初生マグマの研究
マグマは一般に上部マントルかんらん岩の部分溶融で生じて、分離・集積し、さらに、浮力で上昇中に、冷却・結晶作用・周囲の岩石の混成作用、マグマ混合、脱ガス、等多様な過程で組成を変えて、最後に地上に噴出するものと考えられています。その過程の最初の部分溶融で分離したマグマのことを初生マグマと云います。言い換えると、初生マグマは、マントルかんらん岩とマントル条件で平衡にあるマグマでもあります。
大学の学部にあがった頃、岩波の「地球の構成」を読んでいて、久野さんの項で、「火成岩成因論の問題に<場の問題>と<物の問題>がある」、というところで引っかかったのは、この2つの分け方は、Bowenたちがやってきた火成岩成因論の問題意識を、なんとなく消してしまっているように思えたことです。この2分論の欠けている部分を強いていえば、<マグマの一生の問題>といえるように思いました。それで、私はマグマの一生のモデルを火山岩から理解できればよい、と思った次第です。で、その始まりは、初生マグマ組成の研究ですが、当時は、久野さんが授業(1967年頃)で、「初生マグマがどのようなものか、はっきりは判らない」、という状況でした。
1970年にRoeder & Emslie(1970; CMP)によるかんらん石−メルト間のMg-Fe分配係数の決定はその意味でたいへん重要な研究で、