アメリカ帝国の凋落と日本の復権・・・ウオーラースティン教授の予言
米英軍のイラク攻撃(イラク侵略)も、米国のブッシュ政権の思い通りに進んだようで、新帝国主義者たる新保守派の面々の高笑いが聞こえるようである。さらに今後はシリアだとかイラン、北朝鮮という名が取りざたされている。しかし、今後ことは本当に彼らの思い通りに運ぶのだろうか。「世界システム論」で有名な米国エール大学のイマニュエル・ウオーラースティン教授が興味深い分析をしているので紹介する(日経新聞2003年2月12日、3月24日)。
ウオーラースティンによると、米国がイラクをたたく理由は大量破壊兵器でも石油でもなく、新保守派のイデオロギーにあるという。米国が圧倒的な力を示せば、日本、欧州を含む世界を震いあがらせて、米国が主導権を握れる。そうすれば欧州も共同歩調をとるだろうし、ドルは強くなり、イスラム原理主義は力を失い、世界は繁栄を謳歌するだろう。
しかし、ことは全く反対であるという。今回のイラク戦において米国は地政学的に見て4つの大きな過ちを犯した。1)1945年以降、米国が恐れていた事態、つまりフランス、ドイツ、ロシアが手を組むことに手を貸してしまった。2)そうであるなら、米国は日本、中国、南北朝鮮を味方に付けるべきであるが、新保守派は逆の方向を向いている。3)従来の親米国であったサウジに疑念を抱かせ、反米傾向を助長する。4)米国が長年にわたり努力してきた核拡散を防止するどころか、今回のことでむしろ助長するであろう。だからブッシュ大統領が執務室を去るときは、米国は確実に弱体化しているであろう。
現在の米国が強いのは軍事力だけであり、経済力で言えば、欧州、日本と拮抗している。イラク戦で米国は欧州連合を強化し、イスラム圏を敵に回し、長期的には軍事費に予算をとられ、三つどもえの経済戦争を征する余力が無くなるであろう。この点で欧州と日本は遙かに有利である。
最後に彼はこう結んでいる。「技術開発では、日本がこの三地域の中でもっとも有力であり、経済面に限れば、日本は今後十年程度で米国を押さえて主導権を握るだろうと筆者は見ている。その逆はありそうにない。ただし、言うまでもなくこの点は、日本が中国、韓国両国と政治・経済面でうまく折り合いをつけられるかどうかにかかるであろう。」