住宅所有の構造再編 −暴落・格安・競売物件の現状分析−

今尾 昌之


1.研究の目的
1990年代初め,バブルが崩壊した.不動産の価格は下落の一途をたどり,住宅所有の構造再編を促した.こうしたなかで様々な物件が社会問題として捉えられるようになった.これらの物件は「どこ」に「どのような」かたちであらわれているのか.本研究では神戸市を題材とし,この点を明らかにする.


2.研究対象と方法
<研究対象>
神戸市に所在し,住宅所有における問題が顕著にあらわれていると思われる以下の3つの物件を研究対象とする.
  1. 1991年,1992年建築のバブル期マンション
  2. 1000万円未満の中古マンション
  3. 競売物件
<方法>
物件の分布状況について,神戸市住宅基本計画における地域区分を用いて分析を行う.


3.暴落物件
<手法>
不動産経済研究所発行の『不動産経済調査月報近畿版』を用いて1991年,1992年に新築された神戸市のマンションについて分布地域と物件の特徴を明らかにする.
<結果と考察>
バブル期マンションは大きく2つに分類できる.ひとつは分譲価格が4千万円,面積が80〜120平米を中心とした一般的なファミリー向けと思われるマンションである.これは全物件の6割が集中している団地NT・海上都市地域に多い.もうひとつは物件数は少ないが1億円以上の比較的広いマンションであり,神戸市南東部に集中している.これらは地価が一番高いバブル期に分譲された物件である.そのほとんどが担保割れしており,売却することができない.不動産価格の暴落は不動産市場停滞の一因として懸念される.


4.格安物件
<手法>
リクルート住宅情報部発行の『週刊住宅情報関西版』1997年〜2000年に掲載されている,神戸市に立地する1000万円未満のマンションの分布地域と物件の特徴について明らかにする.
<結果と考察>
1000万円未満マンションは増加の一途をたどっている.そのほとんどが1970年代前半に建築された,専有面積40〜70平米の物件であり,これらは老朽化した標準的なファミリー用のマンションであると思われる.特に団地OT・西部山麓・東部山麓といった郊外や山の中腹など比較的利便性の低い地域に多い.1000万円未満マンションは,現在の住宅余剰という状況において,その影響が最もあらわれている物件である.市場価値の下がったマンションの増加は,住宅の荒廃・地域のスラム化等の問題につながる可能性がある.


5.競売物件
<手法>
リクルート住宅情報部発行の『週刊住宅情報関西版』1997年〜2000年より,神戸市内の競売物件で「マンション」と「土地付建物」についてその特徴と分布地域を明らかにする.
<結果と考察>
競売物件は増加の一途をたどっている.そのうちマンションは都心・西部下町地域といった神戸市の中心部に多い.ほとんどがバブル期に建築された投資用のマンションであると思われる.逆に土地付建物は郊外地域に多い.競売物件は,バブル崩壊という経済的な影響を大きく受けた人たちが手放さざるを得なくなったものが多数を占めると思われる.今後も経済状況の悪化が続けば同様の物件が更に市場に出てくると予想される.


6.結論
ここまでの分析より,各物件は以下のような地域的な分布の特性があることがわかる.
  1. 1億円未満バブル期マンション:郊外の新規団地や人工島
  2. 1億円以上バブル期マンション:神戸市南東部
  3. 1000万円未満マンション:六甲山山麓と古い郊外団地
  4. 競売マンション:市街地中心部と西部市街地
  5. 競売土地付建物:郊外地域
バブルが崩壊し,これまでの住宅所有は構造再編の時期を迎えている.そのなかで増加が顕在化してきた暴落・格安・競売物件は,それぞれの特性により地域的な偏りを明確にもって分布している.住宅所有の構造再編という現象を捉えるにあたり,それが市全域に均等に発現しているのではないということを認識した上で,各地域の具体的な実態を把握することが重要である.




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