「ミステリーサークル真実の最終解答」パンタ笛吹著、VOICE、2002年2月、1600円、ISBN4-89976-019-1
評者がパンタ笛吹の著書を取り上げるのは、これで3度目である。「ミステリーサークル2000」(1999年)では、著者はミステリーサークル(サークル)が宇宙人からのメッセージであるとする説を強力に主張した。ところが本書では一転して、サークルはイタズラであるという説に大転向しているのである。実は同じような転向は「裸のサイババ」でもあった。素直に過ちは過ちとして認めている点に好感がもてるが、皮肉に見れば「一粒で二度おいしい」チョコレートのように、同じ題材で著作や講演を二重に行い、二重儲けしているともいえる。しかしここは素直に、著者の善意を信じよう。
ミステリーサークルとは、主として英国の畑に発生する奇妙なものである。麦などが押し倒されて、きれいな幾何学的構造になっているのである。サークルの原因に関しては、イタズラ説と本物説があり、本物説はまた自然発生説と宇宙人からのメッセージ説に分かれる。最近は恐ろしく複雑なサークルがほとんどになったので、自然発生説論者は退場した。イタズラ説に関しては「ミステリーサークル黙示録」(1997年)の書評で紹介したように、ダグとデイブという二人の男性が、自分たちが作ったと名乗りをあげたことで決着が付いたと、評者は納得した。著者はそれでも、全部のサークルを彼らが作れるはずはないとして、前書ではあくまでも宇宙人説を採用したのである。
著者がどうして立場を大転換したか、その経緯を述べたのが本書である。はじめにたくさんのサークルが宇宙人からのメッセージではないだろうかと思わせぶりに、写真入りで紹介される。著者に転機が訪れたのが2001年3月にラスベガスで行われたUFO国際会議である。そこでサークル研究の大御所で、サークル宇宙人説を採っていたコリン・アンドリュースが、立場を180度転換して、サークル・イタズラ説を発表した。もっとも当人は、サークル信奉者の攻撃をおそれて、発表はパワーポイント・ファイルを送りつけただけのものであった。発表内容はサークルの円の中心部に竹竿を指した穴を見つけたこと、新聞社がサークル作成を行い、それを「専門家」が本物と認定してしまったこと、サークルの出現日が金曜と土曜の夜に集中していることなどである。
著者はまた別のサークル専門家からも、サークル作成現場の写真を示された。サークルを批判的な目で検証し始めると、宇宙人説には不都合な状況が次々とでてくる。たとえば、制作ミスと思われるような、サークルの欠陥が目に付いてくるのである。極め付きは、著者がサークル制作に長年携わってきたという青年にインタビューしたことである。ことここにいたり、著者もサークル・イタズラ説に転向するのである。
評者には、自分で見たこと、調べたことしか信じないという著者の立場は好感がもてる。元サークル信奉者の否定本だけに説得力もある。パスカルは「人間は考える葦である」といったが、人間の考えることは正しいことばかりとは限らない。本書は人間がいかにだまされやすいかということを示している。だから超能力、超常現象やUFO宇宙人説を信じる人は後を絶たない。科学技術が発達した現代において、非科学がまかり通る皮肉な現象は、それを伝えるテレビや書籍などのメディアの影響が大きい。それを防ぐには、メディアの伝えることを鵜呑みにせず批判的に見る訓練をする必要がある。これをメディア・リテラシーとよび、スケプティクス(懐疑)精神の重要なポイントだと評者は信じる。