4年次生の特別研究(卒業研究)の指針

 入学以来これまでの3年間の生活で諸君は,講義を受け試験を受けて単位を取るという勉強の仕方が中心で、「どの講義を受けるか」という選択に関するある程度の自由と主体性はあったものの,実際にはほとんどの人が受動的な態度で過ごしてきたのではないでしょうか。生物学は現在大きな学問的なうねりの中にあり,非常な勢いで変貌を遂げつつあります。そのような渦中にあって、自分が何に向いているか、どんなことに興味をもっているか、何が知りたいか、などについてもう一度よく考え、今までに得た知識を土台にして、指導教員や先輩の助けを借りて自分の思うところを追求し、未知のテーマの解明にチャレンジしてみる機会がこの「特別研究」です。ですから、この「特別研究」では諸君の主体性が強く求められます。周りの人は諸君を助けてあげることはできても、それ以上のことはできません。それがこれまでの講義を中心とする勉強と非常に異なる点です。この「特別研究」は、いわば生物学科に所属する諸君が、自然科学の研究とは何かという問題に接する最初の機会だと言えるでしょう。

 「特別研究」を行うかどうかは単に単位の問題ではありません。それによって諸君はこれまでに得られなかった「何か」をきっと得るはずです。「特別研究」において、4年次生の皆さんは、各研究室で指導教員や先輩と個人的に接して生活し,「自分の」研究テーマ(それは場合によっては先輩の手伝いやら、人の真似事のようなことから出発するかもわかりませんが)を追求し、世界の研究者によって報告されている論文を読み、問題点を指導教員や研究室の先輩と議論し、あるいは学会に出席して他大学や他研究機関の大学院生や研究者の話に耳を傾ける、という経験をすることになります。このように書くと諸君の中には、そんなことが自分にできるだろうか、と不安に思う人もいるかもわかりませんが、大丈夫、諸君が真剣に取り組めば道は自ずと開けます。その点では大いに楽観主義者になって下さい。そして生物学の次の世代を担うんだという気概をもって下さい。

 大学院に進学せずに学部で卒業するという人の中には、自分にとって「特別研究」なんて関係ないことだと思っている人もいるかも知れません。しかしそれは全く違います。学部で卒業するのであればなおさらのこと、「特別研究」に従事して理学部の教育の真髄に触れて下さい。理学とは真理を究めることであり、特別研究は「新しい発見」の現場そのものでもあります。「特別研究」において得られるであろう、既知の事実から新しい真理を見出すという経験は、諸君の社会人生活においても貴重な糧となり、将来の礎となるでしょう。

 「特別研究」のことに限らず、もし何か相談があればいつでも研究室に来て下さい。

 我々生物学科の教員は、諸君の来訪を待っています。