ただ今ご紹介にあずかりました松田です。私はこの鳥取に来るのはこれで2度目でして、1度目は今を去る25年前、新婚旅行の時に来ました。昨日着いたんですけれども、今日は朝、ホテルから「日ノ丸タクシー」というのに乗ってきたんですけど、確か25年前に来たときも「日ノ丸バス」というのに乗りましたので、まだあるんだなあと思いました。
私は先ほどご紹介にありましたように、大阪で生まれまして、それから京都大学に行って、京都大学を出て、現在は神戸大学の教授をしております。三都物語であちこちうろついていたわけです。ちなみに、先ほどの話ですが、25年前に来たときには、確か大阪から福知山線を通って、山陰線を通ってきたのです。今回は、姫路、佐用、智頭を通って、これは智頭線と言うんですね、「スーパーはくと」に乗ってきたのですが、えらい速いですね。神戸から2時間です。ですから飛行機で行くほどのこともなかろうと思います。先ほどタクシーに乗ったとき見ると、空港の表示が見えましたけれども、大阪・鳥取間は飛行機で行く必要は全くありませんね。
さて、私は京都大学に入って、そこで宇宙物理学、天体物理学というものを専門にしました。大学を卒業して、修士課程、博士課程を修了して、就職したところが、工学部の航空工学というところでした。要するに飛行機をつくったりすることを研究するところです。そういうところに行ったのは、たまたま就職口があったから行っただけであって、研究はずっと宇宙物理学をやっていました。その後、神戸大学の地球惑星科学科というところに異動しましたので、本職に近いところへ戻ったことになります。
今日お話しすることは疑似科学という話です。しかし、私は疑似科学の研究者でもなんでもなく、宇宙物理の専門家なんです。しかし科学一般に対する誤解とか間違いが盛んにあるので、そういうことを直して行こうと思って、こういう活動を始めたわけです。
ちなみに、私は神戸から来たと申しますと、タクシーの運転手さんも地震のことを話されるんで、まず地震の話をします。地震からもうすぐ2年になります。昨年の1月17日に阪神大震災は起きました。幸いなことに、神戸大学は山の上にあって、そのあたりにも地震はもちろんありましたが、比較的被害は少なかった。神戸の土地というのは皆さんご存じないと思いますが、瀬戸内海があって、六甲山がある。この狭い所、山と海の間の狭い所に開けた、横に長く広がっている場所です。そこに重要な鉄道が南側、つまり海側から阪神電車、JR、阪急電車と通っていて、更にその間に阪神高速とか42号線などの国道が通っています。大学は阪急電車より更に山の方にあって、斜面の上にあります。もちろんその辺りは開けてはいます。しかしそのあたりがいかに山かというと、大学の中をいつもイノシシがうろついているんですよ。昼間うろついているわけじゃないんですが、夜になると、こんな巨大な奴がごそごそと歩いていたりします。イノシシは子供をつれて、「うりぼう」というんですが、歩いています。たまにはタヌキも見かけるんです。大学の中で。これが神戸市かと思うような所なんです。まあ、そんなところです。
地震は、主に、阪急線よりもずっと南、JRの辺りが激しかったです。JRの駅、「六甲道駅」というんですが、これはつぶれてしまいました。ぺちゃんこになりました。私が住んでるのは、伊丹というところで、空港のある街です。伊丹の阪急の駅もぺしゃんこになりました。そういうわけで両方の駅がぺしゃんこになってしまったんですが、大学は大丈夫でしたし、私の家も大丈夫でした。しかし、学生諸君の下宿なんかが非常にやられました。私の研究室には、10人ほどの学生がいたのですが、その中の1人なんかは、下宿がぺったんこになって、生き埋めになってしまいました。もちろん亡くなりはせず、助かったんですが、そのショックで大学を辞めてしまっいました。学科の中でも学生が亡くなりました。
さて、本題に入ります。先ほど校長先生も話されたように、まず空中浮揚とオウムという話から始めたい。このオウムというのは要するに、2年前の地震の後で大騒ぎになった話です。このオウムで、非常に特徴的なことは、幹部に非常な秀才がたくさんいたということです。村井、土屋、遠藤、上祐、青山など。例えば、村井は阪大の出身ですし、土屋は筑波大学、遠藤は京大です。上祐は早稲田、青山は京大です。青山なんかは、京大の非常な秀才といわれた人間です。 こういう話があります。オウムの信者は一万人ぐらいになります。日本国民がだいたい一億人、10の8乗人、一万人が10の4乗人ですから、日本人の一万分の1くらいがオウムです。普通皆さん方が考えたときに、自分の知り合いは百人ぐらいはありますね。その知り合いがまた百人ぐらいの知り合いがあります。そうすると、知り合いの知り合いというのはだいたい、一万人ぐらいあります。日本国民一億人の中の一万人は、全体の一万分の1です。つまり知り合いの知り合いぐらいには、オウム信者が1人ぐらいいて良いということになります。実際私の知り合いの知り合いがこの村井なんです。この人は阪大で宇宙物理学を専攻していたんです。エックス線天文学というのを専攻していた。だから、彼の指導教官は私の知り合いです。村井はなかなか優秀な男だったらしくて、先見の明もあったようです。ところがその村井が、訳のわからんことをやってしまったということです。
オウムが流行ったひとつのきっかけとして、「ムー」という雑誌があります。これは学研の出版です。その雑誌に麻原の空中浮揚の写真があった。麻原が空中に浮かんでいるとする写真です。こんなものはトリック写真であることは明らかなわけなんだけれども、麻原は「自分は超能力がある。だから空中に浮くことはできるんだ」と言うことを主張したわけです。こんなことは皆さんは、常識で考えて、あり得ないと思うわけですよ。だけどそれを、この秀才達が信じてしまった。空中浮揚というのは物理の原則に反するわけなんだけれども、彼らは物理学の専門家ですよ。その専門家が空中浮揚を信じたというのは、私にはとても信じられない。それは何故なのか。私に言わせれば、彼らは受験秀才であって、非常にいろんな物事を暗記している。だから知識はある。しかし知恵とか常識がないんではないかと思います。空中に人間がそのまま浮かぶことができないのは、別に物理学の難しい問題とは関係なく、単なる常識です。
去年は盛んにテレビ宣伝のような、オウムの番組がありました。その中に、麻原のアニメがありました。麻原が空中にフワフワフワと浮いていくアニメがありました。それから、なんか壁をスウスウスウと通っていくアニメもありました。だけどもし壁をスーと透過できるほどの超能力があるんなら、何も刑務所なんかに入っている必要はないので、スーと逃げてしまえば良さそうなもんです。彼がそれをできないと言うことは、超能力なんかないということです。
要するに、普通の常識ある人間から見たら、全くナンセンスである。ちなみにこの空中浮揚写真というのはその後、いろんな人が自分で撮って見せたわけですね。小学生だってできるようになった。要するに座ってあぐらをかいて、そのままピョンピョンと跳ねる、そして跳ねたときに写真をパッと撮る。その瞬間をとらえれば、空中浮揚したかのごとく見えるわけです。そんな簡単なトリック写真であって、麻原どころか、弁護士だとか、小学生だとか、芸人だとかがやって見せたわけです。
