「疑惑の霊能者 宜保愛子の謎」

大槻義彦著、悠飛社、1280円

 著者の大槻さんは言わずと知れたオカルト批判の第一人者として著名な、早稲田大学理工学部教授である。テレビ、雑誌などのマスメディアを通して「超能力」の批判、火の玉の物理学的な研究を通して、ミステリーサークルのプラズマ説などを展開しておられる。大槻さんは66冊の著書を出版しておられるそうだが、評者は本書の他に「超能力ははたしてあるか、科学v s 超能力」(講談社ブルーバックス)を読んだ。内容はかなりオーバーラップするところもある。

 大槻さんは「超常現象」を3つのカテゴリーに分類する。UFOやポルターガイストのような、人間が介在しない自然現象。これはありうるとおっしゃる。もっとも評者はUFOは人間が見誤ったり、インチキ写真をこしらえたりすることが多いから、自然現象というよりは、人間現象、社会現象に思えるが。つぎに「超能力者」がパワーやエネルギーを送って、自然や人間に異常な現象を起こす「エネルギー励起型」の超常現象。これはユリ・ゲラーが念力を送って、時計を壊したとか修繕したといったたぐいのものである。これは物理学の根本原理に反するからありえないと主張される。つぎに超能力者が言葉などの情報を送って、受け手が例えば吹っ飛んだり、病気が治ったりという 「情報励起型」の超常現象。これは心理的なものだからありうる。本書には多少の勇み足もあるが、評者はその内容に基本的には賛成である。

 大槻さんならずとも、心ある科学者は、超能力とか超常現象、オカルトの類の反科学、疑似科学思想が蔓延することを恐れている。そこでそういった疑似科学に反対するジャパン・スケプティクスという会(寿岳潤会長)が組織され、大槻さんはその副会長であった。評者も会員の一人である。大槻さんはそのなかでも、宜保愛子研究会などを組織して、非常に熱心な活動をしておられた。しかし宜保シンパが乗り込んできて嫌がらせをしたので、止めてしまわれたと聞く。また早稲田の友人によれば、宜保シンパは早稲田の総長や教授に大槻教授にたいする嫌がらせの電話をしているそうだ。こうなると、宜保シンパというのは、しばらく以前にマスコミを騒がした新興宗教のようで気味が悪い。そのなかにはテレビのディレクターもいるそうだから、むしろ商売に使おうという魂胆ではないかともかんぐれる。しかしそういった商売人を除けば、疑似科学は一種の宗教といっても良いと私は思う。

 われわれ科学者も、あるいは健全な常識をもった大部分の人々も、テレビの超能力番組などをショーとして楽しんでいるのだと思う。あるいは信じたとしても半信半疑で、全面的にのめり込むことは少ないだろう。しかし一番問題だと思うのは、テレビなど影響力のあるマスコミがそのようなことを、真面目な振りをして取り上げることだと思う。本当は視聴率さえとれれば、何だってよいのだろう。もっともあのNHKでさえ「やらせ番組」を作る時代だから、民放のその手の番組を信用する方が間違いだといわれればそれまでではあるが。しかしあまりのことに、寿岳会長、大槻教授始め著名な学者、作家が日本テレビに抗議文を突きつけたと事実もある。


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