神戸新聞エッセー第4回「今年のノーベル物理学賞、連星パルサーの発見」

                       神戸大学・理学部 松田卓也

 本年度のノーベル物理学賞はプリンストン大学の天体物理学者テイラーとハルスと決まっ た。その日、新聞社から電話があり、そのことを知らされコメントを求められた。 私「エッ?だれですって?テイラーってどのテイラーですか?」

「パルサーを発見したそうです」

「パルサーの発見はヒュイッシュじゃないですか。それに彼はすでにノーベル賞をもら ってますよ」

「新種のパルサーだそうです」

「あっ、そうか、分かった、連星パルサーを発見したハルスとテイラーだ」

 私としたことが、うかつであった。実は私と弘前大学の二間瀬教授とで訳した本「アインシュタインは正しかったか?」(TBSブリタニカ)の中で、著者のウイルはわさわざ1章をさいて、ハルスとテイラーの連星パルサー発見の物語とその意義を解説しているのであった。この発見も前回のパルサー発見の物語など、多くの重要な発見がそうであるように、偶然になされている。テイラーは当時、新進の大学教授でありハルスは その大学院生であった。彼らはプエルトリコにあるアレシボ電波天文台で奇妙なパルサーを発見した。

 パルサーとは高速に回転する中性子星で、パルス状の電波を放出している。そのパルス間隔から、中性子星の回転状態が分かるのだ。かれらの発見したパルサーは、ふたつ の中性子星が連星になっているという、きわめてめずらしいものであった。しかも、連星の公転周期がだんだん短くなってきていることが分かった。その原因として考えられることは、連星が重力波を放出することにより、エネルギーを失うためであると考えられた。

 重力波はアインシュタインが20世紀の始めに予言したものだが、いまだにその存在が確認されていない。20年も前に、米国のウエーバー教授が発見したと報告したが、その後それは誤りであるとされた、いわくつきのものなのである。ハルスたちの発見は、重力波の存在を間接的にではあるが証明したものである。この10月に西宮湯川記念シンポジウムがしゅく川公民館でおこなわれた。そこに先の本の著者であるウイル教授やカリフォルニア工科大学のソーン教授など著名な相対論学者が集まった。彼らは重力波観測のためにレーザーを利用した、長さ4キロメートルにもおよぶ重力波望遠鏡の建設プロジェクトの話をした。1基100億円ほどかかり、それを地球上に4基設置したいという。地理的条件から、日本にもその設置が望まれている。重力波を直接測定したら、その人はやはりノーベル賞に値するであろう。




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