1.テーマ化された都市の出現
現在,私たちの身の回りには「テーマ化された環境」〜ある一定のテーマ性を帯びた空間〜が溢れている.それは,レストラン,カフェ,バー等の飲食店,アパレルショップ,キャラクターショップ等の小売店舗,アミューズメント施設にまで至っている.元来,テーマ化された環境は,テーマパークに代表されるように,その非日常性故に,私たちが生活する連続した空間とは接触を持たない場所に配置されるものであった.しかし,現在,それは,私たちが生活する都市の中に氾濫し始め,並置され,混成している.都市が,自身としてテーマ化され,アミューズメント的エンターテインメント的要素を持つ「テーマ化された都市」となっていく傾向にある.
現代のラスベガスは,そうした都市の中で,世界中で最も先進的かつ総合的にテーマ化された都市であるといえる.そのラスベガスを考察する時,私たちとテーマ化された都市の関係,共の行く末についてのヒントが得られるのではないだろうか.
方法としては,2回にわたる現地調査(1999年1月,9月)を行い,ラスベガスの持つ都市としての構造を空間的,社会的に分析した.
2.ラスベガスの光
観光地としての中心地であるストリップ大通りにはカジノを併せ持つ巨大ホテルが建ち並ぶ.それらは個々に明確なテーマ性を持ち,私たちにカジノを含む様々な消費を促すテーマ空間である.それらテーマ化された環境は人を呼び寄せ,ショッピングを例とするように,消費を誘発する力は絶大である.
次に一つの都市としてラスベガスを見る.消費空間であるストリップの繁栄により,ホテルサービス産業は大いなる成長をみせる.ホテルは増新設され続け,それに伴う雇用の数も多大なものとなっている.移住者の移住目的において'雇用'関係は大部分を占め,雇用の増大に伴い,人口は増加し続けている.今後もその成長は揺るぎ無いものだと考えられている.
3.ラスベガスの影
ラスベガスのようなテーマ化された都市は様々かつ莫大なプラスの効果を生み出す'理想の都市'なのであろうか.
テーマ化された空間は,莫大な雇用を生み出すと同時に,その生産性を持たない空間であるという特性のもとに,専門職,マネージャー/サービス労働,という‘分極化’を引き起こす.地元居住者が住む住居地区においても,地域による所得格差や郊外住宅開発により‘階層化’,‘分割化’がみられる.また,雇用,財政などの面では,実質上は‘カジノを中心とするサービス産業’に支えられているため,‘カジノによるモノカルチャー’への不安がある.
4.結論
ラスベガスという「テーマ化された都市」は,テーマ化された環境のもつ波及効果により一つの都市として総合的な成功を収めている.一方,テーマ化された環境を筆頭とするような生産性のない空間は様々なものに線引きを行い,分離させるということがわかる.
―イメージ/現実,白人/黒人,金持ち/貧乏,ストリップ/周辺,安全/危険,雇うもの/雇われるもの,都市/自然・・・.現在のところ,ラスベガスが抱え持つそれらの境界が決壊,崩壊する可能性は見当たらない.しかしながら上述のように,その要素は確実に存在する.これは,ラスベガスほど極端ではないにしろ,私たちのテーマ化された都市において起こっていることであり,起こり得ることである.「テーマ化された環境」は,その「効果」と同時に,私たちの目に見えない意識下の「危うさ」もそなえもっている“諸刃の剣”であるということを心に留めておかなければならない.
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