「世界を変えた科学10大理論」

田中一郎他著、学研、1500円

 本書は学研から発行されている最新科学論シリーズというムック形式の本の26号である。多くの著者によるもので、実は評者もその一部を書いているので、「松田卓也が読む」という本稿の表題からは多少外れるが、ほんの一部であるのでお許し願いたい。このシリーズは全部、目を通したというわけではないが、目についたところだけで言えば、なかなか良心的なシリーズであるといえる。以前にも述べたことだが、評者自身、科学啓蒙書を読んで、科学の道に進んだこともあり、科学の啓蒙活動は重要なことであると思っている。本書の出版は学研であるが、編集は矢沢サイエンスオフィスというところで、矢沢さ んは科学の啓蒙活動に活躍しておられる。

 10大理論とはニュートン力学、ガロアの群論、ダーウィンの進化論、マクスウェルの電磁理論、リーマン幾何学、熱力学とエントロピー、アインシュタインの相対性理論、ボーアとハイゼンベルクの量子力学、統一場理論、ビッグバン理論である。マルクス理論とフロイトの精神分析理論も補遺として入っている。その他、プラトンのイデア論から始まり、マルサスの人口論、ゲーデルの不完全性定理、ガイア仮説など40理論も、網羅されている。科学の10大理論というけれど、群論、進化論、リーマン幾何学を除けば、全て物理理論であるので、その選択には物理学者でない人達からは、異論もでるであろう。こ のムック・シリーズの表題を見ると、物理学と天文学に偏っていることから、編集者の興味と知識の範囲で選ばれたものだと推測できる。

 ところで評者は、アインシュタインの「相対性理論」・・・4次元空間は人間の常識をどう変えたか、という題で執筆した。最近、相対性理論とくに特殊相対性理論は間違っているというような表題の本が1,2出版されている。それもれっきとした大学教授が執筆者の中に含まれているので、単に疑似科学の本だと見過ごすわけにはいかない。評者も詳細に検討したが、完全に間違っている。素人の論者は単純な間違い、教授はもう少し込み入った間違いを犯している。世間には物理学、宇宙論の愛好家は多く、独自の理論を提案して悦に入っている人も多い。それだけならご愛嬌なのだが、ハードカバーの本として出版されると、初心者に誤解を与えるので、はっきりといって有害である。

 評者は相対性理論、とくに特殊相対論は完全に確立した理論であり、現代の素粒子論、高エネルギー物理学に深くくみこまれていることを強調した。素粒子を高エネルギーに加速する加速器を設計するには、特殊相対論的効果は絶対に無視できない。「相対論が間違いとかどうとかは芸者の時(二十世紀の始め)に言うことよ。」


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