持家市場のグローバル・ブームに関する研究
上米良 洋介
戦後の経済成長と、それに伴う税収の増加は、国家による積極的な社会政策を可能にし、福祉国家の発展を促した。しかし、各国家が福祉政策にどの程度重きを置き、どのような福祉国家へ発展していくかは、それぞれの国家の歴史的な特質により大きく異なる。
エスピン・アンデルセンは、福祉国家が保守主義、自由主義、社会民主主義という3つの異なるレジームに類型化されることを示した。
また、ジム・ケメニーは各国の住宅保有形態に注目し、福祉国家の住宅政策の類型化を行った。1つ目の類型は、社会賃貸部門を民間借家市場から分離するデュアリズムである。そこでは持家取得が促進され、賃貸市場に対する公的介入は最小化される。もう一方の類型は、社会賃貸部門を民間借家市場に統合するユニタリズムである。そこでは、住宅保有形態に関わらず、住宅の供給に公的な介入が積極的に行われる。
従来、福祉国家の発展の経路は直線的で、収斂すると考えられていた。エスピン・アンデルセンとケメニーの研究は、この従来の福祉国家論を覆し、福祉国家が類型ごとに異なる発展の経路を持っていることを示した点で大きな意味を持つ。
近年のグローバリゼーションの進展は、福祉国家は収斂に向かうのか、分岐するのかという議論を新たに引き起こしている。グローバリゼーションは、従来の空間的・時間的な制約をなくし、世界中の国家をひとつのシステムに組み込む。それに伴い、各国で金融市場や労働市場において規制緩和が進められ、国家は市場への介入を縮小しようとする。各国政府は、社会保障に関する支出の縮小させるために、国民の住宅資産の所有を重視するようになり、持家取得を推進する政策が進められている。これらの動きは、住宅市場のグローバル・ブームを引き起こした。しかし、これらグローバルゼーションに対する各国の反応は、決して一様ではない。今後の更なるグローバリゼーションの進展で、福祉国家はどのように発展していくのか。
本研究は、福祉国家の収斂と分岐に関する議論に、ひとつの知見を与えるとともに持家所有への依存が生むリスクを明らかにすることを目的として、各国の住宅条件の動向を明らかにしようとするものである。
具体的には以下の分析を行う。
- 住宅の所有形態及び国家の住宅政策に着目し、各国の住宅政策の特質と、近年の動向を明らかにする。
- 各国の住宅価格の推移、住宅ローンに着目し、近年の住宅ブームの現状と問題点を明らかにする。