しかし、これはひとつの例なんです。テレビは盛んに、現在もそうなんだけど、超能力とか、超常現象とか、UFOなどを取り上げています。テレビ、雑誌などのマスメディアがよく取り上げます。こういうものを信用するかどうか、皆さんの中にも多く信じている人が当然いると思います。私の立場は、こういうなのはナンセンスだという立場です。それを今からお話したいわけです。こういうのを信ずるかどうかというのは、学問とか科学の問題と言うよりは単なる常識の問題だと思います。かなり嘆かわしい現象です。私は天文学会に所属していますが、天文学会の中でもこういう問題が議論になった時に、アンケート調査の報告があった。アンケート調査をみると、一般の人でこういうものを信ずるのは10%ぐらいです。ところが大学生でこういうのを信ずるのは50%になっているんです。これ非常に変な話です。大学生というのはいわゆる知識人、科学を勉強した知識人と思われているわけですが、そういう人達が意外とこういうものを信用していて、知識人ではない一般の人達が信じない。ということはやはり常識の問題だと思うわけです。つまり大学生は知識はあるけれども、常識の欠けた人が多いということです。 ここで疑似科学に反対する「ジャパン・スケプティックス」の活動について説明したいと思います。スケプティックスとは「懐疑者」、「疑う人」という意味で、スケプティカルとは「懐疑的な」「疑う」という意味です。いわゆる「眉に唾をつける」という精神です。あまり物事をそのままには信用しないという立場です。疑似科学とか超科学とか、エセ科学とかいうものは「科学のふりをしたした非科学」です。英語では「シュウド・サイエンス」といいます。疑似科学がどんなものを扱うかというと、超能力、超常現象、UFO、ミステリーサークルなどです。
こういうものを疑似科学といいますが、それに対して、一般の科学者の多くの人は単に無視します。私のように、疑似科学をことさら取り上げて講演するとか議論するとかいうことは、多くの科学者はしません。何故しないのか。昔、BBC放送で、ある科学者にインタビューした。「疑似科学についてどう思うか」と聞くと、その科学者は、答えずに、インタビューから逃げた。なぜなのか。
UFOについて述べましょう。UFOとは「アンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト」、つまり「未確認飛行物体」の略です。これ自身は、あるに決まっています。つまり空中を変なものが飛んでいて、その正体が分からないときはUFOです。しかし、いわゆる疑似科学者、例えばUFO論者とは、UFOを宇宙人の乗り物だと考える。こんご宇宙人の乗り物という意味で、UFOという言葉を使うことにします。科学者はもちろんそういう意味でのUFOを信じてはいない。しかし科学者がUFOを信じている人と論争をした場合、勝って当たり前ですが、論争、議論ですから負けることもあるわけです。その場合、負ければ恥になる。しかも勝っても業績にはならない。
業績とは何か。例えば私のような大学教授は科学者の一員です。大学教授は、科学者としての側面と、教育者としての側面があります。教育者というのは、要するに学生を教える人ということで、これは非常に分かりやすい。科学者とは、具体的に言えば科学論文を書く人です。科学者としての私の仕事は科学論文を書くことです。そのように書かれた論文が業績です。疑似科学は間違っていると主張しても、科学の世界では「そんなことは当たり前だよ」ですんでしまう。疑似科学批判は業績にならない。業績にならないと出世しない。だから疑似科学なんか議論してもしょうがない。だから科学者の多くは、疑似科学を無視するわけです。
しかし、あえて無視しないで、疑似科学に反論していこうという科学者もいます。外国、アメリカなんかでは非常に盛んです。日本でも数年前に「ジャパン・スケプティックス」という会ができて、その会長は寿岳潤、東海大学教授です。寿岳さんは天文学者です。私も天文学者で、疑似科学批判をする天文学者は比較的多い。UFOの問題と関連しているからです。「ジャパン・スケプティックス」は疑似科学を批判的に研究する会で、参加している人は大学関係者とか、健全なマスコミに多い。会員にNHKの解説委員がいるから、健全なマスコミとは要するにNHKのことです。それに一般市民です。しかしUFO論者なども潜り込んでいるのですが、排除することはできません。
実はこの土曜日、日曜日に六甲山の山の上のYMCAで、ある会がありまして、私と寿岳さんが招かれて講演してきました。どんな会かというと、とても奇妙な会なんです。「ファーストコンタクト・ジャパン」というんです。ファーストコンタクトとは、宇宙人と初めて出会うことをいいます。その会は何をする会かというと、宇宙人が来て、人間とファーストコンタクトした時に、われわれはどういう心構えでやったらいいのかということを練習する会なんです。
そんなものは疑似科学だ、UFOとどう違うんだって思われるかも知れません。そのファーストコンタクト・ジャパンに集まってきた人は、ほとんど若い人ばかりなんですけれど、非常にまともな人々であって、なかなか面白かった。どんなことをするかというと、実際に宇宙船を建造して、隣の星まで行くにはどのぐらいの技術がいるかとか、どのぐらいのエネルギーがいるかとかいうことを実際に検証して見るんです。私もある分科会に参加して、反物質宇宙船というものを造るとしたらどういうものになるのかという問題を検討しました。それから、現在の技術だけを使って宇宙船を造って隣の星まで行くにはどうすればいいかという分科会もあります。隣の星まで宇宙船を飛ばすには、−現在の技術を使う場合には人間は乗せないんですが−、だいたい千年かかる。隣の星とはだいたい10光年先を想定します。どのぐらいの時間で行けるだろうかと計算してみると、だいたい千年くらいかかるります。百年とか二百年で行こうとすると非常な無理があることが、分かってきます。
千年かかると、人間はだいたい百年も生きればよいので、そうすると何世代にもなるわけです。そういうのを「世代型宇宙船」と言います。宇宙船に一万人ぐらいの人間を乗せて、それが十世代、二十世代後に到着するというふうなケースを検証してみるわけです。百年程度の短期間で行く場合を計算してみると、とんでもないエネルギーがいります。例えば1万トンの宇宙船を想像して、光速の10%で飛ばすとします。そうすると10光年先までは、百年かかるわけですが、それに使うエネルギーは10の17乗ジュール程度です。現在の地球の全人類が使っているエネルギーは10の12乗ジュールぐらいですから、だいたいそれの十万倍かかる。宇宙船一隻を飛ばすのにですよ。現在の全地球のエネルギーの十万倍ぐらいのエネルギーを使って、一隻の宇宙船を隣の星まで百年かかって到達するという、そんなもんなんです。
