クェーサー

 

クェーサーとは非常に遠方にある活動的な銀河 の中心核で、通常の銀河の10倍から1000 倍ものエネルギーを放出している。

クェーサーは1960年代のはじめに、サン デイジ、マシュウス、シュミットといった人々 により発見された。それはまず電波望遠鏡によ って電波源として見つかった。光学望遠鏡でそ の場所を見ると青白い天体が見つかった。非常 に小さな天体で星のように見えたが、星ではな い。そこで準恒星状電波源とよばれた。その後 、電波を放出していないが、似たような天体も 見つかり、これらをまとめて準恒星状天体、そ の英語を略してクェーサーと呼ばれるようにな った。

クェーサーの特徴としては、その光のスペク トル写真をとると、高温度の水素ガスから放出 される輝線スペクトルがみられることである。 そのスペクトルはつねに波長の長い方、つまり 赤いほうにずれており、ずれの大きさの程度を 赤方偏移という。

赤方偏移=(観測された波長−もとの波長)/ もとの波長

われわれの宇宙は膨張しており、遠くにある 銀河はわれわれからの距離に比例した速さで、 われわれから遠ざかっている(ハッブルの法則 )。そのためドプラー効果に似た現象がおこり 銀河の放つ光のスペクトル線は赤方偏移してい る。ところがクェーサーのスペクトル線の赤方 偏移は銀河と比べると、とてつもなく大きい。 いままで知られているクェーサーのうちで、も っとも赤方偏移の大きいものはQ0051−2 79で、赤方偏移の大きさは4.43である。 このことは、このクェーサーが光の速さの93 .4パーセントでわれわれから遠ざかっている ことを意味する。ハッブルの法則を使うと、こ のクェーサーまでの距離が120億光年であり 、いまわれわれが見ているこのクェーサーは、 宇宙が誕生してまだ10億年しかたっていない ことを意味している。

クェーサーがこのような遠方にある天体であ るとする立場をクェーサーの宇宙論説とよぶ。 じつはクェーサーはもっと近くの天体であり、 赤方偏移は宇宙膨張のせいではないとする、近 傍説とよばれる立場もあったが、現在ではほと んど信じられていない。

クェーサーまでの距離が分かると、観測され る明るさから、クェーサーの放出しているエネ ルギーが計算できる。その値は冒頭に述べたよ うに、銀河の放出するエネルギーより遥かに大 きい。しかしそのこと自体はそれほど不思議で はないかもしれない。不思議なことはクェーサ ーの明るさがたえず変動することである。しか もその変動の時間スケールが極めて短い(たと えば1日以下)。変動の時間スケールから、エ ネルギーを放出している場所の大きさが推測で き、それは太陽系の程度である。これは銀河の 大きさを考えると極めて小さい。だから問題は こんな小さな領域からどうやって巨大なエネル ギーを放出するのかという点である。

クェーサーの正体をめぐってさまざまな論争 が繰り返されてきた。そして現在では冒頭に述 べたように活動的な銀河の中心核であると考え られている。クェーサーは一般に非常に遠方に あるので、それが銀河に付随していることは、 直接には分かりにくい。しかしクェーサーにそ の性質が似た銀河がいろいろ知られている。 その一つは電波銀河である。電波銀河は強力 な電波を出している楕円銀河である。電波は銀 河自体というよりは、銀河を挟むようなあたか も二つの目玉のような領域から出ている。その 目玉にエネルギーを供給しているのは、銀河か ら目玉に向かって流れる細いプラスマガスの流 れである。これをジェットとよぶ。クェーサー にも電波源がともなっているものがあるし、ジ ェットが観測されるものもある。

もうひとつクェーサーと似た天体としてセイ ファート銀河がある。これは明らかに渦状銀河 であるが、その中心核は明るく輝いており、そ のスペクトルも極めてクェーサーに似ている。 もっともセイファート銀河の出すエネルギーは クェーサーよりは小さい。これらのことからク ェーサーは銀河の中心核の現象であろうと考え られているのである。

さてそれではクェーサーのご本尊はいったい なんなのであろうか。どのようにして、小さな 領域からそんなに大きなエネルギーがだせるの であろうか。昨今の定説はクェーサーのブラッ クホール説である。銀河の中心に太陽質量の1 億倍程度のブラックホールがあるとする。ちな みに銀河全体の質量は太陽の1千億倍程度であ る。さて銀河中心核にある巨大ブラックホール のまわりにガスが集まってきたとしよう。その ガスは普通はブラックホールに引かれて直接落 ちるのではなく、ブラックホールを回るガスの 円盤を形作る。これをアクリーション円盤とよ ぶ。アクリーションとはガスが天体の重力にひ かれて天体に落下することをいう。(ブラック ホールの項を参照。)ガスはアクリーション円 盤の中でブラックホールのまわりを回りながら しだいにブラックホールのほうに落下していく 。このとき重力エネルギーが熱エネルギーに転 化するのである。

星は核エネルギーで輝いている。核エネルギ ーは石油のような化学エネルギーに比べれば格 段に大きいが、それでもアインシュタインの関 係式

物質のエネルギー=物質の質量×光速2

で得られるエネルギーの1パーセント以下しか 利用できない。それにひきかえアクリーション では物質のエネルギーの40パーセントものエ ネルギーが引き出せるのである。その意味でク ェーサーにおいてブラックホールとアクリーシ ョンがなんらかの役割を果たしていることはほ ぼ間違いないであろう。

ブラックホールをかこむアクリーション円盤 の中心部分から、ガスがなんらかの機構で細く 絞られて、アクリーション円盤とは垂直方向に 2本のジェットとなって飛び出していくであろ うと想像される。これらの機構の詳細はまだま だよく分かっていない。

図 クェーサーの中心に存在する巨大ブラック ホールと、それを囲むアクリーション円盤、お よびそこから吹き出すジェット。


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