第1章「グラックス兄弟の時代(紀元前133−120年)」、第2章「マリウスとスッラの時代(紀元前120−78年)」、第3章「ポンペイウスの時代(紀元前78−63年)」と分けられているから、内容はほぼ明らかであろう。もっとも本書の登場人物は前書のハンニバルとスキピオ、第4作に登場するであろうシーザーやアントニオほどには有名ではない。
前作を読んで感心したことに、ローマの民主制があった。当時のローマは共和制を敷いていた。まず元老院という議会がある。議員は選挙で選ばれるのではない。しかし首相にあたる執政官(2名)、閣僚にあたる法務官などは選挙でえらばれる。ローマには貴族と平民があったが、そのどちらでも執政官になれたのである。ところが本書の扱う時代には、貧富の差が甚だしくなっていた。それを改革しようとしたのが、もうひとつの重要な役職、護民官にえらばれたグラックス兄弟である。この兄弟は期間をおいて護民官に選ばれ、貧しい市民を救う策をこうじたが、元老院の反対にあい、どちらも非業の死をとげてしまう。
ローマは始まりから終わりまで、ゲルマン人たち蛮族の侵入に悩まされた。塩野さんはいう。「人間とは、食べていけなくなるや必ず、食べていけそうに思える地に移動するものである。・・・この種の民族移動を、古代では蛮族の侵入と呼び、現代ならば難民の発生という。」ローマ人は蛮族の侵入をまずは武力で排除した。しかし余裕のある場合は、蛮族の地を征服し、そこのインフラ整備を行いローマ化し、蛮族がその地でも食べていけるようにした。紀元前104年当時のローマはその余裕がなかった。蛮族の侵入を撃退するべく5回派遣されたローマ軍は5回とも敗北した。これを救ったのがマリウスである。 マリウスは軍を徴兵から志願兵制に改革した。そして紀元前101年、侵入したゲルマン人を5万のローマ軍が破った。ゲルマンの死者12万、捕虜6万であったという。
ローマ市民の間ではきわめて民主的であったシステムも、古代国家の常として、奴隷制に支えられていた。紀元前73年には、有名な奴隷暴動「スパルタクスの反乱」がおきている。映画「スパルタクス」では、カーク・ダグラスがスパルタクスを、鎮圧側の法務官クラッススをローレンス・オリビエが演じていた。本書を読んだあと、ビデオレンタルでこの古い映画を見るのも一興であろう。