どういう技術かというと、二つ考えたんです。ひとつは帆船。帆船というのは、ふつうは風を受けて飛ぶんだけれど、宇宙にはもちろん風がありませんから、太陽の光を集めて発電してレーザー光に換えるとか、マイクロウエーブに換えて、それを宇宙船に向けて発射します。そのレーザー光なりマイクロ波を、網で作った帆で跳ね返すのです。この帆船の帆の大きさがだいたい1000km×1000kmです。そんなむちゃくちゃ大きなものを造るわけ。帆に引っ張られる宇宙船がだいたい一万トンぐらいなものです。とてつもなく大きいので、現在の技術ではとても造れません。
それから反物質宇宙船、これも計算してみたんだけど、これもなかなか大変なものです。まじめに計算してみると、隣の星まで行くのでさえ、現在の技術でなくて、未来の、つまり百年先、二百年先の技術を使っても、むちゃくちゃ大変だということが、きちんと考えれば分かります。だからUFOが、宇宙人の乗った空飛ぶ円盤とすると、宇宙人が人間と同様な生き物だとすると、そう簡単に地球に来れるものじゃないわけです。というようなことを我々はまじめに計算し、考察してみると、UFOが宇宙人の乗り物であるとは簡単には考えられないわけです。
次にこれもだいぶ前の話になるが、宜保愛子さんの話があります。彼女は超能力があるということを主張していたわけです。それに対して、女性週刊誌で大槻教授が盛んに反論しました。特にその宜保さんのことは、女性週刊誌とかテレビとかよく取り上げた。吉村作治という、早稲田大学の当時助教授、現在教授がいます。この人はエジプト学者でピラミッドの研究しているわけだけど、これがある時、宜保さんと一緒にテレビに出ました。その番組で、宜保さんが「ツタンカーメンは毒殺された」とか何とか言ったわけです。それを超能力で感ずるというわけです。ところが吉村氏が宜保さんを支持した。宜保さんがこの辺りに遺跡が埋まっているとかいった。それに対して大槻さんが、−大槻さんというのも同じ早稲田の教授なんで、早稲田対早稲田の戦いなんだけども−、そんなばかげたことはないということを盛んにいいました。この大槻さんは先ほどのジャパンスケプティックスの副会長だったのです。彼が「宜保愛子研究会」というのをつくって、宜保さんの超能力を「暴く」という会をつくったんだけど、これは、目的が達成できませんでした。というのは、その宜保愛子研究会をつくったら、宜保愛子シンパがこの中へ入り込んで大槻さんを攻撃し始めたのです。僕の宇宙物理学者の友達が早稲田の教授なんですが、彼の所へも宜保シンパからファックスとか電話とかがきて、早稲田の総長の所まで彼らが電話をかけて大槻さんを攻撃しました。大槻さんはほとほと閉口してしまって、宜保愛子研究会をやめたし、かつ、ジャパン・スケプティックスまでやめてしまった。
大槻さんという人は物理学者であって、そのいみでは私の仲間です。彼は、まともな研究をいろいろやっています。彼が疑似科学に反対するようになったのは、「火の玉研究」を始めたことと関係があります。僕らは小さい頃、墓場に行くと火の玉が浮いているという話を聞きました。あれは、実はリンが燃えているんだと言われたことがあります。だけど大槻さんは、火の玉はリンが燃えているのではなく、空中の電気現象、プラズマ現象なんだと主張しました。例えば空気中に非常に高電圧があった場合、空気が電離してプラズマになる。火の玉はプラズマだということです。火の玉がガラスをスーと通り抜けるという現象があるんです。これがプラズマだとすると、理解が簡単だということを大槻さんは主張しました。実際に大槻さんは火の玉を実際につくってみて、奇妙な現象がいっぱい見えるというようなことを説明したわけです。
そういうことで火の玉とか幽霊とか、そんなたぐいのものが電気現象で説明できると、大槻さんは言ったわけです。ただ大槻さんも、吉村さんも、テレビ番組に盛んに出て、テレビ・コマーシャルなんかに出たり、あるいは平成教育委員会なんかに出て、答が間違っているというようなことがあるのは、多少は問題ですね。
さてつぎに超能力の話をします。私は超能力の専門家でも何でもないんですが、ジャパン・スケップティックスの会報に書いてあった記事で非常におもしろかったことがあるので、それを紹介します。それはαプロジェクトと言うんです。αプロジェクトというのは、アメリカのジェームス・ランディーという奇術者、手品師のたてたプロジェクトです。このランディーは、超能力に対して一貫して非常に批判的な人です。彼の立場は、超能力というのは要するに手品の一種なんだということです。そのことを証明するために行ったのがαプロジェクトです。
どういうことをしたのか。ランディーは自分の手品の弟子、彼らは高校生なんです、を使いました。2人の高校生に手品を教えて、そのあとそれを超能力だと偽って、ワシントン大学にある超能力研究所に送り込んだ。送り込む前に、ランディーはワシントン大学超能力研究所の所長に、超能力というのは手品なんだ、インチキなんだよと言うことをまず警告しました。惑わされないようにとまず警告してから自分の弟子を送り込んだわけです。超能力研究所、まーアメリカには変な研究所がありますね、これは一応は科学的な研究所です。送り込まれてきた高校生は、自分は超能力者だと自称しているわけです。そこで研究所は彼らを実際にテストしてみた。その結果ここの科学者たちは、この高校生2人を超能力者だと認めたんです。だまされたわけですね。彼らはその後4、5年の間ずっとだまし続けて、超能力者として活躍したわけです。テレビに出たりして、超能力を見せたわけです。もちろんインチキなんですよ。そうすると皆が信用してしまったのです。この高校生たちが4、5年後になって、あれはみんな嘘だったって言ったわけです。彼らが一番心を痛めたのは、多くの人を騙したために、中には信用する人もたくさんでてきて、身の上相談まで持ちかけてきた人もいたということだと言っております。
ユリゲラー、これも一世を風靡した超能力者、あるいは清田青年、これはスプーン曲げの人、こういう人たちの、いわゆる超能力と称するものが手品にすぎない、インチキだということをランディーは暴いて見せたわけです。だけど、なかなかそのことが世間には認められてない。
