大都市圏の住宅履歴におけるベビーブーマーとベビーバスターの比較分析
藤村 能光
戦後の日本の住宅システムは、持ち家取得を促進することで、社会のメインストリームを構築する役割を果たした。多くの人々が住宅所有を目指し、夫婦と子からなる標準世帯を形成し、標準的なライフコースを形成した。持ち家はキャピタルゲインを発生させ、持ち家世帯は資産形成と安定した生活を手に入れた。
しかしバブル経済の発生と破綻によって、住宅所有をめぐる社会的・経済的条件が変化し、住宅システムの再編がはじまった。人口の少子・高齢化が起こり、離婚率・未婚率は共に増加し、世帯形態は変化した。不動産価格の暴騰と暴落が起こり、地価は上昇し続けるという前提が崩れ去った。住宅所有はキャピタルロスを発生させ、各世帯にとって以前のような資産価値の形成が困難になった。住宅所有を軸とした社会のメインストリームは、拡散の方向に向かいつつある。
住宅システムの変化が人々に与える影響は大きい。しかし影響の程度はそれを経験する世代によって異なる。世代によって住宅取得時の社会的・経済的状況、および住宅事情は異なる。同じ住宅システムのもとでも、それを経験する世代によって、住宅所有に対する状況や意識には差が生じる。結果として世代ごとの住宅履歴は異なる軌跡を描く。
さらに居住する地域によっても住宅所有の条件は異なる。戦後の日本において、多くの人々は、地方から首都圏に出てきて、住宅履歴を描いた。一方で首都圏以外の大都市圏に住居を構えた人もいる。首都圏に移住した人々と、移住せずに地元に残った人々は、住宅所有にそれぞれどのような思いをはせ、どのような履歴を残したのか。
本研究では、世代間・地域間における住宅履歴の差異を比較・検討することを通じて、戦後の日本の社会・経済のメインストリームを構築した人々がどのような住宅履歴を経験したのか、また住宅システムにどのような変化が生じたのかについての分析を行う。
具体的な研究内容としては、神戸大学の卒業生に対して、住宅履歴のアンケート調査を行う。同大学の卒業生はメインストリームのコアを形成したと想定できる。分析の枠組みは、@ベビーブーマーとベビーバスターの比較、A首都圏在住者と関西圏在住者の比較、すなわち世代間・地域間の比較分析である。まず大都市圏(主に関西圏)のコーホート世代別住宅履歴の分析・考察を行う。さらに首都圏の住宅履歴のデータを利用して、大都市圏における各世代の住宅履歴の比較・検討を行う。