「時間の矢、生命の矢」
ピーター・コヴニー、ロジャー・ハイフィールド著、野本陽代訳、草思社、1995年、2884円
著者のコヴニーはプリンストンで理論物理を学び、現在ウェールズ大学の物理化学講師、ブリュッセル自由大学でイリヤ・プリゴジンとの協同研究もおこなった。ちなみにブリュッセル自由大学はフリーメイソンにより作られた大学で、ボッフィンさんもそこの出身である。ウェールズ大学といえば、評者が留学したところである。ハイフィールドは「デイリー・テレグラフ」の科学記者である。訳者の野本さんは、慶応大学法学部卒業、超新星の研究で有名である野本憲一東大教授の夫人である。
本書はきわめてスタンダードな時間の矢の解説書であるが、筆者の経歴、プリゴジンが序を書いていることからも分かるように、化学とくに非平衡系の熱力学、生物学などにも重点をおいて解説している。その章建てを述べると
- 時間のイメージ
- ニュートン力学の台頭ー時間がその方向を失う
- 相対性理論ー時間はいかにしてアインシユタインを負かしたか
- 時間と量子跳躍
- 時間の矢ー熱力学
- 創造的進化
- 時間の矢、生命の矢
- 統一された時間観
- 終わりのない探究
となっている。評者の授業を聴講、および「皇帝の新しい心」を読んだ人にとて、5章までは容易に理解できる標準的な解説になっていることが分かるであろう。ただ5章では主としてプリゴジンなどブリュッセル学派の非平衡系の熱力学、散逸構造についても述べられている。これが6章への布石となっている。
6章で述べられていることは、秩序とカオス、自己組織化、ブリッセレイター、ベルーソフ・ジャボチンスキー反応、フラクタル、ストレンジ・アトラクターとカオスなどである。
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