刑事コロンボというテレビ番組があります。刑事コロンボは1970年代からありましたが、今でもビデオレンタルに行ったら借りることができます。ビデオレンタルで、私はビデオをいっぱい借りて見ます。うちの家内が推理小説が好きで、コロンボとか、シャーロックホームズとか、アガサクリスティーとかみんな借りてみました。その中で非常におもしろかったのが「超魔術への招待」という番組です。これがまさにランディーを彷彿とさせるような話なんです。どんな話かというと、まず超能力者と称する人間がいます。それに奇術者、手品師がいます。しかも超能力研究所があり、超能力者と称する人が超能力研究所でテストされるわけです。CIAと軍が超能力者に興味を持っているからです。実際、もし超能力があるなら非常に役に立つからテストして欲しいというわけです。どういう役に立つのか。超能力者の言うことが正しければ、原子力潜水艦の中の人間と超能力で通信することができる。潜水艦というのは水の中に沈んでおりますから、電波で簡単に交信できない。もし超能力で交信できればすごいことになる。そのテストに、この奇術者が立ち会うわけなんです。だがランディーを彷彿させるこの奇術者は、その詐欺師の超能力者のトリックを暴かない。現実と映画は違います。ストーリーでは、この2人の間に因縁があって暴かないわけです。ところがこの超能力者が手品師を殺すんです。それをコロンボが例のごとくネチネチと追求していくという話です。その中でコロンボが、超能力とはいかにトリックであるかということを暴露していくという話で、これは非常に教育的なテレビ番組で、見るとおもしろいと思います。要するに超能力というのは手品、奇術の一種であるというのがランディーの立場で、それは納得のいくものです。
最近のアメリカのスケップティックスという雑誌を読んだら、ランディーの書いた記事がありました。ランディーが最近、韓国に行ったときの話で、これはなかなかおもしろかった、韓国のテレビにランディーが招待されて行った話です。ランディーは昔、日本に来たこともある。韓国にしろ、日本にしろ、摩訶不思議な国だと彼は言うわけです。日本はだいぶましになったけど、韓国は非常におかしな国だと彼は言います。どうおかしな国かというと、9時に会いたいと言われたのでホテルで待ってたら全然こない、結局5時ぐらいになったとか、時間がルーズだという話です。僕は全然わからないけど、彼はそう書いています。ランディーの、要するに超能力というのはインチキだという主張をテレビで示してみせるという番組でした。そういうふうに話が進んでいたのに、一番偉いプロデューサーというのがでてきて、超能力の中には、少しは本物もあるだろうと言うわけです。しかしランディーはそんなことはない、超能力というのは全部インチキなんだ、全部手品なんだと言ったら、プロデューサーがえらく不愉快そうになって、超能力の半分ぐらいは本物があるだろうと主張するわけです。何でそんなことを言うのかと聞いてみたら、そのプロデューサーの娘が超能力者と称していたんだそうです。
超能力は昔からも問題でして、まともな科学者もはまるんです。これは非常に有名な例なんだけど、ウォレスの例です。ウオレスは19世紀の終わりころ、20世紀の初めの頃の人で、ダーウィンとともに進化論を唱えた人です。皆さんは、ダーウィンをご存じだと思いますけども、進化論を唱えた人です。ダーウィンは進化論の本を書いていたんですが、そのときに、ウォレスという若い人から進化論の論文を送ってきたわけです。それにダーウィンはえらくショックを受けたわけです。同じことが書いてあるわけだから。ダーウィンは立派な人だから、ウォレスの言うことも認めたので、現在では2人とも進化論を提唱した人と言うことになっております。現在ではダーウィンの方が有名で、ウォレスは忘れ去られてはいます。そういう意味でウォレスという人は立派な人なんだけれども、この人も晩年になって超能力にこってしまって、結局科学者としてのキャリアをふいにしてしまったという有名な例なんです。
そのほか、日本でも、戦前の話なんだけど、月の裏側の写真を念写する事ができると主張する人がいました。実際に念写してみせるわけ。でも月の裏側は見えないと言うのはご存じですね。月は常に表を地球に見せていて、裏はいつも裏を向いてたままなんです。この裏側がこうなっているという写真を見せる、彼の書いた念写図というのを見せるわけです。でもこれがほんとか嘘かと分からない。もちろんアポロ以後になって裏側にまわって写真が撮れたわけだけど、そして比較してみると嘘だということが分かったわけなんです。でもこの嘘がわかるまで何十年もかかった。科学というのは実証的でなければならない。月の裏側がああだこうだと言ったって、そんなもの戦前には、分からない。科学というのは実証しなきゃならんと言うことです。
ミステリーサークルの話をします。これは皆さんもご存じかどうか知りません。これも一時期、非常に評判になったものです。どういうものかというと、麦畑などが円形になぎ倒される現象を言います。日本ではミステリーサークルと呼ぶが、英語ではサークルズエフェクツという風に呼びます。これは主として英国で生じたものですが、他の国にもあって、日本にもできた時期もあります。中世にもあったとミステリーサークルの研究者は主張するんだけど、よくわかりません。ところがどういう訳か英国に多いです。ミステリーサークルは非常に英国で流行した現象なんです。麦畑がきれいに円形状に刈り取られ倒れているわけです。ところが、不思議なことにミステリーサークルは時間がたつと非常に複雑な形になっていくんです。はじめは単なる丸だったんだけど、後には非常に複雑な、幾何学的形状になってきたわけです。こんなものが自然現象だと、とても想像できないじゃないですか。しかしこれが自然現象なのか、いたずらなのかということで大論争があったわけです。
ジャパン・スケップティックスの中でも論争はあって、自然現象だと唱える人がいます。僕に言わしたらこっちはインチキなんです。先ほどの大槻教授は、自然現象派です。しかし私から見れば、ミステリーサークルを自然現象と考えるのは疑似科学だと言いたいわけです。だから大槻教授というのは変な人で、ここではとたんに疑似科学者になってしまうんです。大槻教授はミステリーサークルはプラズマ現象だといいます。空気中にプラズマができて、それが丸い形になって地上にドカンと落ちてきて麦を倒すんだというのです。プラズマがそんなに硬いはずがないじゃないかと私は思うんだけど。こんなものはいたずらと考えるのが最も合理的な説明だと私は思います。
ニュートンという雑誌がありますが、それの副編集長、今はハーレークイーンロマンの編集長の寺門さんという人がいます。この寺門さんあとでもでてきます。寺門さんと先ほどの寿岳会長は、イタズラ派です。ミステリーサークルはイタズラであるという立場です。マーチン・ヘンプステッドというイギリスの学者がいて、自分でイタズラでミステリーサークルを作ってみたんです。ミステリーサークルを作ってみて、そして自然現象派、つまりミステリーサークルは本物だと主張する一連の科学者(私に言わせれば疑似科学者なんだけど)にこのマーチンヘンプステッドは、見せたわけです。そうすると、自然現象派は、それを本物だと認定したわけです。どうして作るのかというと、これは簡単なことです。麦畑に入って、棒を立てて、ひもを持ってきてそれにつないで、ひもを棒を中心にしてぐるぐると回すわけです。そうして麦を倒していく、それだけの話なんです。簡単に作れる。だけどこれが自然現象だという説をとる人は、もしそんな風にイタズラであれば、そこへいく足跡が残るだろういいます。足跡に関しては、いろんな論争があって、竹馬にのっていくんだとか、竹馬にのって麦畑の中が歩けるかとか、竹馬であってもその跡が残るだろうとか。だけど実際に作ったヘンプステッド氏はごく簡単な解決法を採用しました。麦畑を歩いていって、サークルを作ります。歩いていくと当然足跡が残ります。それをほうきで消していくという、それだけの話なんです。単純なことです。ヘンプステッド氏は何個も作ったんです。
