神戸大学大学院国際協力研究科 復旦大学国際関係・公共事務学院 高麗大学校国際大学院

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キャンパスアジア・プログラム国際シンポジウム「The Future Development of the CAMPUS Asia Program: Learning from US, European and Asian Experiences」が開催されました。


 2013年2月25日、JICA関西ブリーフィングルームにて、神戸大学キャンパスアジア・プログラムにより標題の国際シンポジウムが開催されました。本シンポジウムは、これまで約一年間に渡って活動してきた日中韓のトライアングル交流事業であるキャンパスアジア・プログラムを今後さらに改善していくことを目的として、アメリカおよびヨーロッパ、アジア各国・地域における同様の事例・経験を共有することを目指すものです。国内外の研究者・専門家など多岐に渡る識者の方々に加え、キャンパスアジア・プログラムで日本に留学中の復旦大学の学生をはじめとする神戸大学の学生も参加しました。

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 本シンポジウムでは、3名のプレゼンターと3名のコメンテーターによる、活発な議論が行われました。初めに、ピッツバーグ大学のジョン・ワイドマン教授より、『高等教育におけるクロスボーダーの種類、課題、展望』について講演がありました。ワイドマン教授はクロスボーダー下での高等教育を「自国以外の国にある教育機関が①学位コースや修了証のための学習コースを独自にまたは国内の機関と共同で提供すること、②独自にまたは協力関係にある教育機関と共同で学位や修了証を発行すること、のいずれかを通じて高等教育のサービスを提供すること」と定義されました。その上で、関係者が政府、高等教育機関、学生、質保障機関等と多岐にわたり、加えて高等教育の提供方法も、ブランチ・キャンパス、フランチャイズ、ダブルディグリー、ジョイントディグリー、単位の相互認定、E-learning等、多様である等、クロスボーダー下での高等教育における複雑性について言及されました。また、湾岸諸国からの事例を基に、質の保証、持続可能性、頭脳流出等を制度上の考慮事項として指摘されました。
 次に、アジア開発銀行・東南アジア局人間社会開発部の廣里恭史・主席教育専門官が、『東南アジアにおける高等教育の調和とネットワーキング:ASEAN共同体の統合に向けた地域の取り組みの加速化に向けて』と題して、ASEAN各国の大学による取組について、講演を行ないました。廣里専門官は、ASEAN大学ネットワーク(AUN)、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)、高等教育開発地域センター(RIHED)等がすでに高等教育分野でのASEAN域内のハーモナイゼーションに取り組んでいることに言及されました。域内でのハーモナイゼーションの取組みの中では、品質保証システム(QAS)、クレジット転送システム(CTS)等が優先取組み事項であることを指摘し、その上で、ASEANの留学生のためのモビリティ(AIMS)とその進捗状況について述べられました。また、アジア開発銀行は、東アジアにおけるSEAMEOカレッジと呼ばれる10年間の主力プログラムにおいて、ASEAN地域を支援していることも報告されました。最後に、こうした多国間の共同プログラムにおける課題や、透明性、中立性、モビリティと継続性といった、主要なネットワーキングのための概念/原理を調和させる機会を設けることの必要性を強調されました。
 最後に、放送大学の二宮昭・副学長が、『キャンパアスアジア・プログラムに期待されるもの―日本の視点から』という演題で、日本の大学による取組について講演しました。二宮副学長は初めに、デイビット・マクネイル氏の論文を紹介し、これまで欧米の大学に学生を供給してきた日中韓の三カ国政府が、地域内における高等教育の調和を目指し、学生、教員の域内モビリティを拡充するための第一歩としてキャンパスアジア・プログラムに合意したと評価していることに触れられました。また、学期カレンダーおよび単位換算、学位授与や資格認定の仕組みについて参加している3大学間(神戸、復旦、高麗)で十分にコンセンサスをとり一致した認識を持つことの重要性を強調し、三カ国間に存在する文化的、制度的、言語的障壁を理解した上で、三大学間で効果的なマネージメントを模索する必要があると述べました。
 討論のセッションでは、3つの講演に対して各コメンテーターからのコメントがなされました。まず、ワシントンDCにある国際NGOであるFHI360のジョン・ジリウス副総裁からジョン・ワイドマン教授に対するコメントでは、今後のキャンパスアジア・プログラム発展のためには、効果的なモニタリングおよび評価(M&E)と明確なビジョンを持つことが必要であることが指摘されました。 次に、UNESCOバンコク教育政策改革局の矢野智子プログラム専門家から廣里専門官に対しては、二国間協議によるアジア地域における高等教育発展イニシアティブの調和の重要性や、民間組セクターからの資金を獲得して、キャンパスアジア・プログラムの持続性を保証するべきである、というコメントがなされました。
 最後に、川嶋太津夫神戸大学国際協力研究科教授から二宮放送大学副学長に対しては、東アジアの大学とヨーロッパの大学との間にはそれぞれ異なる発展の背景があることが指摘され、大学間の調和や統一化について議論する際には、こうした違いを十分に理解する必要があることが指摘されました。そして、キャンパスアジア・プログラムの更なる発展のためには、学期カレンダーおよび教授言語や単位換算制度について、関係大学間で十分な調整が行われる必要があることも、併せて指摘されました。

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 質疑応答の時間には、キャンパスアジア・プログラム委員を中心に、参加学生への具体的対応の工夫から、本プログラムの将来的展望、また今後のキャンパスアジア・プログラムおよび東アジアにおける高等教育の連携の発展に必要な諸論点について、議論が展開されました。最終的には、参加者が本プログラムに関する具体的な課題点として、①キャンパスアジア・プログラムが関係諸国の大学間交流に一定の役割を担っていることを認識した上での、クロスボーダー下での高等教育のハーモナイゼーションにおける主導意識の重要性、②将来的に本プログラムを地域的枠組みからグローバルな枠組みへと発展させていく必要性、③キャンパスアジア修了生の就業機会を提供することの重要性、参加学生の就職機会という観点から、本プログラム修了の価値について雇用者側に十分説明する手段を検討する必要性、④本プログラムに参加する学生が提携3大学(神戸・復旦・高麗)のすべてに何らかの形で滞在する可能性を検討する必要性、⑤本プログラム参加学生が派遣前にキャンパスアジア関係国の文化や言語の準備をする必要性、を共有しました。本シンポジウムは、キャンパスアジア・プログラムの将来的な可能性を見出すことのできた有意義な場となり、盛会のうちに幕を閉じました。