中国北京市における出稼ぎ労働者の住宅問題

金 龍


出稼ぎ労働者は中国の工業化、都市化及び改革開放に伴って、発生した。戸籍制度の規制緩和によって、移動に対する規制が弱まり、都市に流れ込む出稼ぎ労働者は年々増えている。市場経済の発展や労働力不足の問題は戸籍制度の改革を促したが、今後も出稼ぎ労働者に対して、都市での住宅問題や福祉問題に大きな影響を与えると考えられる。

1978年以来、中国政府は計画経済体制に対して改革を進めるとともに、都市部において住宅の市場化、商品化の試みも始めた。福祉住宅政策の廃止、住宅の市場化と商品化を通じて、住宅不足問題の緩和、都市住民の生活水準をレベルアップ、経済を発展させるという思惑があった。注目される政策は以下である:(1)福祉住宅の払い下げ;(2)商品住宅を建設、販売することによって、高収入家庭の要求を満たす;(3)中低収入の家庭に経済適用住宅を提供する;(4)経済困窮家庭に廉価賃貸住宅を提供する;(5)中古住宅市場を育成する。これによって、都市部の一人当たりの平均住宅面積は1978年の3.6平方メートルから2000年の約10平方メートルまで増え、持ち家率も80年代の20%未満から2000年の73%になった。

しかし、都市部の住宅政策の改革は、受益者は都市住民のみであって、出稼ぎ労働者とは無縁であった。戸籍制度の制限により、出稼ぎ労働者は経済適用住宅の購入、廉価賃貸住宅への入居資格が与えられず、住宅の取得ルートが限られている。さらに、雇用、教育、社会保障の面でも、差別を受けている。

出稼ぎ労働者は特別な技術を必要としない、多くの都市住民が嫌がるサービス業、建築業、製造業に従事することが多い。2005年北京市の人口は1492.7万に達し、その中に出稼ぎ労働者は357.3万人(人口総数の24%)である。そして、76%の出稼ぎ労働者はサービス業、建築業、製造業に従事している。過酷な労働をしているにもかかわらず、賃金は安く、住宅の状況もかなり劣悪である。出稼ぎ労働者の毎月の消費支出は北京市最低収入者のそれとほぼ同じ程度であり、平均居住面積は都市住民の1/2程度である。

本研究は@「改革・開放」政策が打ち出されてから今までの住宅政策と戸籍制度を分析することで、出稼ぎ労働者は政策面で差別を受けていることを明らかにし、A北京における出稼ぎ労働者に対してインタビュー調査を行い、生活実態、住宅状況を明らかにする。さらに、「改革・開放」の基本理念である「先富論」を評価し、出稼ぎ労働者はその恩恵を受けているかどうかを論ずる。市場経済化というグローバルな動きが、中国という特殊な場所の住宅事情に、どのような影響を与えているのかに着目する。

出稼ぎ労働者の生活、住宅状況の改善には、政府の政策面での支援が必要不可欠である。適切な住まいに住む権利は人間として基本的な権利であり、政府は合理的な住宅保障制度を設け、都市住民だけではなく、出稼ぎ労働者にも社会的利益を受けさせるべきである。特に廉価賃貸住宅の居住対象に出稼ぎ労働者を取り入れる。そして、出稼ぎ労働者に技能訓練と就職のチャンスを増やし、収入を増加させ、住宅問題を解決するルートを作るべきである。



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