ミステリーサークルは、夜中にできるんですよ、不思議なことに。自然現象派は、夜に麦畑に巡察隊をまわしました。ヘンプステッド氏が作っているときに、巡察隊に見つかったと思った場合がありました。彼は見つかったと思ったのに、あとで自然現象派が来て、やっぱり本物だと認定してくれたので、結構イタズラが成功しました。
さらにミステリーサークルが決定的にイタズラだということになったのは、ある2人の老人が現れて、実は自分たちが今まで200個も、作ったんだと主張したわけです。そういうことでもはや、現在ではミステリーサークルはイタズラだと言われております。ネス湖の怪獣というのもこれもイタズラ、自分がイタズラしたんだという人が現れたので、イタズラと言うことになっております。
UFOの話です。一番論争になるのはUFOです。当然、皆さん方の中でも、UFOは宇宙人の乗り物だと信じておる人も多くおられるであろう。そういう関係の本や雑誌を読んだ人もたくさんいるでしょう。さてUFOで飯を食っている人のひとりに、矢追純一氏という人がいます。テレビでもよくUFO特番というのがあります。UFOとはアンアイデンティファイド・フライング・オブジェクトつまり未確認飛行物体です。空を飛んでいるもので、原因の知れないもの、つまり飛行機とか、人工衛星とか、星とか、サーチライトとか、風船とか、そういう原因が分かっていないものをまとめてUFOと言うわけです。そんな意味のものがあることは当然ですよね。だからここでUFOと言ったたときには、それが宇宙人の乗り物だという主張です。それは、科学的に考えるときわめて困難であるということは、先ほどお話ししました。エネルギー的に考えても、恒星間をとばす宇宙船を作るのはなかなか困難だということがあります。
ところがUFOは、宇宙人の乗り物だと主張するテレビ番組が多くあるわけだけど、ここに高倉克介氏という人が書いた「世界はこうしてだまされた。さらばUFO神話」というUFOを否定する本が2巻あり、それがなかなかおもしろいんです。例えばUFOのテレビ番組でこんな番組があったんです。アポロ宇宙船が飛び立つシーンがあります。ロケットが発射されるシーンです。ところがロケットの先の方に、なんか変なものが映っているんです。それをテレビ番組では、”あっ、変なものが映っています、UFOがアポロ宇宙船を監視しているのではないでしょうか?”というわけで、何度も見せるわけです。高倉氏はそのビデオをNASAから取り寄せてみてみた。そうすると、まず飛ぶ前のロケットが映っております。さらにここにロケットの発射塔があります。そういうシーンが映っています。次にロケットが火を噴き始めます。そうすると煙がグワーと上がります。そしてロケットがだんだん上昇していきます。煙がグワーと上がっていって、この塔を隠します。ところが塔のてっぺんだけが残っているんですよ。「UFOではないでしょうか」といったのは、塔の一部なんです。だからここにテレビ番組の、一つの典型的なやらせという問題があるわけです。矢追氏はそのビデオを当然見てるわけです。NASAからビデオを取り寄せたら、最初から最後まで映っているわけで、これが塔の一部だということは分かっているわけです。それをわかっていながら、あえて、そういうことを言うのは、もうやらせ、いや嘘以外の何物でもない。ただしUFOだとは断定していない。UFOではないでしょうかと言っているわけで、ちゃんと逃げ道だけは用意してあるのです。
さらにこんな話もあります。ナチスは、滅びる直前にUFOを作って火星への移住を考えたのではないでしょうかという風な番組もありました。こんなものは完全なナンセンスです。ただしナチスはUボートで南米へ逃げようとしたという、そういう風な計画はあったかもしれない。だから同じUでもUFOじゃなくてUボートと考えるのが、納得がいくんではないでしょうか。
これは私があるSFの会議で直接聞いた話なんですが、これはなかなかの話です。この番組を私も見ました。東京に住んでいるアメリカ人が、あるテレビ局のエキストラに出て欲しいと頼まれた時の話です。どんな番組なのかは教えてくれない。朝どこそこに集まれと言われて、そこに行くと、バスが用意されていて、それに乗せられて富士山麓につれていかれた。そこで、この服を着なさいといって、あるユニフォームを着せられて、これを運びなさいと言われて、担架でものを運ばされた。いったい何を運んだのかは全然教えてくれなかった。だけど後でUFO番組を見てわかったのです。宇宙人の死体を運ぶ米軍兵士という役割になっていたのです。実際私も見ました。もっともテレビ局に言わせれば、きっとこれはイメージ映像だとかいう風な逃げ道は充分作ってあるでしょう。
出版界では有名なのは、コンノケンイチという人です。この人はいっぱいUFOの本を書いています。例えば「月はUFOの出撃基地であった」といった本を書いている。彼がある本で「アポロ13号は核爆弾を搭載していた」という主張をしました。皆さんアポロ13号ってご存じですか。比較的最近、「アポロ13号」という映画がありましたね。11号は月に着陸した。13号は行く途中で爆発しました。大きな事故になって結局月に着陸せずに、月を一周して、地球に無事に帰還したという、非常にすごい話なんです。それがなぜ爆発したのかというと、普通はタンクが爆発したとされているわけです。でもコンノ氏は、アポロ13号が核爆弾を積んでいたと主張するわけです。アポロ13号は核爆弾を月で爆発させよう、月で核実験をしようとした、それを阻止するためにUFOがアポロ13号を攻撃したんだということを、コンノ氏はその本で主張しています。核爆弾を積んでいたという根拠として、ある本によると、ニュークリアフューエルという言葉が書いてあったことによります。
ニュークリアは核、フューエルは燃料ですね。直訳すれば核燃料です。実際は何なのかというと、原子力電池を積んでいたんです。原子力電池というのは何かというと、プルトニウムを箱の中に閉じこめて、それの崩壊熱を利用するものです。そうすると非常に高温度になりますね。それとまわりの低温度の温度差を利用して、熱伝対で発電するという装置です。原子力を用いる装置としては、核爆弾、つまり原爆というのがまずあって、これは爆発するわけです。次に原子炉があって、これは核分裂を利用して発電する。それから原子力電池というものがあって、これは単に崩壊熱を利用して発電するだけのものです。それだけのものなんです。だから原子力電池をアポロ13号が積んでいるのは別になんの不思議もありません。当然宇宙船には電気がいります。普通は太陽発電でまかなおうとします。その場合大きな太陽電池を展開する必要がある。アポロ宇宙船ではそのかわりに原子力電池を使っていた。
