「立花隆先生、かなりヘンですよ・・・「教養のない東大生」からの挑戦状」谷田和一郎著、洋泉社、2001年12月、1500円、ISBN4-89691-580-1
著者は弱冠25歳の文学部卒業の元東大生である。立花隆から教養がないと言われた東大生を代表しての反撃である。これをみて私は自分の幼時の喧嘩を思い出した。「お前はアホや!」、「ちゃうわ、アホいうもんがアホやと、お母ちゃんが言うてはったわ!」、「ちゃうわ、アホいうもんがアホや、いうもんがアホやと、お父ちゃんが言うてはったわ!」さてこの二人の元東大生の喧嘩はどちらに軍配が上がるのであろうか。
本書の目次を掲げることで、内容は推察できる。1.インターネット教伝道師の奇説、珍説、誤説。2.人工知能のハイブリッド進化という立花流妄想を検証する。3.宇宙開発をめぐる現実離れした願望の背後にあるもの。4.環境ホルモンと遺伝子組み替え食品をめぐる主張の奇々怪々。5.またまだあるぞ、こんな間違い・あんなミス。6.立花思想の本質的な欠陥はなにに由来しているのか。7.オカルティスト立花隆の実像。8.立花隆の功と罪・・「知の巨人」から「知の虚人」へ。
評者にはこの著者の指摘に共感する部分が多々ある。7章で述べられている、立花のオカルト、超能力、ニューサイエンスよりの思考には首を傾げる部分も多い。「巨大雪玉説と異説に異様に寛容な精神」に指摘されている、立花の立場には評者も当時、違和感を覚えた。立花に批判された国立天文台の渡辺潤一助手には評者も同情を禁じ得ない。
5章で指摘されている、立花の明白な誤りは、認めるべきであろう。情報は「まず疑うべきもの」である、という著者の主張は、本会の趣旨と合致している。「熱力学の第二法則もわかっていない」に指摘された立花の誤りに関しては、評者も立花に指摘の手紙を昨年、送った。そうしたら、立花はすぐに評者の所にやってきて、目の前で改訂原稿を書いたのである。評者は過ちを認めるにやぶさかでない、立花の率直な態度に好感を覚えた。さらにいえば、評者が立花に指摘したもっと根本的な誤りを、本書の著者は指摘していない。類書「立花隆の無知蒙昧を衝く・・・遺伝子問題から宇宙論まで」佐藤進著(社会評論社)でも指摘していない。その誤りがどこかは、ここではあえて指摘しない。
1-3章にある立花の人類進化願望の思想は、著者はニューサイエンスから来ているとしている。しかし評者は英国の作家アーサー・クラークと物理学者バナールの影響を指摘したい。クラークとバナールのファンである評者はここでは、著者よりも立花に共感を覚える。還暦を超えた立花は、著者が指摘するように「好奇心旺盛なただの子供?」の側面がある。それに対して若干25歳の著者は、すでに老成した保守的な批評家なのである。かくのごとく若者がすぐに老人化してしまうのは、茶化して言えば、環境ホルモンの影響ではないだろうか。
「お前はアホや!」といわれた(元)東大生の著者が「アホいうもんがアホや!」と、かくも具体的に綿密に反証したことで、著者が知的能力に関してはとても優れた人物であることは証明できたと思う。非常に優秀な典型的な東大秀才である。しかし著者は、大学生の知的レベルが落ちたとする立花の立証に反論することにより、文部官僚の政策を全面的に擁護している。評者にはこれは首肯しがたい。立花のいうコンドルセの定義に従えば、この著者は「バカ」ということになる。評者には彼の現在の地位が気になる。サラリーマンなのか、フリーターなのか、あるいは官僚なのか。それについての記述は一切ない。