1.発光する都市
近年,12月になると全国でライトアップイベントが大きな話題を呼ぶ.その光のイベントが周辺住宅地のライトアップを呼び,街全体が「発光」する傾向が各地で見られる.震災後の神戸で行われている「神戸ルミナリエ」はその先駆けであるといえる.そこで「神戸ルミナリエ」の過去5回開催の状況・結果をたどることでその戦略,特徴や影響などを明らにし,同イベントをはじめとするライトアップイベントが生み出した新たな都市空間の持つ特徴やそのあり方,問題点について言及したい.
2.「神戸ルミナリエ」5年間の変化
〈方法〉
ルミナリエ実行委員会委員会へのヒアリング調査,同委員会発行の資料の収集,1998年度・1999年度開催時,及びその前後の会場内の目視調査
〈結果と考察〉
「神戸ルミナリエ」における過去5年間の変化を表1に示す.回を重ねるにつれ,大規模化,広域化し,管理・監視され,巨大な経済効果を及ぼす観光集客事業の中核のイベントに移り変わっていることが分かる.またルミナリエ終了後,会場の撤去作業が行われる中,神戸のボランティア団体が集まって作られた「神戸の冬を支える会」による野宿者支援の越年活動が行われていた.ルミナリエの始まった1995年から毎年ルミナリエ終了2日後〜1月5日にかけてこの活動は行われており,その土地利用が開催前後で劇的に変化していることがわかる.
3.言説における「神戸ルミナリエ」
〈方法〉
1995年〜1999年のそれぞれ12月の朝日新聞・神戸新聞・産経新聞・日本経済新聞・毎日新聞・読売新聞のルミナリエに関した記事の調査,ルミナリエ実行委員会へのヒアリング調査,同委員会の行った来場者・店舗に対するアンケート調査結果資料の収集
〈結果と考察〉
- 主催者の見解:「ルミナリエの及ぼす経済効果,観光復興という恩恵の確保の為に継続」という意見と「震災のことを忘れないために継続」という意見の間で揺れている.5年の節目を迎え運営面での総点検が指摘されており,中止も視野に入れた大幅な見直しが叫ばれている.
- 来場者の見解:「被災地神戸に貢献度が高く,震災復 興を象徴する良いイベントであり継続を望む」という声が多くを占めるが,マナーの問題,震災鎮魂の精神,イベントの運営方法など何らかの改善策を伴う継続希望の意見も目立ってきている.またマナーや混雑などの問題の出現,経済効果主眼の戦略に継続の必要なしという意見も出てきた.
- 地元の見解:会場である旧居留地の人々は震災鎮魂という主旨,経済効果共に好意的であるが,来場者のマナーの悪化に頭を痛めており,中止を求める意見も出始めている.また会場で生活を送る野宿者からは「周辺が賑やかになるのは良いがその間どこで生活すれば良いのか」との意見があり,ルミナリエから疎外された人の存在が明らかになっている.
- 周辺店舗/施設の見解:「終日満員で大繁盛,経済効果に手応え」,「人は多いが売上げにつながらずルミナリエの効果は薄い」,「本来鎮魂の場なので経済効果に期待すべきでない」という意見に分かれ,ルミナリエの及ぼす恩恵に温度差があることがわかる.
- マスコミの見解:概ね好意的な意見であるが鎮魂よりも商業化・観光化に力を入れた戦略に対しては厳しい指摘がなされている.経済効果の温度差について,運営方法変換の必要性についての言及もなされている.
4.結論
今回,明らかになったルミナリエの特徴をまとめる.
- 「物材の生産」から「イメージの消費」というポストモダンの特徴を顕著に示したものである.
- その戦術の特徴として
- 時間・空間の隔離と編集
- 「現代の神戸」に「ルネッサンスのイタリア」という文脈を持ち込むことでの脱場所化
- 低いコストに対する高いリターン, があげられる.
- 周辺に莫大な効果を及ぼすが,それは時間・空間的な広がりに限界がある.
- 時間・空間・文脈の脱場所化が起こっても,実際の空間との関係は切り離せず歪みが生じている.
- ルミナリエをめぐる言説は,継続の有無,経済効果,震災鎮魂,市民のイベント,観光集客の柱等の競合がみられる.
以上のことは「神戸ルミナリエ」以外で発生する「発光都市」を研究していく上でヒントをとなるだろう.