ですからコンノ氏は、ニュークリアフューエルという言葉を、原子力電池を知らずに、原爆だと思ってしまったわけです。そういうことを山本弘という人が、この人は「日本と学会」会長なんですが、批判しました。「と学会」と言うのは、「とんでも本」という、とんでもない本を研究する学会です。とんでも本研究学会を「と学会」と言います。その会長が山本弘氏です。山本氏はコンノ氏が間違っていると批判したのです。
ペースメーカーという、心臓を鼓動させる、こんな小さな機械があるんです。心臓病の人のために。ペースメーカーのエネルギ源として、すでに20何年も前に、原子力電池を使っていると山本氏は言ったわけです。ペースメーカーの中に、プルトニウムを入れて、それを体の中へ手術で埋め込みます。プルトニウムのエネルギーを利用して、心臓を鼓動させ続けるものです。コンノ氏はそういうものを知らなかったわけだけど、山本氏はコンノ氏を批判したので、大論争になりました。大論争というのは、「宝島30」という雑誌の読者欄でコンノ氏氏と山本氏がやりあいました。コンノ氏は、山本という男は非常に無礼な男だと書いています。ペースメーカーに原子力電池を積んでいるはずがないじゃないかとコンノ氏は書きました。しかし後で調べてみると、そういうものがあったわけです。もっとも現在は、プルトニウムをエネルギー源とするペースメーカーはもう使われていません。
UFOが空飛ぶ円盤であるといい、あのお皿のような格好を言い出したのは、アダムスキーという人です。彼は宇宙人の空飛ぶ円盤に乗ったと主張しました。宇宙人に出会ったというんです。その宇宙人はどっから来たかというと、金星から来たとアダムスキーは主張しました。この言葉が、こういった現象に非常に典型的だと思う。アダムスキーが宇宙人に会ったのと言うのは、だいぶ昔の話です。当時は、金星がどんな世界であるのかというのが全くわからなかったのです。地表の温度が480度もあるとか、硫酸の雨が降っているとかいうことが。金星はミステリアスだから、宇宙人がやってきたのは金星からだと言えたわけです。だけど現在の我々は、金星というのがどんなものかはよく知っています。とても人間とか、生物の住めるような世界ではありません。火星はまだましですが。だから、アダムスキーが言ったことは全くナンセンスだということは、今となって見ればよく分かります。でもその当時はそのことが知られていない。証明することのできない、実証することのできないことは、何とでもいえるわけです。それは先ほどの月の裏側の写真と同じですね。
コンノケンイチ氏はさらにおもしろいこともいっとるんです。アポロ宇宙船とUFOの関係です。これは、先ほどの話とまた別です。アポロ宇宙船から、色々写真を撮っています。アポロ宇宙船の中から外を撮った写真の中に、変なものが映っているんです。これがUFOであると彼は主張しました。だけど先ほどの高倉克介氏という人が、その写真を取り寄せて、綿密に検証しました。その結果、その変なものはEVAライトであることを証明しました。EVAライトとは、アポロ宇宙船からでている棒の先にライトがついているものです。ところが、その棒の部分が影になっていたのです。宇宙空間では、空気がないものだから、光は太陽からしかやってこない。地表では四方八方から光が来ますよね。ですから地表では、くっきりとした影ができにくい。しかし宇宙空間においては影が非常にくっきりするわけです。ですからこの支柱のところが、完全に隠れてしまって、この先のライトの部分だけが写っている。単にそれだけのものなのです。そんなものでも、コンノ氏にかかると、それは宇宙船、UFOになるのです。しかも高倉氏は、コンノ氏の本にある写真が、ちょうど裏向きになっている、裏焼であるということまで証明してしまったわけです。だから私の言いたいことは、もちろんUFOというものはある、しかしそれが宇宙人の乗り物ではないということです。
人々がUFOをよく見ると言うことに関しては、こういう話もあります。テレビでその種の番組をやってた時、ある有名なキャスターが、”あっ!、UFOが見えます”とか言いました。実際何か光っているものが見えたのですが、これは金星であったのです。金星というのは夕方とか、朝方、その場合は夕方なんでしょうが、結構太陽から離れたところに非常に明るく輝いているんです。明けの明星とか宵の明星といいます。今の場合は宵の明星というわけです。1回皆さんも見られてみたらよいと思います。きわめて明るく輝いているんです。それが金星であるということは、分かる人には簡単に分かるわけです。しかしそのテレビキャスターは、天文の知識がないもんだからUFOと言ってしまった。こんなのはすぐに分かる間違いなんだけど。
人間は不思議なもので、見たいと思うものは何でも見るということがあります。UFOを信じていて、それが宇宙船だと思っておればきっと皆さんも見るでしょう。幽霊とか、河童とか、天狗とかいうのがありますね。僕の考えによれば、昔の人、明治、江戸時代の人とか、もっと昔の人はそれらをきっと見たと思うんです。河童とか幽霊を。何か変なものを見たときに、それが何であるかと人々は考えます。そのとき自分の知識の中で、例えば河童とか、幽霊、天狗とかいうものがあると思っておれば、変なものを見たときにそうだと思いこむわけです。だけど現在の人間にとって見れば河童なんてものの存在は信用していないわけだから、川縁へ行って何か変な皿みたいなものが浮いていたとしても、それが河童の皿だとは思わない。幽霊というものも現代の多くの人あんまり信用しないでしょう。しかし昔、例えば平安時代には物の怪というようなものがあったわけです。当時の人はそういうものを信じていたから、何か変なものを見ればそう見えるわけです。これは人間の心理の一種、あるいは社会的な現象であって、自然現象ではないというのが私の立場です。
ですから疑似科学は一種の宗教であると思います。宗教というのは思いこみという意味です。こういうものはなかなか論議でもって論駁できないわけです。キリスト教者に対して、神は存在しないと言ったところで、そんなものは当然信じてもらえないし、そもそも議論にはならないわけです。ですからUFO論者とかいうのは、僕に言わせれば一種の宗教、信じ込みなんであって、これを論駁する事はできない。私はUFOは科学ではないということを言いたいわけです。
だけど一方、じゃあ地球外生命はないか、宇宙人はないかというとそんなことはないだろうと思います。地球外生命とか、地球外文明の探索というのは、れっきとした天文学の1分野であって、IAUの分科会です。IAU、つまりインターナショナル・アストロミカル・ユニオン、日本語では国際天文連合という天文学の世界組織があります。その分科会の中に、地球外生命の探索という分科会があります。先ほどの寿岳さん、スケップティックスの会長の寿岳さんは、それの分科会の一員であるし、私もそうなんです。ですから天文学者は、宇宙人というのはいるだろうと思っています。実際NASAによって、電波望遠鏡による宇宙文明探しと言うことも行われてきました。最近になって、NASAが予算がなくなってこれは中止しましたけれども。ともかく科学者は、宇宙人はいるだろうと信じています。だけどそれが実際地球にやってくるということは、きわめて難しいであろうとも考えています。ですからいわゆるUFOという、空を飛んでる変なものが、宇宙人の乗り物であるとは、科学者は思っていないんです。
