完成時期を見ると,1996年1月頃からプレハブ住宅の建設が木造を上回り始め,その後順調に増加している.反対に木造は同年5月以降増加が鈍っている.プレハブ住宅は木造住宅とほぼ変わらない建設条件の敷地に建設されていることから,これまでニュータウンなどの敷地条件の良好な土地に主に建設されてきたプレハブ住宅が敷地面積,接道条件が比較的悪い市街地にも対応し始めていることが明らかとなった.

2−8.敷地の接合による住宅再建
狭小敷地の多い市街地において,単独敷地での住宅再建は困難なケースが多い.新規住宅の13.5%が敷地の接合により再建されており,特に共同住宅にその例が多くみられる.共同住宅では,その規模が大きくなるほど従前用途として共同住宅・駐車場などの比率が高いことが示された.


3.結論
以上より,次の4点が明らかとなった.
以上4点に対する対策として,郊外への大規模住宅の供給ではなく,公共機関による市街地への小規模な住宅再建支援(家賃補助,自立再建への経済支援・指導等)が実現されなくてはならない.




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