細街路は,市街地発展の過程において無秩序に形成されてきた.それは市街地が抱える問題点の一つであるが,他方で交流や憩い,社会教育の場として人々の生活と深く関っている.
しかし震災後の神戸市街地において,これら細街路に変化が起こった可能性がある.本研究では,特に共有空間としての機能と景観に注目し,震災前後における細街路空間の変化を調査・分析した.
調査対象は,灘区南東地区内の2項道路59本とそれに接する769敷地である.街路単位に関してはペイヴなど,敷地単位に関しては利用状況,建築類型,建築物に付属するエレメント,溢れ出しなどを目視によって把握した.また,街路の幅員を計測した.分析に際して,震災前の実態の正確な把握が不可能なため,ここでは細街路沿いの新規建築に注目した.新規建築が多い街路は震災前と比べ,空間構成や景観が大きく変化していると考えられる.そこで,各街路に接する敷地数に対し,新規建築が立地する敷地数の比率を「新規建築率」と定義し,細街路とそこに接するし敷地を新規建築率

35%未満,

35%以上55%未満,

55%以上,に分類した.調査結果をこれらの分類に基づいて比較・分析することで,震災前後における変容の実態を捉えた.なお,敷地状況については,震災前のデータが存在するため,直接比較を行った.
新規建築の激増により,従来の2階建て・木造が減少し,震災後,細街路沿いの建築物では,3階建て・プレハブ造が急増している.敷地の利用状況では,駐車場の増加が顕著である.街路のペイヴは,アスファルト化される傾向にある.
駐車場・車庫付き建築の増加,敷地内が見渡しやすい境界状況は,壁面位置の後退などの変化がみられる.これらの変化は,建築物と街路の間にスペースが取られ,街路空間が開放的になったことを意味している.また,プレハブ住宅の増加により塗装パネルの外壁が急増しており,建築物の3階建て化とあわせて細街路の空間に大きな影響を与えているとみられる.
街路上の溢れ出しには,自転車・バイク・植栽が多くみられるが,建築物と街路の間のスペースが拡張される傾向にあわせて震災後,溢れ出しは減少しているようである.溢れ出しを,共用空間にプライベートな要素が流出した現象と考えると,街路に対する住民の意識に何らかの変化が生じたと考えることができる.また,溢れ出しの現象により車両の通行条件は向上しているが,街路空間を潤していた植栽の減少は景観の変化に影響を及ぼしている.