要するに科学と非科学の差というものは、手法なんです。科学的手法では、反証可能性を重視します。つまり科学では反証ができないといけない。例えば先ほどの月の裏側の写真というのは、当時つまり戦前は示せないわけでしょ。証明、証拠を示せない。そんなものはだから科学とはいえないわけです。だから科学では、こうこうであると言ったときに、それがそうであるか、そうでないのかを、実験とか、観測で証明するか、あるいは否定するか、どちらかができる必要がある。それができなければ科学ではない。しかも、反復可能性も重要です。同じことを、同じ条件の下でやれば、同じ結果が得られるということです。科学実験というのはそういうもんなんです。こうなるか、ならないか分からないというのではだめなんであって、同じ条件であれば、必ず同じ結果が得られるという反復可能性が重要なことです。それから、科学の結果は論文に書かなけらばならない。その論文をいわゆる権威ある科学雑誌と呼ばれる英語の雑誌に投稿して、科学者の社会、コミュニティーの中で議論しなければならない。UFOのような主張は、権威ある科学雑誌に載っていないんです。あるいは反重力エンジンとか、いろんなことが言われるんですが、そういうものが全て、科学の伝統的な手法にのっとっていないという意味において私は非科学であると主張するわけです。その他にも話がいっぱいあるんですがこの辺で終わります。 最近私が出した「納得する相対性理論」という本、これは講談社からごく最近出た本です。それには非常に難しいことが書いてあるわけで、皆さんが相対性理論の話を読んでもわかんないと思うんですが、その前書きに今僕がお話ししたようなことが書いてあります。それから宇宙旅行の話とか、さらに人類の未来とか、ファーストコンタクトジャパンで話したような話は、もうすぐ岩波書店から出る正負、正負というのはプラス、マイナスという意味ですが、「正負のユートピア」という私の本に書いてあります。それじゃこれで終わります。
司会 えっと、起立して下さい。はい、礼。着席して下さい。ご講演どうもありがとうございました。、ここで質問を受けたいと思います。生徒諸君の中で質問がありましたら、手を挙げて下さい。質問を受け付けます。3SAの前田君、昨日ちょっとあったときに何か言ってましたね。
前田 その道へ進んで楽しいですか。
講師 ちょっとよくわかんなかったけど、校長先生通訳していただきませんか。
校長 今のね、今の質問だけど、先生がこの道にお進みになって楽しいですかという質問?そういう意味?間違いないね。先生のですね、ご専門で楽しいでしょうかという意味でお聞きしたようでございます。
講師 専門、宇宙物理学でということですよね。それはそうですよね。科学者というのはだいたい楽しくなければやらないんですね、仕事というものは、普通どうですかね。皆さん、しんどいと思いますか。例えば西欧の労働観では、仕事というものは、いやだけれど、儲けるためやむなくやるんだというものです。日本人の労働観はそうじゃないですね。楽しくやる。その中でも科学者は、特にそうだと思うんです。大学の教官は、特にそうだと思うんだけど、半分遊んでいるようなもんです。仕事=遊びと感じます。そういうのが一番、芸術家もそうだと思うんだけれども、あの、ですから楽しいです。
司会 どうもありがとうございました。それじゃさっきそこで手を挙げたのは誰でしたか?手を挙げなかった質問?。ほかに質問はありませんか。
校長 あの先生、あのちょっと先生航空工学のご専門と承ったので、私の質問が適当かそうか分かりませんが、今から10年ぐらい前だったかと思いますけれども、日本政府がですね、短距離離着陸機、STOL、アスカというものを確か開発をし、実験したと思うんでございますけれども、その後一向に音沙汰ないんですが、あの辺のことについて先生もしご存じでございましたら。
講師 あれははっきし言って失敗ですよね。実際、川崎重工で作ったんです。私の学生が何人も川崎重工に行っております。STOLていうのは皆さんご存じかどうか知りません。こういう飛行機があって、翼の上にエンジンを4発つけておるんですね。どんなもんかって言うと、普通はジェット機のエンジンというのは下についておるんです、翼のね。それを翼の上につけるんです。そしてジェットの噴射を翼に沿わせてこう曲げるんです。そうするとジェットの排気が下の方に吹き出すということで、揚力が非常に強く発生して、非常に短距離で離陸するという、そういう装置です。一時盛んに研究されたんですが。でもちろん成功したとは称しておるわけですよ。だけどあれは、日本の役所が金を出したものであって、日本の役所がやった計画というのには失敗はないんです。必ず成功したことになっておるんです。だけど実際は失敗だというのが正しいでしょうね。
司会 はい、ありがとうございました。ほかに質問はありませんか。はい、影井君どうぞ。ちょっとマイクをお願いします。
影井 この研究で損したことや得したことはありますか。
講師 得したこと、損したこと。この研究というのは疑似科学ですか?得したことはこういう所にこれることでしょうね。関西サイエンスフォーラムですか、それには講師が登録してあるわけで、私が講演できる題材として、この疑似科学を最近はやっています。しかし本来は、別に専門家でもなんでもないわけです。私の専門は宇宙物理学で、宇宙論とか、時間論、時間はなぜ過去から未来に進むのかとか、渦巻き銀河ってありますね、これがなぜ渦巻くのかとかいうことが専門なんですよ。だけどそれをを登録しないで、疑似科学を登録してあるんだけど、そうするとなんかお呼びがいっぱいかかるわけです。だからそれが得したことといえるでしょう。損したことって、科学者は本来そんなことを研究するのが商売じゃなくて、自分の専門を研究して、いわゆる業績、つまり論文ですよね、その数を増やすというのが仕事なんだから、よけいなことをやればそれにマイナスになるという点では損ですかね。でもま、好きだからやっておるということでしょう。
校長 じゃあ先生もう一つ、お聞かせいただきたいんですが、先生のご講演の中で、一番近い恒星10光年に、いわゆるロケットをとばす場合ですね。1千年、そのときの光は、失礼しました、速度は光速の1%ということをおっしゃったと思うんでございますが、この1千年という期間はいわゆるアインシュタインの相対性理論による時間短縮の上での1千年ぐらいと言うことでごさいますか。
講師 そうです。あのいや、時間短縮が実際起こるのは、光速度の例えば5割とか8割とかいうふうぐらいになればですね、短縮の効果はありますが、1%とか10%ではその効果はほとんどありませんので、1千年が仮にですね、999年になろうが大したことはないわけですね。もっとも、一番近い恒星というのは10光年じゃなくて、本当は4光年ぐらいなんですが、10光年ぐらいの中には数十個の恒星があるから、そんなかには一つぐらいは宇宙人のいそうな所があるかもしれんということで、代表的に10光年としたわけです。
司会 もう少し時間がありますが、質問。はい、今マイクを持っていきます。えっ、もう一度真ん中辺の人、手を挙げて下さい。
生徒 近頃、あの、テレビとかでやっているUFOとかの写真とかは全部嘘なんですか。
講師 全部嘘ですね。そう思っていいと思いますよ。いや何か変なものが写っているということは、それは事実でしょ。だけど、先ほどから何度も言うているUFO、アンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト、未確認飛行物体があるという点ではもちろんそうでしょう。そのことは間違いはない。問題は、それを宇宙人の乗り物だという説明は嘘だろうと言うわけです。UFO論者は多くこういうことを言うんですよ。そういう変なものが写っている、そのうちの95%はそれは飛行機とか、人工衛星とかかもしれん。だけど、残り5%にはわからんものがあるだろう。それはそうでしょう。そこも認めましょう。全部が全部ね、何か変なものが見つかったときに、その原因というものを同定することはできないでしょう。だけどそれを宇宙人の乗り物というふうに短絡することには反対だということです。
司会 ありがとうございました。それじゃあこの3年のこの途中で手を挙げていた、それじゃお願いします。
生徒 なぜ宇宙物理学という道を選んだんですか。
講師 私は、いわゆる天文少年というやつでね。つまり小さい頃に、小学校、中学校の頃に星を見るのが好きでした。昔、子供の科学という本があって、その中に望遠鏡の宣伝があったわけよ。凸レンズと凹レンズの宣伝が、あっ、凹レンズじゃない凸レンズ2つか、宣伝があって、それを買って望遠鏡を作ったこともあるわけ。だけどね、ああいうので見ると、色収差というのがあって、安物のレンズでは、色が付いて見えるわけ。色消しレンズというのは高いわけです。しかし、中学生になった頃に、うちのおばあちゃんが、望遠鏡を買ったるって言ってくれて、これは非常にうれしかったですね。そういう望遠鏡を見てて、いわゆる天文少年になったわけですよ。それが一つのきっかけですね。 実際大学に進んだときには物理学、物理学科に進んだんだけれども、現在の天文学、天体物理学というのは物理、物理学そのものですから、いわゆる天文少年的な、星を見ることが楽しい、空を見るのが楽しいと言うことだけでは、現在の天文学はやれませんけども、しかしその動機となったのは、やはり星を見るということが好きだったということです。
司会 はい、どうもありがとうございました。もう少し時間がありますがほかに質問はありませんか。
生徒 あの、火星から飛んできた隕石の中に生物がいたとNASAが言っていたようですが、あれは信じていいんですか。
講師 ま、それはなかなか難しいところですね。彼らはそう報告しているから、その可能性は強いと思いますけどね。ただ、私が最初受けた印象は、それは可能性は強いんだろうけども、政治的な思惑もあると僕は思うんですよ。つまり、現在宇宙計画というものに対するお金、予算が、どんどん削減されとるわけで、NASAに対する予算もどんどん削減されとるんです。そこで何かああいうことが、もし出たら、クリントンが実際、火星探検やろうと言いましたよね。ですからああいうことを言えば、宇宙探検、あるいはNASAに予算がまわってくると言う、そういう側面もあるのでね、彼らの希望的観測を、あえて強めていったんじゃないかという気もします。でもまあ真実は分かりません。そのことが本当かどうかちゅうのは、例えば日本なんかもその方面の研究をやろうとしとるわけだし、隕石というのは、特に南極にたくさん落っこっとるわけですね。日本の南極越冬隊は南極大陸から、たくさん隕石を拾ってきておるんですよ。その中の一部が火星から来たもんだと言われとるわけであって、それをもっと探そうとする計画がもち上がっとります。ですからま、いずれ分かるでしょう。
司会 どうもありがとうございました、えっとまだ質問があるかと思いますが、講師の先生方のお時間もあるようですので、この辺で質問を打ち切りたいと思います。どうもありがとうございました。ここで校長よりお礼申し上げます。
校長 松田先生、大変ありがとうございました。実は先生は11時45分のJRでお帰りになるので、本当は今ちょっとそこで手を上がっとりましたし、もっとたくさんのお話を承りたかったわけだが、一応これで本日の講演は終わりです。先生のお話を聞く中で、2、3感じたことをもうしますと、諸君もそうだと思うし、私どももそうだが、世の中に人間はですね、ものが存在するということの証明は簡単であります。ものを見せればいいわけです。ところが、存在しないということの証明は誠に難しい、存在しないということの証明の難しさの間隙を突いたものが、あるいは疑似科学、あるいは魔法のようなものではないかと思います。ところがこういうUFOにいたしましても、あるいは超能力にいたしましても、別にこれは20世紀にこういうものが出ただけではないということを、お話を聞きながら思ったわけです。君たちは知っているかどうか。中世ヨーロッパにゼノンのパラドックスということで、中世ヨーロッパの科学、哲学者が大混乱をしたことがあると聞いております。ゼノンのパラドックスとはですね、実は、アキレスは亀に追いつけないと、アキレスは亀を追い越せないということであります。アキレスというのは君たちも知っているように、古代ギリシャの英雄であり、非常に足が速いといわれた伝説上の人物であります。なぜアキレスが亀を追いつけ、追い越せないか、実はアキレスの遥か前にですね亀がおる。アキレスはそれを追いかける。ヨーイドンで仮にストップウォッチを押したとする。1秒後に例えばアキレスはですね10mかそこら走るとする。亀はさらに先に進む。じゃあ次の1/10秒後はどうなるか。アキレスは何mかすすむ、亀もさらに進む。じゃあ1/100秒後はどうか。時間をどんどん縮めますとですね、アキレスは亀に近づく近づく、近づくけれども、時間をどんどん1/1000秒、1/10000秒とこう時間短く切れば切るほど、アキレスは亀に近づくけれども、追い越せないんじゃないかと言い出した。常識から考えるとこんな馬鹿なことはありえない。あり得ないけどこれを論破するのにですね、極限の科学が確立されるまで論破できなっかったという話を思い出したところであります。実は、ま君たちもですね、テレビやあるいは一部の雑誌で、いわゆるさっきの先生のお話にあったような色々な科学の衣を着たでたらめが結構ある。こういうことに悩んだのが、実は人間の歴史で、別に近年のことではないと、しかしこれを常識でもって打ち破らなきゃならんと、松田先生は科学者でいらっしゃるので、松田先生方の科学者の方々は、科学的に論破なさるんだと思うけれども、我々は常識でそれを否定していくべきではないかという感じがしました。先生、大変ありがとうございまして。
司会 それでは講師の先生退場です。拍手でもって感謝の気持ちを表しましょう。